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セルウスの町攻略作戦④

「さて、俺たちはアッシモの捕縛だったよな」

「ユウトっちと宮本っちが居るなら大丈夫っしょ!」

「宮坂な」


 ユウト、因幡と一緒に廊下を歩いている。少数精鋭だが因幡もユウトも弱くない。その辺の兵士なら一瞬で寝かせることが出来るだろう。


 相変わらず俺の名前を覚えない因幡は鼻歌混じりに歩いているし、ユウトも王国との違いを見て感心しているようだ。これから何が起こるかも分からないのに。


「お前ら、えらく平然としてるな」

「あぁ、俺はシュンとならどんな所でも楽しいからな」

「その笑顔を俺に向けるな。首を絞めるぞ」

「宮本っちとユウトっちはいっつも仲良いべー!昔からの友達的な?」

「シュンとは小学校の頃から友達だぞ」

「なんというか、消し去りたい過去といった感じだな」

「そんなにかっ!?」


 んなこたぁ、良いんだよ。それよりも……


「そういやシュン、アッシモってどこの部屋に居るんだ?」

「手当たり次第に行けば良いっしょ!」

「おいバカ。バカかお前は。下手に動いて見つかったらどうする?」

「倒すっしょ!」

「野蛮なヤツだ。安心しろ、見つけるくらいはやってやる」


 透視能力発動だ。アッシモがいる部屋は───



 あそこだな。ふむ、ここから近い。それに寝ているな。これなら問題なく終わりそうだな。


「着いてこい」

「分かった」

「ん?どこ行ってるんべ?場所分かったん?」

「俺の能力だ」

「っべーわ!まじっべーわ!そんな能力だったの宮本っちー!」

「宮坂な」


 テンション高い。うるさい。名前覚えろ。


「あの部屋だ」

「……寝息が聞こえる」

「お休みの時間じゃね?」

「そのようだ」


 静かにドアに手をかける。カチャリと音がしてゆっくりとドアが開いていく。若干暗いが、月明かりのお陰でシルエットくらいは見える。


「よし、ユウト。因幡。捕縛!」

「「あいあいさー!」」


 意外と大きなことになることなく、ミッション完了だ。これで魔族と人族の協定が結ばれることだろう。良かった良かった───


『ウーッ!ウーッ!ウーッ!ウーッ!』


 突然、警報音が鳴り響き部屋中の明かりが着いていく。


「おいおい!ユウト!何した!?」

「なにもしてない!ていうかこのベッドの中に入ってるの人形だぞ!?」

「これ、やばくない?これ兵士たちがやって来るんじゃない?」

「大丈夫だ。兵士たちが来るのにも時間は掛かる。まずは逃げ──」



「侵入者だぁぁあ!!捕まえろぉぉ!!」

「「「「「うォォォォ!!」」」」」



 はぁ……そりゃあ簡単には行かないよな。糞がぁ。


 部屋のドアが思い切り開けられ、外からドンドン武装した兵士たちが現れる。一瞬で包囲されてしまった。


「ふふふ、まさか本当に来るとはなァ。ブァカな奴らだァァ!」

「アッシモ、久し振りだな」


 その後ろからドシドシと音をたてて歩いてきたのはこの町の町長、今回のターゲットであるアッシモその人だった。


「ンゥ?てめぇは……いつぞやの少年!!久し振りだなァ!アァン!?」

「分かったから。一々確認するな」


 アンアンうるせんだよ。お前は犬か。発情期ですかぁ、コノヤロー。


「シュン、知り合いなのか?」

「軽く顔を合わせたんだ。それより、この状況はどうするよ?」

「やばいっしょー!やばいっしょ~!」

「うるさい騒ぐな」


 人形をわざわざベッドに置き、入った瞬間に気付かれ待機していた兵士たちに囲まれる。


えらく気合いの入ったストーリーじゃねえか。


「──()()()ってか」

「シュン!?」


 嘘だろ、といった感じでこちらを見るユウト。だから顔を向けんな。泣きたくなるだろ。


「ほォ……よく気付いたなァ!」

「ここまで上手いことされたら。そりゃあな」


 こっちだって、一応いろんな準備や手回し、苦労して舞台を用意したんだけどな。まさか筒抜けだとはな。


「おおっと!動くなよ?もし動いたらコロォス!」

「どうせ動かなくても殺すだろ?」

