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3.モニターの向こう側                        

「これはどういうことだ!」


部屋の中で、壁一面に敷き詰められたモニターの光だけが輝いている。


その中で、一際大きいメインモニターの中には、教室で暴れ回るペンギンをなぎ倒す異能の者の姿。


「こんなに力を持つやつらが居るなんてきいてないぞ」


そう怒りの声を上げるのは、部屋の中央の『指令』の札が置いてある机の主。


『指令』は歯軋りする。


 「くそ、なんだあの中世の騎士みたいな格好をしている連中は…っまるで俺が見てきた異世界にいたようなやつらじゃないか!」


 モニターの中では、造作もなくペンギン達を切り刻む生徒達。


 「『指令』!、メインモニターを切り替えます。1-C組だけではなく、他の教室にも!」


 「な、なんだとぉ!」


 メインモニターが変わる。そこに写っていたのは、なにやら様々に不思議な格好した生徒が、ペンギン達を次々に屠っている姿だった。


 「ちょ、ちょっとまて、1-D組もか?」


 「それだけではありません。1-E、2-B組も、いえ、よくみれば、ほとんどの教室で同じような異能者たちが」


 「なああああああにいいいいいいいいいいいいいいいいいい」


 『指令』は爆発した。聞いてないぞ!関係者を呼べ! などとよくわからないことを言っている。


 「ああぁぁぁあっぁああああああああ! ちょっと軽い気持ちでパニックおこしてやろうと思っただけなのに、なんでこんなことになっているんだ!?」


 「『指令』、それをいっちゃあ」


 おしまいですよと、ヘッドセットをつけた女子生徒が言う。よく見ると、この学園の制服をきていた。


 「すでにわれわれは走り出してます。それに、この教室を見てください」


 ヘッドセットをつけた女子生徒は、メインモニターに別の教室を映した。


 「ふむ?この教室がどうかしたか?うちのペンギンちゃん以外にも訳の分からん動物がうごめいてるが」


 たぶん、教室内の異能者が召還した生物だろう。魔物かなにかかだろうか。

 既にペンギン達を制圧し、戦闘を終えた"異能"の生徒達がなにやら話しあっているようだ。


 「うむ、聞こえないな、何かを話しているようだが、菊池、ちょっとカメラの集音マイクの音量を上げてくれ」


 「わかりました」


 ヘッドセットの女子生徒が、目の前の機械の音量フェーダーを上げる。


 『……さ……み』


 「む?まだ聞こえづらいな、もうちょっと音量を上げてくれ見てくれ」


 さらに音量があがる。


 『…のパニックを起こしたやつって、だれだろうな』

 

 突如、モニターから不穏な会話が聞こえてきた。


 「……む?」


 『指令』の顔がぴくっと引きつる。


 『首謀者を即刻叩くべきだ。ペンギンの残党も残っているかもしれない。また変な生き物を送り込まれるかもしれないぞ』


 『クラスの皆の命が危ないものね』


 『おい、そこにカメラがあるぞ?』


 『え、本当だ』


 そういって、モニターの向こうの「女生徒」が画面越しに覗き込んでくる。


 「おいおい、カメラを動かさないでくれよ」


 けっこう高かったんだぞ、と一人事を言う『指令』。


 『このカメラ、どこかにつながっているか、わからないか?』


 『あぁ、わかるわよ、ちょろっと、電気回路から魔術で"シグナル"送って跳ね返りを見れば』


 「んん??ん?」


 『指令』の額に汗が伝う。


 『あ、わかった!これ、放送室だわ!!』


 『放送室って、この学校の?』


 『そうみたい』


 「ちょ、ちょっと!!!!菊池、これどうすんだ!」


 「みつかっちゃいましたね」


 菊池、と呼ばれたヘッドセットの女生徒が冷静に言う。


 「なんでお前はそう冷静なんだ!!」


 「いや、仕方ないじゃないですか。最初から破綻がある計画だったし、そもそもカメラ仕掛けてる時点で色々とアナログだし」


 「うぉおおおおおおおおい!ここでそんなこというなよ!!」


 『指令』の声が、むなしく「放送室」に響くのだった。





 









                    

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