1.始まりの闘い
私は今、一人の煌びやかな椅子に座る男と対峙している。
この男は人間ではない。褐色の肌、尖った耳、腕にはおどろおどろしい刺青。そして何よりも、隠そうともしない圧倒的な禍々しいオーラ。
それが如実に男の正体を物語っている。
魔王。
この世界には、4つの種族が存在する。
人間。この世界のおよそ3割を占めており、数百年に亘り他種族と対立している。
亜人。人間、魔族による迫害で数が減り、ひっそりと隠れて暮らしている。物理に特化した種、魔法に特化した種など様々だが、特化型故に、相性が悪いと滅法弱い。
魔族。物理、魔法共に高水準。知性があり、それぞれの種に固有技術がある。そして、魔族を統べる王、魔王が存在する。
魔物。全種族のおよそ6割と言われている。基本的には知性がないとされ、定期的な討伐の対象となっている。
しかし、 今代の魔王は特例だ。魔族の血が濃いために、魔王として君臨しているが、実際は魔族とエルフのハーフ。もともと高水準な物理と魔法に加え、魔法に特化したエルフの能力もある。
敵に回せば最悪と言える。
要するに今の状況だ。
そして私はと言うと、
「よく来たな。貴様が王国が寄越した勇者だな?」
腹の底に響く、やや断定的な口調で、魔王が問う。
「ええ。王国の勇者、アイリーンよ」
闘う前に名乗るのは礼儀なので、しっかりと言う。
勇者。それは数多い人間の中から女神様に選ばれ、【ギフト】を授かった者。
勇者は、前代の勇者が死ぬとまた生まれる。
そして今は私のことだ。
「魔王、アビスだ。」
一応の礼儀はあるのか、魔王も簡潔に名乗る。
「貴様は俺の首が欲しいのだろう。さっさと始めてしまおう。」