審判を下す光輝
「───ということで、結局、フェイリア様は不可視の器に戻るということでよろしいのですか?」
「同意 十分世界を楽しんだ。我は幸せだ」
「じゃあもう見学は良いのか?」
「必要 また暇なときがあれば良かったら連れていってくれると嬉しい。我がシュンの眼に憑きすぎると魔力が足りないだろう?」
「それは、まぁ、そうだな」
実際、疲労感は凄い。魔力がここまで減る状態は初めてだった。なんというか、身体中のやる気というやる気が無くなったような感じだ。
「まぁ、ご主人様は普段と対して差は無いですけどね」
「フェイリア、またな」
「あぁ、またな…だ」
俺の目から線のような物が現れ、目の前の杯に伝わっていく。一仕事終えた感じだな。
「ひゃの、ごひゅひんひゃま。ひたいへふ」
「帰ろうぜ」
「ひゃい」
右手の人差し指と親指に柔らかな感触を感じながら俺は歩いて部屋へと帰った。
「ごひゅひんひゃま! そこ!ひょこめでひゅ! めだまにはいってまひゅ! い、いたぁっ! ごひゅひんひゃまぁっ!?」
人差し指により柔らかく若干湿った感触を感じながら俺は帰った。
「ごひゅひんひゃまぁぁぁぁぁっっっっ!!」
ーーーーーーーーーー
「我、盟友の気配を感じ馳せ判じた! もし、応答せよ! 我が盟友!」
「おい、イル。なんか部屋の前に誰か居るんだが」
「はい? すいません、今目が見えなくて」
「あ? おいおい、目が真っ赤じゃないか、どうした?」
「そんな澄んだ瞳で心配してくださってありがとうございます」
よいよい。俺は優しいからな。気にすることはないぞよ。
で、あれはなんだ。俺の部屋をドンドンと叩いては盟友がどうとか……呪いの類いか? それにしては藁人形が見えないが。
「おい、そこの…派手ドレス」
「はっ! 盟友! ふふ、やはりここにいたか…」
「さっき部屋に向かって気配がどうとか言ってたけどな」
「聞いてたのっ!? ていやいや! ふ、ふふふ、はははは! 面白い!」
「いや全然面白くないけど」
一瞬ポンコツなとこが出てきたな。
「ご主人様、この方は?」
「あれだ、他の国から来たっていう勇者でグロリアって名前らしい。で、俺に何のようだ? 俺は長い出張から帰ってきたところなんだ。眠らせてくれるか?」
「め、盟友! 我から生涯に唯一の希望だ!わ、我の相談に乗ってくれないか……?」
「断る」
「ぬぇっ!?」
部屋のドアを開けて中へと入る。続いてイルが後ろから入ってきて扉が閉じ……閉じない。
「ぬ、ぬぉぉぉっ……ま、まってくれぇ……ッッ!」
「意外とタフだなグロリア」
ドアの隙間に足をいれて開閉を拒むグロリア。その表情は真っ赤なほどに必死である。
「頼むぅぅぅ……お願いしますぅぅぅっ」
「悪いが俺にお前を助ける理由がない。すまないな」
「な、なら! えーと…えーっと……」
「はい、3、2、1」
「な、何でもするから!」
「あ?」
「盟友の願いを一つ! なんでも聞いてあげるから! 我が希望、願い、どうか!」
はぁー……だからさぁ。頼むから、そういうのやめてほしいんだが……マナにも言われたが、何でも~とか言うの危ないぞ。
「イル、茶を出してやれ」
「あれ、ご主人様。意外ですね。基本無関心なご主人様が珍しい」
「何でもするって言われたらな。利用しやすいだろ?」
「まぁ、そうですね。ふふふ」
「んだよ」
「いえ、ご主人様も本質はユウト様と似ているんだなと思っただけです」
「は? 誰があんなやつと」
アイツと似ているとか、ライオンみてダイオウグソクムシと似てるっていうレベルの間違いだぞ。
「お邪魔します…」
「はいどうぞ」
「お、おぉすまない……め、盟友のメイドか?」
「はい。ご主人様のペットです」
「ペット……?」
「おい何戯れ言ほざいてるんだ角ドリル」
「私のは普通の角ですっ! ドリル状にもなってないです!」
「あ、ごめん」
まさかそんな角にプライド持ってたとは、知らなかったや。良いネタ見っけた☆
「その……我の能力…見ただろう? どうだった?」
「いやどうって言われてもな。ただ眩しいだけで何も分からなかった」
「それが……我が能力なのだ……」
「は?」
「我の能力は『審判を下す光輝』。物や体を光輝かせる能力なのだ」
「それだけ?」
「それだけ……です」
何故か敬語になるグロリアさん。なるほど、あれが能力か……なんだそれ?
「それは、強いのか?」
「………ううん」
「確か、グロリアはそっちの国でもトップクラス強いんじゃなかったか? そういう話だったはずだが」
「そ、そうなんだ。我の能力はこれだけなのだが、皆がこの光の強さに驚いて誰も相手をしてくれなくてな……」
「まあ、眩しかったからな……」
それだけで強いって判断しちゃう辺り、適当だなとは思うが……まあそういうのも相まってこの中二病ができたのかもしれんな。
「で、俺にどうしろと?」
「我の能力は強くない……正直眩しいだけの光。目潰しぐらいにしか使えない。他に何か使い道がないだろうか? 我はみなを騙しているようで心地悪いのだ」
「そのしゃべり方を変えるだけで大分話しやすくなると思うぞ? 実際、ちょいちょい口調戻ってるしな」
「ぬぅ!? き、気づいてたのか……」
「気付かないわけがない」
むしろクリスたちはなんで気づかないんだよ。鈍感系主人公でも気づけるレベルやぞ。
「まあ考えといてやるから、今日は帰れ」
「わ、分かった……なぁ、我の能力を知ってどう思った?」
「ん? まぁー、驚いたよな」
「やはり落胆してしまうか」
「いや、そういう意味じゃなくて、知らないのか? 人間は外部情報の殆どを視覚によって補ってるんだぞ? それを強制的に封じる技だぞ? 弱いわけがない」
「…………」
「おーい、どうした?」
「…………わ、我が盟友よ」
「なに?」
「名前を聞いてよいか?」
そういやまだ教えてなかったか。覚えてもらえなくても良いけど。
「宮坂シュン。宮坂でも宮本でも好きに呼んでくれ」
「分かった! 能力のことよろしく頼むぞ! 宮本!」
「おい冗談だよな?」
「ご主人様、もう既に出ていきました」
「……寝る」
ふて寝だふて寝。いいよ、名前なんて、グスン。
「シュン!!」
「もう帰れよお前! こちとら眠いんだよ! バカ! アホ! 歩く空気洗浄機!」
「シュン!?」
ユウトが飛び込んでくるように部屋へ入ってくる。間の悪いやつだ。今何時か知ってるのか? もう夜やぞ?
「シュン! 明日一緒に孤児院に行こう!」
「嫌だ死ねおやすみ」
「イルさん、シュンに明日起きてくれるように言っておいてくれますか? 朝の4時に迎えに来ますから」
「そんなに早くからですか。分かりました」
「分かるな駄メイド。早いよ、日の出すらまだだよその時間帯」
なんでまた孤児院とか言い出したんだこのイケメンは……
令和になりましたね! 新時代の幕開けです。
昭和生まれとバカにしてた人たちは今度から平成生まれとバカにされるんですよ。
やーいやーい! 平成生まれのおたんこなすー!
ちなみに私も平成生まれです。どうも、おたんこなすとお呼びください。
令和になってもよろしくお願いします!
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