「いいや!そんなことはしない!なんで召喚された者たちをわざわざ殺すんだ?奴隷にして高値で売るに決まってるだろォがァァ!」


 ちっ、そんなことまで知ってるのか。俺たちが勇者だってことも知ってるんならこれはもう確実に近縁の内通者だろうな。


「特に……そこの美形!お前は高く売れそうだァ!アァン!?」

「ユウト、高値で売れるそうだぞ。良かったな?」

「嬉しくないぞ!?」

「オレっちはどれくらいで売れるか気になるわー!」

「あの変な男は農村にでも売り飛ばせ」

「酷くないっ!?」


 こいつら仲良いな。内通者お前らなんじゃねえの?


「とりあえず……捕まえろォ!!」

「「「「イエッサー!」」」」


 今ここで下手に動くのは得策じゃない…か。


 アイコンタクトでどうするか聞いてくるユウトには首を振って動くべきじゃないことを教える。


 奴隷にするって言ってるんだから殺されるようなこともあるまい。期を待てばなんとか道が開かれるはずだ。


「エクスカリバー!!」

「おいぃっ!?」

「シュン!やるぞ!」

「何を!?お前をヤってやろうか!?」


 コイツっ!さっきのアイコンタクトはなんだったんだ!?


「ダメって言ったろ!?」

「だ、だって……シュンはここでヤれって言ったと思ったんだよ!」

「首を振っただろうが!」

「諦めないつもりか!?さすが勇者だ!お前ら!ヤれ!!」

「「「「うぉぉぉお!!」」」」


 ちっ!こうなっちゃ仕方ねえ!


「ユウト!因幡!オレを囲め!」

「分かった!」

「も、もうどうにでもなるっしょー!」


 最悪な展開ってわけでもない。こっからなんとか良い方向に持ってくぞ!


「オレが指揮を取る!今度こそ指示には従えよ!」

「「応!!」」


 オレを間に挟んでユウトと因幡が構える。意外と頼もしいじゃあないか。


 やるぞ!


「ユウト!まずは距離を取る!薙ぎ払え!」

「よしっ!!」

「因幡!牽制しつつ部屋の隅へ移動するぞ!先導しろ!」

「分かったっしょ!」


 まずは死角を少なくする!壁を背にして戦うことで背後からの襲撃を無くす!


「吹き飛べぇっ!」

「くはっ!?」

「ぎっ……!?なんだこの力はっ!?」

「ば、化け物か!?」

「うわぁぁあっ!!」


 ユウトが力任せに薙ぎ払うと突風と衝撃が辺りを襲う。相変わらず飛んでもないな、あの力。


「ふーふー!君たち遅いんじゃないの~!?これがウェイブの力っしょー!」

「いてえっ!」

「いつの間に切られたんだ!?」

「ちょ、ちょこまかとっ!」


 因幡は能力で出したサーフボードで兵士を切り裂いていく。もちろん、死ぬほどではないにしろ足を切って機動力を無くしている。意外と考えてるようだ。


「ユウト!3時の方向から3人襲ってくるぞ!7時方向からは火魔法の一斉放火だ!因幡はそのまま牽制!遠くから魔法を撃ってくる奴らに怪我をさせてやれ!」

「よし!」

「了解だわ~!」


 ユウトが飛んできた火魔法を剣の腹で襲ってくる兵士に打ち返した。因幡は素早く動き兵士たちの動きを抑えてくれている。


「このまま兵力が無くなっていくまで続けろ!」

「もちろんだ!」

「やるっしょやるっしょ!」


 スタミナが持つかどうかが鬼門だが……ここは堪えてもらう他にない!


 というか、アッシモの野郎はどこにいった?


「…………おいおい、マジかよ」

「ふははは!こっちを見ろォ!!」

「な、なんだあれ!?」

「ぱ、パワードスーツって奴~!?」


 アッシモが近代的なアーマーを身にまとい飛び込んできた。こんな鎧が作れるような文化はないはずだ。


 これで分かった。情報が漏れていたこと、こんな近代的な装置を作ることが出来ること、そして俺たちにこんなことをする『恨み』があるヤツ。


 正確には()()()に恨みがあるヤツなんだろうな。ここまで言えば分かるだろう?


「ユウト、内通者が分かった」

「……誰なんだ?」

「───()()だ」


 アイツしか、居ねえだろうな。


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