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セルウスの町攻略作戦前夜

 俺はユウトを部屋に招き、一対一で話をしていた。もちろん、これはセルウスの町を攻略するための話だった。


「俺たちは魔族たちが陽動をしている間に城を攻める」

「なるほど」

「俺はユウトを盾に進むから、ユウトは前にいる敵をバッタバッタと薙ぎ倒していってくれ」

「うん、俺を盾にするのはやめてくれな?」


 とりあえず、方針は固まっている。正直、今回の作戦は失敗する可能性がほぼ無いと考えている。

 理由は簡単だ。魔族が味方についているからだ。そして、一名竜族の王様だってついている。


「負ける要素が見当たらないな」

「いや、シュン。万全は期した方が良い。過信は良くない」

「ふむ、確かにユウトが言うことにも一理ある」


 今まで、過信による失敗は各国の王や歴史でなんども見てきた。

 

「だが、これだと負ける方が難しいのではないかと俺は推測するね」

「うん。過信は良くないと言ったけど、勝ち戦になるだろうな」


 俺たち召喚された人の中では今のところ俺とユウトの二人だけで突撃することに決めていた。


 なぜか?理由は簡単だ。


 ()()()()()はいらないからだ。必要以上の人数は攻め入るときに邪魔になる。それに、あいつらは少し不安になるだけで叫び出す連中だからな……


「だけど、シュン。流石に俺たち二人ってのはどうなんだ?」

「なんだよユウト。俺と二人じゃ不満か?」

「そういう意味じゃないけどさ!もう!俺がシュンと一緒で不満なんてあるわけないだろ……?」

「あ、大丈夫です」

「なぜぇっ!?」


 いやだって、なんかホモ臭かったから。臭うぞお前。


「別に他を入れるのは(やぶさ)かでもない。少数であれば、人数も必要だ」

「じゃあちょっと呼んでくる」

「は、おい。待て」

「行ってくる!」


 あー……行ってしまったか。まあ、良いけどさ。アイツのことだ、そこまでダメなやつを連れてくることはないだろう。


「ご主人様ー!」

「あー、うわ、頭痛い」

「ご主人様っ!?大丈夫ですか!?けっこんしますか!?」

「しねーよ」

「あいたっ」


 不意にプロポーズをする変態にチョップを打ち込み、ため息を吐く。


「はぁ、こんなやつが魔王の幹部で俺のメイドなのかぁ」

「そういえばご主人様、私はセルウスの町攻略作戦でどこに居れば良いでしょうか?」

「そういや、お前は俺の指示をあおぐように言われてたのか。そりゃ都合が良い」


 シアめ、中々粋な計らいをしてくれるじゃあないか。これは良い駒になるぞ。


「うむ、イルにしてもらうことは────」






「ただいまー!」


 ドアが開かれて、数人の足音が飛び込んでくる。やっと帰ってきたか、ユウト。


「えっと、私なんかで良ければ手伝いたいなー……なーんて、えへへ」

「私はミサトの付き添いだ、宮坂、貴様のためではないのだからな」

「ツンデレか?似合わねえんだよ。ありがとな結城さん」

「あぁん!?相変わらず減らず口を叩く男だなぁ!?」

「あぁ、すまないな雫ちゃん。反応が可愛いからさぁ」

「ちゃん付けを……するなぁぁぁっ!!」


 結城さんと桐峠が来てくれたみたいだ。即戦力はありがたい。そして──


「おっす!久しぶりだな!宮坂!」

「松岡か、熱いな」

「うん?そうだな!異世界も夏とかあるのかもな!」

「そういう意味じゃないっしょ!一樹っち!」

「因幡も来てくれたんだな」

「もちろん!俺たちもう友達っしょ!?」

「いや、別に」

「激辛ファイヤー!」


 意味のわからないことを叫び出す因幡。松岡とタイプは違うが、どちらもハイテンションだな。


「俺を含めて6人か、思ったよりも集まってきてくれたな」

「ほんとはもっと呼びたかったんだけど…シュンくんは少人数が良かったんだよね?」

「確かに俺たちは6人と少ないかもしれない!だけど、この面子なら魔王にさえ負けるなんて俺は思えないけどな!」

「一樹、それはどうだろうな」


 一応事情については皆知っていてくれているみたいだ。ユウトが教えたのだろう。簡略化した説明が出来るのまた才能だよな。ここまで人が集まったのもユウトの人望があってこそだ。


