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セルウスの町攻略作戦⑥

「来いよ」


 俺は人差し指をクイクイと曲げて挑発する。この世界に人差し指で煽る風習があるかは知らないが、どうやら挑発の意味は果たしたらしい。


「テメエ……さっき逃げてたくせに何言ってやがんだァァ!」

「逃げた?違うな……俺はお前に勝つ準備をしていたんだ。そんな巨体を酷使してまぁ…ダイエットでもしてるのか?もしかして今流行りのライザッ」

「やっちゃえシューンっ!」

「今俺が喋ってるだるぉっ!?」

「あっごめん」


 くそ、お得意の煽り節を決めてやろうと思ったのに……


「最後の方はよく分からなかったが、ぶっ殺されたいってことは伝わってきたゼェェェ!?良いだろう!ぶっ殺してやる!」

「ユウト、因幡。兵士ども及び高木の相手は任せた」

「「応!」」


 挑発は成功したようだ。案の定怒り狂って周りが見えていない。荒れてるなぁ……


「ぶっ殺ぉぉぉす!」

「さっきから殺すしか言ってないぞ?あっ、倒れてる兵士さんが踏まれた……」


 可哀想に…倒れた兵士くらいも見えてないのか。こっちに向かってくる途中に三人くらい蹴飛ばしたぞ。俺なら恨む。


「ウォォォォ!!」

「んー……尺の都合上さっさと終わらせる!」

「尺ってなに!?」


 拳を振り上げるアッシモ!意気込みを告げる俺!余計な突っ込みを入れる制汗剤!


 が、当然アッシモの拳を受け止め……られないので避ける。あれは受け止めようとしたら逆に砕かれるわ。


「ヌゥゥゥ!小癪!」

「悪いが長期戦にするつもりはないんだ。バッテリー切れを待つこともない。一瞬で終わらせてやる」

「なにっ!?」

「生きてる者なら誰でも弱点である急所。普段から露出しているし、町長として偉そうにふんぞり返ってるから気にもしなかったか?」


 俺は密かに袖に入れていたナイフを取り出す。当たり前だが、こんなところに武器も持たずやってくる俺ではない。非常用の武器くらいある。


「首を切る……と言いたいところだが、流石に人の首をナイフで切るなんてことは不可能だ。だからさ────」


 俺は振りかぶられた拳を避け、空をさまよう腕を切り上げる。

 

