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高木 旬

「……てな感じで結城さんのところにあの高木ってやつが行ってたんだよ」

「なるほど。で、ご主人様は?」

「無視して部屋に帰って来た」

「ご主人様っ!?」


 ぐえっ。やめなされ、肩を掴んで揺らすのをやめなされ。


「結城様のこと、大事じゃないんですかっ!?」

「いやまあ、他の有象無象どもよりは仲がいいと思う。知り合いって感じか?」

「頑なっ!!じゃあユウト様は!?」

「ゴミ、カス、エアコンのフィルターに積もる埃よりも矮小な存在」

「一体何がご主人様をそこまで…」


 百面相のようにコロコロと表情を変えるイル。面白いじゃないか。


「ご主人様、本当に結城様を助けに行かなくて良いんですか?」

「良いもなにも、俺に被害がないからな」

「む、むぅ…さっきご主人様は結城様のことを『知り合い』と仰いましたよね?」

「そうだな」

「知り合いに不幸が起こると、後味が悪いですよ……?」

「…なるほど。確かに。じゃあ行くか」

「理由が無いと動けないんですね、残念なご主人様です……」

「なんか言ったか?」

「い、いえ!行きましょう!」


 焦るように部屋を出ていくイルに着いていく。すぐに女子寮が見えてくるが…


「おい、これバレたらどうするんだ」

「大丈夫です」

「何が大丈夫なんだ」

「私は大丈夫です!」

「うるせえ叫ぶなクソ駄メイド」

「…本当は魔法で透明に出来ます」

「おいコイツ天才か」

「はい、天才上級魔族です」


 そうだったわ。魔王幹部なだけあるわ。

 分かった、コイツにストーカーされたのに全く気づけなかった理由が。透明化してたからだ。魔神の眼でも意識しなければ見れない程に高度な魔法なのだろう。


「あちらですね、結城様の部屋は」

「よく覚えてるな」

「ご主人様何回か呼ばれてるじゃないですか…なんで覚えてないんです」

「俺は下級人族なんだよ」

「人族に下級も上級もないはずですが…」


 コソコソと音を立てないように女子寮の中腹まで潜り込む。とうとう結城さんの部屋にたどり着いた…が、案の定、扉が開いてるな?


「ご主人様、これでもし、大事になっていたらご主人様のせいですからね」

「お前、俺のメイドならもっとフォローをだな」

「女性を大切に扱わない男性のことはフォローしません」

「そんなキャラだったかお前…」

「正しい道を歩ませるのが──」

「長くなるだろ?それ」

「……すいません、行きましょう」


 部屋の中に入ると、高木が中に居た。結城さんはベッドに寝ているようで、それを上からただ見つめている。時々片手を下半身の一部に這わせていることを除けば。


(おい、あれはさすがに犯罪だろう)

(流石にと言いますか、どう考えても犯罪ですね、死刑です)

(どうする?)

(どうするもなにも、結城さんを起こすことなく処理するしかないでしょうね)

(処理という単語を使うあたりキレてらっしゃる)


 イルは女性に関しては誠実で居させようとするからなー。高木、お前は残念ながら残酷な死が送られることだろう。


「はぁ……はぁ……僕の女神…なんて美しいんだ…はぁ」


(怖い怖い怖い怖い)

(女の敵ですね、去勢しますか)

(ゾワッ)


 高木、お前、死んだよ。男として。


「あぁ…なんで僕に気付いてくれないのかなぁ…あんなに見詰めたんだよ?ねぇぇ…」


(おいアイツ舐めようとしてねえか?)

(ご主人様っどうにかしてくださいっ)

(俺がやるのか?)

(触れたくありません!あの方に!)

