14.爆走
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「ねえねえ、ミレア?なんでお客さんが来ないのに、宿続けられてるの?」
イヴが言ったように、この宿『マタタビ』は、イヴ以外に宿泊者がいない。
今日だけとも考えられるが、宿を探している人は、みんな街の中心部に行き、外れの方に来るのはイヴ以外、いなかった。
それなのに経営できている、この宿が、イヴは不思議でならなかった。
「私ね、冒険者がしたかったんだぁ。だけどね、ギルドの大人は頭でっかちだからね。ソロじゃ、依頼を受けられなかったんだ。だからしょうがなく、宿としてやってるんだ。でも客は来ないから、自分で魔物を狩って、賄ってるんだ。」
そう言ってミレアは、自棄気味に笑う。
辺りに、気まずい沈黙が落ちる、と思いきや、
「じゃあ、一緒にパーティ組もうよ!僕もね、ソロでって言ったら、受付嬢さんは、あんまりいい顔しなかったんだ。」
「うーん、イヴとかぁ。おもしろそうだなぁ。」
イヴの顔がパッと、明るくなる。しかしミレアが「……でも」と続ける。
「───獣人の私と組んだら、イヴがいい顔されないよ。だからパーティは組めない。だけど、しばらくはここに泊まるんでしょ?だから、仕事の話、聞かせてね?」
イヴには、返す言葉が見つからなかった。探そうと思えば、あったのかもしれない。
しかし、ミレアに真っ正面から返されて、言葉を紡げなかった。
「そっか」とだけ呟き、立ち上がる。
「今日は休むね。また明日からよろしく。」
「うん、よろしくね。」
イヴは、部屋の場所を教えられ、この場から立ち去った。
2階に登ってすぐに部屋を見つけた。
綺麗に掃除された部屋にあるベッドに倒れ込む。
この一週間、ずっと野宿だったため、久しぶりのベッドに寝転ぶと一気に睡魔が襲ってきた。
翌朝。
太陽の光と、空腹で目を覚ましたイヴは、そういえば昨日は晩ご飯食べ忘れてたな、と思い出しつつ1階に降りる。
1階では、出来たてであろう朝食が、テーブルに並んでいる。
ミレアの美味しいご飯を食べ終わったイヴは、
「冒険者ギルドに行こう!!」
と叫ぶ。
行こう……。宣言ではなく勧誘。
ちょっと言葉遣いが変だなぁ、と思うも、頑張ってきてね、と言おうとしたミレアの手を掴み、イヴは駆け出す。
「わぁっ、ちょっっ、えっっっ!?どうしたの!?」
ミレアは困惑しながらも、言葉を絞り出す。
「言ったじゃん、昨日。『明日からよろしく』って!て訳で、レッツゴー!!」
ミレアは思い出す。
イヴが去る前の一言を。
それはこう言うことだった。
ミレアも『よろしく』と返してしまったから、強く言えない。
それから、ミレアは「きゃぁぁぁ」とか「わぁぁぁぁ」とか言って目を回し、イヴはギルドまでの道のりを爆走して行った。
この時イヴはミレアを引き摺ることはなく、旗のようにたなびかせていた。
これを見た者は多く、後に『英雄伝 序章第3幕 たなびく猫耳』として語り継がれる。
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ちなみに、英雄伝の序章第1幕、第2幕は、
『英雄伝 序章第1幕 勇者と魔王の子』
『英雄伝 序章第2幕 火竜を見下せし者』
になります!!