「動脈で済ませてやるよ」

「グアァァッ!?」


 ブシュッ!と勢いよく血が飛び出す。顔にも散ってきやがった。


「シュン!」

「問題ない。お前らの調子はどうだ?」

「こっちは任せるっしょ!」

「エクスカリバー!!」

「うん、大丈夫そうだな」


 ユウトと因幡はしっかりと兵士たちを倒していっている。見たところ誰一人死んではない。一人一人気絶させるだけでも中々に困難だと思うがな。


「くそっ!だがこれくらいの傷!腕を締め上げればっ!」

「そう思って反対も切っておいたぞ、サービスだ」

「い、いつの間にっ!!」


 さっきの間だ。一対一なら対応はできる。それに、こういう汚い仕事はオレの分野だ。ユウトが手を汚す必要はない。


「ど、どうすりゃ良いんだ!!高木ぃ!話が違うじゃねえかァ!」

「ぼ、僕だってこんなことになるなんて……っ!ひ、光ヶ丘くんも因幡くんも、僕の邪魔をしないでよ!」


 高木が創造する機構兵士は全て叩き斬られている。それは全てユウトがこなしている。ユウトの右手に掲げられている長剣の前では機械など豆腐と変わらない。


「高木くん!こんなことはやめるんだ!」

「なにが?僕が何を悪いことしたっていうんだよ!もう知らないからね!僕は悪くないんだ!邪魔をするお前らが悪いんだぁぁあっ!」


 おいおい高木、脈拍がすごいことになってるぞ。しかもなんだあれ、すさまじいな。


「僕の能力でみんな潰れちゃえっ!」


 高木が『創造』の魔法で地面からとんでもない大きさの機構兵士を造り出す。しかもその数は5体。


 その巨体は地面に倒れている兵士などは気にするようすもない。


「アッシモ!パワードスーツについてるボタンを押せ!リミッター解除だ!」

「ヌゥッ!?いよぉし!これだなぁっ!?やるじゃねえか高木ィッ!」

「女神ちゃん女神ちゃん女神ちゃんっ!!」


 ちょっとそれはやり過ぎじゃないか…?くそっ!死傷者を出すつもりはなかったのにっ!


「おい!アッシモ!あのままじゃお前んとこの兵士が死んじまうぞ!!」

「んぅ?あぁ、あいつらは俺の道具だ。オレのもんをどう扱おうがオレの勝手だろう?」

「……外道が」


 俺が言うのもなんだが……アッシモ。悔い改めろ。もう遅いけどな。


「ユウト!そのデカブツは一人でやれるか!?」

「問題ない!因幡!倒れてる兵士さんたちを避難させてやってくれ!」

「この量を!?マジっすか!?………えぇい!やるっしかないっしょ!」


 俺はアッシモと目を合わせる。ユウトは巨大機構兵士の始末。因幡は避難。


 因幡がいて良かった、避難をさせるにはオレもユウトも機動力がない。その点因幡はサーフボードの大きさも自由自在。


 これからはちょっとくらい仲間頼る……いや、利用するくらいにはならないとな。


「ブハハハハッ!リミッター解除だァ!」


 アッシモが高木に教えられたボタンを押すと、パワードスーツが変形しアッシモの体を包み込んだ。


 パワードスーツはまるでアッシモをガ○ダムのようにゴツゴツのアーマーになり、露出箇所もほとんどない。


「血も押さえられるし、これでナイフなんてちゃちなもんじゃこのアーマーは切れねえなァ!」

「ちっ、やっかいな」


 ふむ、正直な話、抵抗する手段が思い付かないな。


「エクスカリバーッッ!!」

「ガシャァアッ!!」

「うわっ、なんだユウトか」


 巨大な機構兵士の右腕が飛んできた。エクスカリバーで切ってようだ。相変わらずなんでも切れるんだなぁって。


「余所見してたら死んじまうぞォッ!?」

「うぉっ!」

「チィッ!間一髪でかわしやがった」


 凄まじい速さだな……読めていてもギリギリだ。


「オラァッ!オラァッ!逃げてばっかりいんじゃねえぞォッ!」

「しかたっ……ないだろっ!…俺はっ…弱いんだからよっ!あぶねぇ!」


 執拗なまでに迫ってくる。こんなのどうしろってんだ?今、屋敷の壁が吹っ飛んだぞ?


「ていうか、喋ってんのに攻撃するな!当たるだろ!?」

「当ててェんだよッ!逃げるなッ!」


 こんな有り難くねえ『当ててんだよ』は初めてだ!普通こういうのは美少女が言うもんじゃねえのか!


「くそ!バッテリー速く切れろ!」

「残念だったな!あと20分は持つっぽいぞ!」

「もうスタミナが持たねぇよ!」


 ピコンピコン点滅してる数字が胸辺りに付いている。そうだろうとは思ったが、それが残りの時間らしい。2分ならともかく、20分なんて考えたくもなかった。


「ユウト!そっちはどうだっ?」

「正直!限界が……っ!来てるかなっ!……はぁっ!!」

「ガシャァアッ!!」

「順調そうじゃねえか」


 高木は魔力切れを起こしたみたいだ。倒れているのが見える。あれだけ大きな機構兵士を作り出したらそりゃそうなる。


「「「「アッシモ様を助けるんだぁぁっ!」」」」

「「「「侵入者排除ォォッ!」」」」


「頼むから冗談と言ってくれ……」

「因幡は避難に手間取ってる!ここにはもう俺とシュンしか居ない!どうするんだシュン!?どうしようシュン!?」

「あぁもう!オレの名前を連呼するな!一旦体制を立て直すか?いや、このアッシモを抑えながらとかとてもじゃねえけど無理だ!」


 周りを兵士たちに囲まれる。ユウトも機構兵士だけならともかく、これだけの兵士に囲まれたせいでもうどうしようもない。背中を合わせて敵を見据えるが、解決の糸口は掴めない。


