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普段の生活③

 午後の練習場にて。


「えいっ!」

「やぁ!」

「とぉうっ!」


 クラスメイトたちが元気に木の棒を振り回している。気の良い奴らよのぅ。これからしばらくすればもうモンスターと戦う毎日だというのに。


「若いなぁ…」

「何を言うとるんじゃお主……」

「おぉ、リューナか」

「久し振りじゃの。元気にしておったか?」

「お祖母ちゃんみたいなことを言うな」

「カカッ、もうおばあちゃんかのう?」


 見た目はとても若いコスプレ大好きさんにしか見えないリューナ。そんなリューナが何のようだろうか?


「む、友に会いに来て何が悪いのじゃ」

「あれ、リューナって友達いたのか?」

「お主……それは泣くぞ?」

「悪い悪い、冗談だよ」


 そういえばリューナは友達かあんまりいなかったのか。それに俺と会うまでは一人で隠居していたみたいだから、暇してたんだろう。


「そういやリューナはさ───」

「あ、あれ!?おいあんな美人いたか!?」

「おいおいおい美し過ぎるだろ!?」

「女神……?」


 リューナに話しかけようとしたら周りが横やりを入れてくる。まぁ、ルックスというか、見てくれはホントに可愛いからな。そりゃそうか。


「やったなリューナ。モテモテだぞ?」

「ししししし、しシュンっ?ここここ、こやつらは誰じゃ……?」

「クラスメイトだけど……あっそっか」


 コイツそういやコミュ症だったか。あれ、それじゃあなんで俺と最初会ったときは普通に話せてたんだ?


「ねぇねぇ!なんて名前なの!?俺!俺は藻部(もぶ)!よろしく!」

「よ、よろしくなの……じゃ?」

「ちょいちょい!俺を忘れてもらったら困るっしょー!?」

「あ、お前は確か……」

「因幡っしょ!?久し振りの出番だからってそれはないっしょーっ!?」


 このテンション高いやつの名前は因幡(いなば)(はる)。口調がとんでもねーやべぇやつ。ていうかその前の藻部くん名前が可哀想過ぎるだろ。もうちょっと考えやれよ作者。


「わわわ……」

「そんな慌てるなよ」

「ぬぅ……しかしこう久し振りに人の前に立つと気恥ずかしいものが……」

「みんなリューナと仲良くなりたいんだよ。ほら、行ってこい」

「い、いやじゃあ……」

「「「「やんややんや」」」」


 リューナはあっという間に男子どもに囲まれてしまう。楽しそうだなぁ。めっちゃ必死な顔で返事してるけど、きっと多分恐らくリューナは楽しいのだろう。うん。


「あの女性、シュンくんのお友だち?」

「あ?あぁ、いや……うん、そんなところかな」

「……むぅ」

「なんだよ、結城さん。急にむくれて」


 ひょこっと現れた結城さんが不意に話しかけてきた。リューナには世話になったし、実際一緒にいて楽しいから認めてやる。そろそろ助けてやった方が良いかな?


「シュンくんが友達って認める女の子って少ないよね」

「本当のことだからな」

「私は?」

「あ?何が?」

「私は!友達じゃないの?」

「えー……あー………知り合い?」

「へぇ、そういうこと言うんだ」

「待て、結城さん?今までに見たことないような顔してますよ?」


 いつもの可愛らしい顔が、なんだか恐るべき邪気を放っている。しかしその顔もそういう人にとってはとても好みなのだろう。そんな顔をしている。小悪魔系ってやつか?いや違うのか。


「じゃあ私と友達になろ?」

「なんでだよ。俺と友達になって得なんてないだろ?」

「え?友達に損得なんてないよ?それに、私からしたら得があるし……」

「お金はないぞ」

「そういうことじゃないから!……うーん、じゃあこうしよう!」


 名案を思い付いたと言わんばかりに手を叩く結城さん。頭の上に電球が付いたみたいだ。可愛いなオイ。


「これからシュンくんは私のことを名前で呼びます。それでいい?」

「それで良くないです。え、なに、なんの話?」

「だ、だから!シュンくんと友達になるならまず形から入った方が良いかなって思ったから、まずは名前呼びから始めようかなって…」

「あー……あ?」


 ん、だから、要するに俺と友達になりたいということか?何のために?友達になってどうするんだ?もしかして俺の内情を探って女友達に言いふらすつもりか……?