(それは俺もなんだが)


 魔法を維持して貰ったまま、高木の側へ寄り、肩を掴みそのまま強引に引っ張る。


「ぐえっ」


 ドサリとベッドの上から地面に落とされる高木。そして周囲を確認するように色々なところに眼を向けるが、俺にもイルにも気付かない。


「だ、誰か…いるのか?」


 ボソリと呟く高木。しかし言葉が返ってくることはない。


「仕方ないな…」


 と、突然高木の手から何かが出てくる。少しずつ形になっていくそれは最終的に、一つの丸い玉のようになっていった。


(なんだあれ)

(ブンブンブンっ)


 あ?イルが手を振ってきている。なんだ?


 ゆっくり音を立てないようにイルへと近付く。するとイルが手を伸ばしてきてそのまま抱えられる。


(お、おいバカ…)

(ご主人様、あれは、魔力探知機ですね。いつの間にあんなものを…)

(なんだと?魔力探知?)

(えぇ、あれは周囲の魔力ある物に反応する魔道具ですね。主に国の重役の人たちがパーティーをするときとかに危険物を所持してるか確認する際使われる魔道具なのですが…いつの間に…)

(ふむ…そういやアイツの能力に創造とかあったがそれか)

(能力なのですかっ、凄い能力ですね、さすが召喚者です)


 まあ凄い能力だが、こんなことに使うのはちょっと頂けないな。


「反応がない…なんだったんださっきのは?」


(なんで気付かれないんだ?)

(私が魔力の気配を消す魔法を使ってるのです)

(なんだその矛盾に溢れた魔法は…)

(しかし効果範囲が短いのでご主人様を抱えているのです)

(なるほど)


 しかしまぁ、なんだ。この格好は中々恥ずかしいな。イルのやつ、男である俺をこんなにがっつり抱えて恥ずかしくないのだろうか。


「…魔力探知機を起動させてれば心配ないよね?…よし、気を取り直して…」

「ん、んぅぅ…そこに誰かいるの?」

「っ!?」


 おっと、眠り姫がキスもなしに起きよった。


「逃げっ」

(させねえよ)


 走って逃げようとする高木に足を引っ掻ける。見事にヘッドスライディングをする高木。十点満点だ。


「へっ?だ、誰っ!?」

「いてて…あっ」

「え?高木…くん?」


(目と目が合うーしゅんかーんすーきだとーきづーいたー)

(ご主人様っ)

(正直すまんかった)


 高木と結城さんの目が合い、どちらも動きが止まる。ちょっと面白い。


「あの、え?なんで高木くんが?部屋にいるの?」

「……」

「ど、どうしたのかな?」


(マジか、凄いな結城さん)


 なんとパニックになっていないらしい。かなり驚いたみたいだが、一瞬で現状を理解したようだ。

 高木の感情が昂らないように優しく問いかけている。やはり天才か、こいつも。


「お、驚かないんだね?」

「ううん、驚いたけど、高木くんだったから何のようかなって」


 なるほど、上手いな。クラスメイトだから驚いたけど何か理由があるんだと思ったってことか。これなら高木も…


「僕だから…?や、やっぱり!」

「へ?」


 高木が口角を釣り上げて笑みを浮かべる。


「僕たち()()()()なんだよね!」


(そうきたか)

(もう手遅れですね、この方は…)


 イルと俺はため息をつき、この後の展開を想像しながら頭を押さえていた。

微妙な顔の人(そういえばこの高木ってやつ、下の名前が俺と同じシュンって名前なんだよな)

メイドしゃん(それはとてつもない不名誉ですね、仕方ありません。私がやりましょう)

微妙な顔の人(やるって何をだ。この小説はR-15指定だからグロすぎるのはダメだぞ)

メイドしゃん(えぇ、大丈夫ですご主人様。私がやるというのはーーをーーしてーーーーすることとか、ーーのーーをーーーしてーーーせることですから)

微妙な顔の人(ほら規制掛かっちゃってるからっ)

メイドしゃん(なるほど?)

微妙な顔の人(なんで疑問系なんだよ)

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