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セルウスの町攻略作戦⑤

 高木。あいつの能力は『創造』。


 このアッシモが着けているパワードスーツ、囮としてあったアッシモの人形、情報の漏洩。


 俺たちが今回の作戦について話しているところを盗聴機の様なものを造ることで盗み聞きし、横流しにしたということだ。こうすれば全て辻褄が合う。


 もちろん、納得はしないがな。


「高木くんっていうと、あのメガネのいつも寝てるヤツか!?」

「あぁ」

「そんなことするようなヤツには見えなかったんだけどな…」

「見た目で判断するなってことだな」

「……高木って誰?」

「因幡、ちょっと黙ろうか」


 因幡は高木を覚えてなかったり俺の名前を覚えなかったり……しっかりしなさい。


「オイィ……オレを無視するナァ!」

「シュン!危ない!」

「これぐらいかわせグフゥッ!?」

「なにィ!?」


 見えていたから避けようとしたのに……コイツオレを突き飛ばしやがった!ユウト!テメェ!


「何すんだ!?」

「大丈夫だったか!シュン?」

「お前のせいで顔面ダイブしかけたわ!バカ!アホ!イケメン!」

「最後の褒めてるっしょ」

「だから無視すんナァッ!!」


 あぶねぇ。パワードスーツ、バカに出来ねえな。テレビでしか見たことねえが、実際見ると中々イカつい。


「ふははははぁぁっ!負ける気がしねえナァ!?」


 勝ち誇るように高笑いをするアッシモ。周りからは絶え間なく兵士たちが襲ってくる。


「くそっ!シュン!このままじゃあジリ貧だぞ!どうすればいい!?」

「どうにかしろ」

「そんな無茶な!?」

「いや……あるっしょ!一つ、解決策がある!」

「因幡!聞かせてくれ!」


 この状況を切り抜ける方法か…まあ考え付かない訳じゃない。だが、犠牲が一人居るかもしれない。確実性のある作戦も浮かばない。これは因幡に期待するしかないか。


「ユウトのエクスカリバーで一刀両断!兵士たち全員気絶させるっしょ!」

「……因幡に期待した俺が駄目だった」

「そんなことないっしょ!?」

「シュン!他に方法はないのか!?」

「ユウトっちッ!?」


 ううむ。正直、それは考え付かなかった訳ではない。しかし……だ。そんな簡単に言うがユウトがどこまでエクスカリバーを使いこなせているかによる。


 この場にいる兵士たちを気絶させるなんて器用なことは…


「とりあえず、何をするにしても襲ってくる兵士たちがいちゃあ思い付くもんも思い付かん!退路を開く!」

「因幡!」

「分かってるっしょ!」


 ユウトの合図でオレとユウトが因幡のサーフボードを掴む。


 そのまま兵士たちの頭上を走り抜ける。なんて速さだ。人の群れを一閃、一瞬で部屋から脱出できた。


「どうよどうよ!オレっちの能力!」

「因幡……俺はジェットコースターは嫌いなんだ。吐いたらどうしてくれる?」

「ええっ!オレっちがワルいの!?」

「ちょっと俺も酔ったかもしれない……」


 急旋回とかするからもう…うっぷ。


「うォォォおォォ!マテェェェ!!」

「おいおい!あいつ追ってきてんじゃねえか!」

「撤退だぁ!」

「もう一回掴まるっしょ!」

「くそっ!吐きそうになったら口にぶちこんでやる!」


 因幡のサーフボードに再度掴み乗る。コイツ、三半規管がどうにかしてんじゃねえのか?気が逝ってしまいそうだ。


「ヌォォォォ!追いつけなぃぃぃぃ!!」


 声が遠ざかっていく。なんとか撒けたようだ。





 屋敷の一角、人気のない部屋に入り安全を確認する。ここには誰もいないようだ。


「さて、どうしてやろうか」

「あのパワードスーツは厄介っしょ……」

「いや、お前の処遇」

「えっ」


 冗談だよ、冗談。そんな怯えるなよな、ははは。


「しかしあのパワードスーツは充電式だ。さっき見たときに確認した。どれくらい持つのかは分からんが、少なくともどこかで出力が落ちるなり動きが鈍るなりするだろう」

「そんなことが分かったのか」

「確認したのは一瞬だけだ。弱点とか隙は見当たらなかった。もう少し見られればなんとかなるかもしれない」

「そういや宮坂っちはどういった能力なんだっけ?」


 やっと俺の名前を覚えたか。


「一度言った気がするが、オレの能力は『見る』能力だ。敵の動きを見て読み取り、直前の微動で動作を予測することも可能だ」

「はぁぁー……道理で団長さんに勝ったわけだわー」

「ニアか、そんなやつも居たな」


 最近出番がないニアさん。戦乙女聖騎士団の団長に当たる人物。ニアとアッシモの動きには大きな差はない。むしろニアの方が速いかもしれない……が、いかんせん見ていられる時間も余裕もなかった。