「俺ユウトきらーい」

「えっ、こんなに頑張ったのに!?」


 まあ、これだけ人数が居れば余裕でしょうな。


「明日の夜12時に攻める。魔族たちが陽動をしてくれている間に城へ潜入。町長であるアッシモを捕縛してミッションは完了だ」


 簡単にまとめて話す。もっと細かい指令はその時々に告げる。


「うーん!なんだか俺たちスパイって感じか!?」

「ミッションインポッシブルっしょー!!」

「雫ちゃん、私たちに出来ること、探そうね!」

「ミサト、落ち着け。我々がすることは一つ。敵を見つけたら斬る。以上」

「物騒なこといってんじゃねえよ」


 桐峠貴様、結城さんに変ないれ知恵をするな。困ってるだろ。俺も結城さんがお前みたいになったらもう直視できねえよ。


「とりあえず今日は解散ってことで良いか?質問があれば聞くが」

「はいはい、シュンくん」

「はい、結城さん」

「城に入ってアッシモさんを捕縛って、そんな簡単に出来るのかな?向こうは一応この国よりも兵力を高めているんだよね?だったら警備も潤沢だろうし、入り込める隙はあるの?」

「それは簡単だ」

「そうなの?」


 あぁ、至ってシンプルだ。このために人数を集めたと言っても過言ではない。


「見つけたら何か叫ばれる前に倒せ。そうすればバレることもない」

「おい宮坂。さっき私にいった言葉を思い出せ?」

「過去は振り返らない。俺たちはいつだって未来に生きているんだ」

「凄い手のひら返しだな」

「手首がネジ切れるっしょー!」


 サーチアンドデストロイ。俺が警備兵を見つけるからお前たちは馬車馬のごとく働き、ブッ飛ばせ。


「こんなところでいいか?」

「うん。ありがとー」

「いや、今ある疑問は全てぶつけてくれ。明日になって分からないと言われても困るからな」

「分かった」

「おい宮坂、質問というか、確認なんだが良いか?」

「ちっ……なんだよ」

「舌打ちは余計だが……まあ聞かなかったことにしておいてやる。ここで一度、私たちの能力のおさらいをしておいた方が良いんじゃないか?」


 能力の確認。確かに、的確に指示を出すにも能力を知らなければいけないからな。それに仲を深めるという意味でも必要かもしれない。


「じゃあ俺から。ご存じの通り俺の能力はエクスカリバーという剣を現界させる能力だ。ただ、制御も曖昧で使い勝手が悪いってのがネックかな」


 ユウトが率先して喋り出す。こういうのは助かる。基本的に人間ってのは何かに着いていくことで安心感を得るからな。自分から行動に写し、率先して動くことは現代社会でも必要とされる能力だろう。


「はいはい!俺の能力は『気』!気を操るぜ!」

「単調過ぎっしょ!ちなみにオレっちの能力はサーフボード!こんな風に……よいしょ!サーフボードを空中に浮かべさせて移動できる!」


 どちらも使い勝手の良い能力だ。気ってのは曖昧すぎて分からんが、単純な自己強化というのは案外厄介なものだからな。サーフボードも機動力に関してはこの中でも群を抜いている。


「私の能力は妖精魔法だよ。シュンくんには一番に助けてもらったね」

「そんなこともあったな。結局妖精は見つけられなかったけど」

「仕方ないよ!妖精魔法は、妖精を通じて魔法を掛けることで簡単に魔法を使えるよ!」


 便利な能力だ。これは特に凄い。魔法ってのは才能がかなり関わってくるもので、オレも使える魔法なんて数える程度。しかし妖精魔法は妖精を通じるため、ほとんどの魔法をノーリスクノータイムで撃てる。これをチートも言わずしてなんと言おうか。


「私か。私の能力はまだ言ったことが無かったか。まああまり特出しているわけではない。『飛刃(ひじん)』という能力だ。簡単に言えば刀を振ったときに魔力を飛ばす」

「やっぱ脳筋だ」

「おい粗チン、何かいったか?」

「はい殺す、刀女。そこで座ってろ首を切る」

「やってみろ!このシズクに対してッッ!!」


 俺と桐峠のにらみ合いが続く。が、そこでストップが掛かる。


「はいはい、喧嘩はダメだよシュンくん、雫ちゃんも!」

「「ちっ」」


 最近の喧嘩はこの終わりかたが定番になってきている。まあ、流石結城さんと言わざるを得ないな。


「とりあえず、じゃあ今日は解散で」

「「「「「了解!」」」」」


 全員が出ていき、扉がしまる。いつの間にか何処かへ行っていたイルが戻ってくる。


「イル」

「ご主人様、どうでしたか、会議のほどは」

「まあ特に大した障害もなく進めてるよ。明日は大一番だ。早く寝よう」

「そうですね、では明日しっかり頑張れるよう、私がマッサージを致しましょう!!」

「ノーサンキューだ」

「あー!ご主人様!」


 笑顔で提案をするイルに笑顔で断る。俺の体に触れるな?怪我をするぜ?


「マッサージ!マッサージ!」

「目潰し!」

「危ないですっ!?」


 こんな感じにな。



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