12.猫耳の少女
15年前。その日、その女性が一日の鍛錬を終え、龍の山脈にある我が家へと向かう道中。
女性の気配探知にあるものが引っ掛かる。
それは、魔物のような歪んだ気配ではない。言うなれば、赤子。
しかし、気配が1つしかないことから、なぜ赤子がこんな所に1人でいるのかと、疑問に思う。
取り敢えず、赤子を放置しても後味が悪いだろうと、女性はその気配の元へと向かった。
そこには、女性の色々な疑問の答えがあった。
その子は捨て子であった。猫人族の獣人。
不思議なことに、その子からは僅かにも魔力の流れが感じられる。
本来、獣人は魔力を持つことは無い。
ではなぜ、この子から魔力の流れが感じられるのか。
突然変異。
この子は、本来持つことの無い魔力を持ってしまったがために、親にこの山に捨てられたのだろう。
そんなことを知らない猫人の子は、すー、すー、と規則正しい呼吸で眠っているが、危ない。
捨てられてから、しばらく経ったであろう子の体は冷え始めていた。
女性は、近くに手頃な洞窟を見つけ、その子を連れて行った。
火をおこして、灯りを確保し、その子を抱えて暖めた。
その女性は、ちょうど先日、男の子を出産した。
そこにもう一人増えるというのは、決して楽ではないが、自分がやらなければこの子は死んでしまう。その一心で育てた。
訳あって、家には連れ帰ることが出来ない。なので、洞窟をもう一つの家とした。
亜人が迫害の対象であるこの世界は、この子にとって厳しいものとなるだろう。
なので、女性は生きる術として剣術を教えた。
女性の夫である男性は魔法のエキスパートであり、体術の心得もある。男性は魔力を持つ獣人に興味を持ち、快く指導を引き受けた。
その夫婦は、生活でも苦労しないよう、読み、書き、計算も一通り教え、外国語も教えた。
それから12年。その少女は、自分の育て親である二人との別れを、寂しく思いながらも、必ずまた会いに来ることを約束し、旅立つ。
少女は寂しさを顔に出さないよう努めるが、その猫耳は正直だ。
それから更に3年経った現在。
その少年、イヴは宿を探していた。
先程、ギルドでトカゲの素材を売ったところ、随分な大金で売れた。
なんでも、普通あそこまで綺麗な素材はないということで、本来、1体100万ジルのところを、150万ジルで買い取ってくれたのだ。
ちなみに、魔物の核である魔石も売れるのだが、魔石はフェニーの大事な栄養なので、フェニーが食べた。
ということで、一瞬にして金持ちになったイヴ。
久しぶりに、綺麗で、静かなところで寝たいのでその条件に合う宿を探している。
しばらく歩くと街の外れの方に、ぴったりな場所を見つけた。
綺麗で、客のいない宿、『マタタビ』。
こんなに綺麗なのになぜ客がいないのか。
宿に入ってすぐに分かった。
この宿の女将、ミレアは、猫人だった。
ヒロイン1人目。