 ニアの時は観客席から落ち着いて見れた上、ユウトが短くない間戦っていたが故に読み取ることは出来た。


「つまり、お前らが俺を安心させて見させてくれれば勝てる」

「おおっ!シュンが言い切った!」

「しっかり囮をやれよ」

「なんでユウトっちはそんなに嬉しそうなんだろう?」

「俺にも分からん」


 囮にすると言っているだが、心無しかさっきよりもイキイキとしているように見える。


「じゃ……行きますか!」

「シュン!しっかり見ていてくれよ!」

「アッシモの方をな。お前は見ねえよ」


 考えはまとまった。これは元々俺が魔王と王様を仲間につけようとして始めたことだ。俺が最後に責任もってやってやる。




ーーーーーーーーーー


「居たぞーっ!捕まえろー!」


 廊下を歩いていると、向こうから兵士が叫び出した。見つかったみたいだ。


「「「「捕まえろー!!!」」」」

「ユウト」

「よし!エクスカリバー!!」


 襲いかかってくる数十人を一瞬で無力化するユウト。ヒューッ!流石だねぇ。


「こっちカァッ!!」

「アッシモも来たぞ!」

「任せるっしょ!」

「なにィ!?うっとうしいゾォッ!!」


 相手がどれだけ速くなったから、強くなったからと言って動体視力や運動神経が向上したわけではない。物理的な強制でそんなことはできないからな。


 だから。目にも止まらない速さで因幡が翻弄する。倒す必要はない。気を引いて時間を作れればそれでいい。まだ時間は掛かる。


「まだ出てきやがる!ユウト!」

「兵士は任せろ!」


 廊下の端から絶え間なく出てくる兵士たち。もう何人倒したか分からないのに、更にやって来る。


「はぁ……はぁ……はぁっ!」

「ユウト、大丈夫か?」

「まだ……っ!はぁ……行ける!」

「因幡!まだいけるか!?」

「も、もう少しなら行けるっしょ!……あとどれくらい掛かる感じ?」

「2分あればなんとかなる!」


ユウトも因幡も、どれだけ強い能力を持とうが、スタミナだけはどうしようもない。基礎能力を上げるには時間をかけるしかないからな。


 あと2分……行けるか?


「ふふふ……ぼ、僕も手を貸すよ、アッシモ」

「た、タカギィ!!待ってたぜぇっ!!」


 と、最悪の展開だ。高木が出てきやがった。アイツ、隠れてたな?嫌なタイミングで現れやがって…


「無様だよ!宮坂ぁ!!僕の女神ちゃんを洗脳して!もう許さないよぉ!!」

「なに意味のわからないことを叫んでんだ」

「ふ、ふふふ……君を始末したらアッシモが女神ちゃんを奴隷にしてくれるんだって……ふふ。お仕置きしなきゃね…あんな風に僕のことを裏切ったんだから……ふふ」

「気持ち悪い、その一言に尽きるな」


 相変わらずのようす。懲りてねえな。まあ、こういうヤツは良くも悪くも粘り強い。良い方向に持っていけたら別の人生があるだろうに……


「た、高木くん!本当に君が裏切ったのか……?」

「は?……あぁ、光が丘くん。違うよ。僕はただ女神ちゃんが僕のものになればそれで良いんだ」

「その女神ちゃんって言うのは誰のことなんだ?」

「それはあれだ、ユウト。結城さんだよ」

「……こういう手合いかぁ」


 流石ユウトさん。今までも何人か経験があるこのタイプ。ユウトの苦手な部類として記録されている。


 ため息をついて頭を降るユウトを尻目に、オレの方をにらむ高木。


「だけど宮坂ぁ、君は許さないよ?僕の奴隷にして一生こき使ってあげるんだぁっ!」

「奴隷は嫌だ。男の奴隷はもっと嫌だ」


 一々叫ぶ高木にうんざりしながら、俺はアッシモの動きを完全に理解した。もう、負けない。


「よし、良いぞ。戻ってこい、因幡」

「はぁっー!疲れたっしょー!これで良い感じっ?」

「大丈夫だ。あとはオレに任せろ」


 俺は高木から視線をはずし、さっきまでの間ずっと因幡に翻弄されていたアッシモを見つめる。


「はぁっ!イナバとやらぁっ!てめぇは後でぶっころぉす!!」


 お怒りのご様子。だがその『後で』はもうやってこない。先に言っておこう。


「もう、理解した」


 ここからは、オレの時間だぜ。



ブクマ、評価、待ってるわ!

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