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呼ばれて行って

「失礼します!宮坂シュン殿をお連れしました!」

「おぉ、ありがとう。下がってよいぞ」

「はっ!」


 客間へ案内されると、中で豪華なソファに座っていた王様が兵士に命令をする。

 中には案の定、リューナと王様、そしてマナがいた。


 えっ、この空間に俺をぶちこむの?バカなの?アホなの?死ねユウト。


「君が宮坂シュン君か、まあまずは座りたまえ」

「あ、はい。失礼します」


 誘導されるがままに椅子へと座る。今の体制は俺とマナが向かい合い、左右に王様とリューナが向き合っている状態だ。上から見るとひし形になるな。


「で、えーっと……俺は何で呼ばれたんでしょうか?」

「まあ待て、今から茶を淹れる」

「うわっ、逃がす気がないやつだこれ」

「声に出ておるぞ!」


 つい本音が出てしまう俺に初めてリューナが口を出す。


「リューナ、これどういう状況なんだ?」

「今は話を聞くのじゃ」

「ちっ…」

「宮坂シュン様、紅茶でございます」

「あぁ、ありがとうございます」


 隣にスッとよってきたメイドさんが音を立てないようにして紅茶を置く。なんという奥ゆかしさ。これが王様直属のメイドか。


(私でございます、ご主人様)

(あ?……なんでお前がここに居んだよ)

(ご主人様の居る場所が私の居る場所ですから)

(答えになってねーっつの)

(ちなみに幻影魔法で王様のメイドに成り済ましています)

(相変わらずのハイスペック駄メイド具合だな)

(お褒めに預り光栄でございます)


 褒めてるかどうかは微妙なところだが、実際便利なもんだ。真面目な話をするとこいつは一応、魔界から来ているスパイだからこういう内情は聞き逃せないんだろうな。


 っと、そろそろ変な目で見られそうなので王様たちに向き直る。しかしこういう真面目なところで話し込むのちょっと苦手なんだよな……一体なんの話なのか。


「さて、宮坂シュン君。君に単刀直入に話したいことがある」

「はい」


 まっすぐに俺を見る王様。名前はロミオだったか。ロマンチックな名前をしているが、その表情は険しい。心して聞かなきゃな……






「君はうちの娘とはどういう関係なのかな!?」

「はい、えー…………あ?」


 まてまてまてまて……ここまでの振りはなんだったんだよ。王様の娘、つまりマナのことか?

 マナの顔をちらりと見てみる。うん、不思議と顔が赤いのはなんでかな?頬に手を添えるのやめてくださるかしら?


「どういう関係かと、聞いているのだが?」

「王様、血管が浮いていますよ?」

「聞いているのだ!」

「うぉっ」


 ドスンと机が叩かれる。おかしい、俺なにかしたのか?いや、絶対にマナだ。すべてはマナのせいだ。


 ということでマナを睨む。


 更に顔を赤くして小さく手を振ってくる。ちくしょう可愛いじゃねえか。


「ヌゥゥゥゥゥウウンッ!?」

「おぉっ!?ロミオがあまりの怒りに呻き声を!?」

「感心してる場合かリューナ!どういう状況か全く掴めてないんだが!?」

「ご主人様!私というものがありながらっ!!」

「お前は黙ってろ!!喋っちゃダメだろが!!」

「シュンさん、そんなに見つめられては恥ずかしいです」

「お前のせいなんだが!?」

「我が娘をお前だとぉぉ!?」

「こいつらめんどくせーっ!!」


 阿鼻叫喚(あびきょうかん)である。





 数分後、やっとのことで落ち着いてきたので話を始める。


「えっと、だからですね?俺とマナ…姫様はただの知り合……友人で、恋仲なんていう関係ではありません」

「ふむ、そうなのか?マナよ」

「えぇ、残念ながらまだ恋人の手前です」

「マナさん?ねぇマナさん?」

「では、二人にはそういった関係はないのだな?」

「はい」


 やっとのことで警戒が解けたようだ。ふぅ、なんとか乗り切った。


「ていうか、どういう経緯でこんな話に?」

「ふむ、まずはワシがここに呼ばれるじゃろ?」

「うん」

「そしてここに来た理由を話すじゃろ?」

「うん」

「マナ姫がシュンの名前に反応するじゃろ?」

「うん?」

「王様が気になり聞くじゃろ?」

「……」

「それは私の口からはとても……とマナ姫が言ったからじゃ」

「マナぁぁぁぁぁぁ?」

「てへっです」

「殺意ってこんな簡単に沸くんだな」


 くそぅ、王様がプルプル震えてるじゃねえか。理不尽にも程があるぞ。


「というか、シュンさんはリューナ様といつ知り合ったんですか?」

「ん?それはじゃの。シュンが空から急に降ってき──」

「この前その辺の店で会ったんだよ!それで気が合ってな!な!?」

「んぅ……?そういうこと…じゃな?」

「リューナ様が疑問系ですが……まあ良いでしょう」


 ばか野郎リューナ。それ話したらマナや王様にイルのことがバレちまうだろうが。ワープホールから投げ出されたから、空から落ちてきたみたいになったけどな。


「それでは宮坂シュンくん」

「あ、はい」

「もし君が本当にマナのことが好きなら、それを私に証明してほしい」

「……あ?」

「私と勝負するのだ!」

「んぅぅぅぅ?」

「く、くく……うふふ……ふふふ」

「おい笑ってんの丸見えだからなマナ」


 あいつめ、面倒事を持ち込んだ上に影で笑ってるとか性悪女め。面白いからってこんな展開に持ち込むとは……


「まあよいではないかシュン。一国の姫様との婚約が出来るかもしれんのじゃぞ?」

「はぁ……お前もお前で楽しんでんだろ」

「どうせロミオの気まぐれじゃ。付き合ってやれ」

「もしなんかあれば止めてくれよ?」

「当たり前じゃろう。シュンに何かあればワシはこの国を滅ぼす勢いじゃぞ」

「…嘘だよな?」


 ふふんと笑うリューナ。俺は部屋のベッドに想いを馳せて王様との勝負に望むのだった。


「して、その勝負とは何をするんですか」

「私が最近ハマっている遊びがあるんだ、これを見てくれ」

「こ、これは……」






「『将棋』で勝負するぞ!!」

今回はマナ回?となっておりますわ。皆様、存分にマナの可愛さに酔いしれてくださいまし。(裏声)

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