 ジ・エンドってか。


「観念するんだな!おい!兵士ども!コイツらを縛り上げろ!」


 体力ももうない。俺は睨み付けることしか出来ない。イルを呼ぶか……?いや、もう遅いか……


 兵士どもが群がってくるのが見える。でっかいヘッドガードつけやがって、そんなんじゃ中に誰が入ってるかも分からねえだろ?




 ───ったく、待たせやがって


「無様だなぁ粗チン野郎!!」

「おせえぞ!刀女!」


 群がってくる兵士たちの内、一人が聞いたような声で聞いたような言葉を放つ。


「助けに来たよシュンくん!」

「光ヶ丘も、一人負担を掛けさせた。これからは私も加勢しよう」


 ヘッドガードを投げ捨てる兵士。その中から現れたのは桐峠と結城さんだった。


「一回みんな吹き飛ばすよ!ごめんね兵士さん!」

「な、なんだこの美少女二人はっ!?」

「モフモフちゃん!」

「キュウ!」


 あんなゴツゴツの鎧に身を包まれた兵士から美少女が出てくる。これにはアッシモも驚きを隠せない。


「ドカァァアンッ!!」


 結城さんが魔法で爆発を巻き起こす。俺達の周りだけ防御魔法を張り、他の兵士はアッシモもろともに吹っ飛んでいく。


「グオッ!?」

「「「「うわぁぁぁっ!」」」」


 声を揃えて飛んでいく兵士たち。統率ができててよろしい。

 

「一転攻勢……だな」

「結城さん!?桐峠さん!?一体どこからそんな鎧を……?」

「えへへ、最初に松岡くんが兵士さんたちの鎧を着ようとしてたでしょ?私たちもそれを思い出して着てきたの」

「ちょうど二着だったしな」


 桐峠と結城さんが笑顔で笑い合う。なるほど、兵士に成り変わることで他のやつらに混じって来れたわけだ。納得だね。


「しかし解せないな。松岡はどこに行ったんだよ?吹っ飛んだ内に居たか?」

「あー……えっと…うーん……シュンくん怒らない?」

「あ?当たり前だろ?まさか帰ったわけでもあるまいに……帰ったって答え以外だったら怒らないぞ」

「……雫ちゃん」

「私に振らないでくれ。宮坂、そういうことだ」


 あっ、ふーん。アイツ帰ったんだぁ~。へー。


「しゅ、シュン?目が怖いぞ?」

「俄然やる気が沸いてきたね。今なら誰にも負ける気がしねえ。特に『気』とか使うふざけた野郎には」

「シュンくん!?松岡くんを許してあげてっ!?悪気は無いんだよ!?」

「知るか!帰ったら処刑だ!!」


 待ってろよ松岡!


「用事ができた!さっさと終わらせて帰るぞ!結城さんと桐峠にはそこのデカブツを任せた!ユウト!俺とやるぞ!」

「よっし!シュンと一緒に戦える!」

「さっきはあんまり活躍出来なかったから今度は頑張るよ!」

「普通にミサトの魔法も凄かったのだが……まあ良い!任せろ宮坂!」



 少しだけ訂正しておこう。 俺一人の力じゃ、多分ここまで上手くは回らなかった。


「ここからは、俺たちの時間だぜ」


 覚悟しやがれ、奴隷商。


評価、ブクマ、感想お待ちしておりまーす!


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