「土下座で良いか?」

「急に何の話っ!?」

「頼むから言いふらさないでくれ」

「何を!?えっ!シュンくんの中で私はどういう存在になってるの!?…………ふふっ」

「え、なに、こわ」

「シュンくんと話してるとなんだかおかしくなっちゃうよ」


 俺、今貶されたの?おかしいな、結城さんの気に障るようなことしたかしら?


「あぁ、そういう意味じゃなくってさ。私と話している人って基本的に眼を見て話してくれないから、シュンくんは違うなぁって」

「あ?当然だろ?人の話を聞くときは眼を見て話す。小学校の頃から教えられてきただろ?」

「うん、そうなんだけどね。いつも私と話すときってほとんどの人が眼を逸らすか、む…胸元見てきたりとかであんまり目が合わないんだ」

「ふぅむ。ま、分からんこともない」


 俺も男だ。ついつい胸元を見たくなったりするときはある。それに顔を見るときなんて尚更だ。


「結城さんって可愛いから顔を見ると恥ずかしくなっちゃうんだろ」

「か、かわっ……!?……うぅ、照れるからやめてほしいよ…」

「すまんかった」

「あれ?じゃあなんでシュンくんは恥ずかしくならないの?いや、自画自賛するつもりじゃないんだよ!?でも、シュンくんの理論ならそうなるはずじゃ?それともシュンくんから見たら私って可愛くないかな……?」

「めっちゃ早口じゃん」


 畳み掛けるように話す結城さん。まるで自分の好きなことを話すコミュ症オタクのようだ。いや、バカにするわけじゃ……いや、してるのか。まあもう少し落ち着いて話そう?


「うーん、そうだなぁ。最初から嫌われてると思って会話してると余計なこと考えず話ができるぞ」

「卑屈すぎないその考え!?」

「コミュニケーションが苦手な現代人への処方箋だ」

「劇薬だよそれ…」


 言い過ぎかもしれないけれど、少なくとも俺はそうやって会話をしている。


「ていうかじゃあ、シュンくんは私に嫌われてると思ってるの?」

「うーん……嫌いなやつにわざわざ話しかけないよな?だったらあれかな。ユウトからの評価を上げるために俺に話しかけてるんじゃないのか?」

「え?」

「え?」


 鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする結城さん。今までもそんな感じで話し掛けてくる人は一杯いたからな。男も女も、みんな揃って話し掛けてくる。もちろん、俺は興味もないから適当に流しているとその内離れていく。


「結城さんはその分、中々しつこいな」

「しつこっ……そう思われてるんだったら、ちょっと悲しいなぁ私」

「あ、ごめん。つい出ちゃった」

「私は、別にユウトくんとか関係なく、単純にシュンくんと仲良くなりたいから話し掛けてるんだよ?」

「………なんで?」

「えっ……えぇと…ちょっと今言うのは…」


 顔を覆って赤面する結城さん。んん?なんかこの反応見たことあるぞ?ユウトと話してる女の子っていつもこんな感じだよな?……は?


「え、いや、待てよ?そんなことあるのか…?」

「へっ!?な、何の話かな!?」

「いや俺の思い違いなら恥ずかしすぎる!!すまん!忘れてくれ!」

「えぇ!?う、うん!そうだね!忘れよう!うん!」


 二人で同時にため息を吐く。ふぅ、危ない危ない。結城さんが俺のことを好きだなんて勘違いしそうになってしまった。そういうことは考えないようにするんだ。後悔するぞ!俺!


「シュン…なぜ助けてくれなかったんじゃ……」

「お!おお!助かったぞリューナ!」

「むしろ助けてくれなのじゃ!?」


 俺最近、特訓場で打ち合いした記憶ないなぁ。そろそろミラン兵長に怒られそうだからやらねばない。リューナとやってみるか!良いよな?多分。



リューナをもっと出そう。うん。

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