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正しい道

 ゾーイを小屋に返し、寝かしつける。特に帰りは問題なく帰ることが出来、自室へとワープホールを用いて帰れた。


「はぁ、疲れた」


 もう夜も更け、辺りは真っ暗。廊下のランプがうっすらと照らしているが、奥までは見ることができない…というのが普通の奴らだろうが俺には関係ない。何と言っても魔神の眼である。


 ここは男子寮と女子寮の間の廊下を通り、歩いたところにある。故に帰る場合は女子に見つからないように帰らなければならない。ミッションインポッシブルである。


「悪いことなんてしてないのに罪悪感に襲われるのは、多分日本人の悪い癖だな」


 誰に言うわけでもなく、ボソリと呟く。歩いていくとすぐに男子寮と女子寮に挟まれた通路に当たる。


 で、だ。こういうのは、見た方が見つかりやすいのだろうが、つい見てしまうものである。男子寮への通路と曲がる前にちらりと女子寮を見る。


 ……人影はない。大丈夫なようだ。


「ミッションコンプリートだな」


 俺は笑みを浮かべ振り替える。

 


「──え?」


 日本の映画によくある演出をしってるだろうか。


 例えば、主人公がどこかのお化け屋敷に行ったとしよう。うすら寒い気配に主人公が振り替えろうとする。そのときにはきっとBGMが流れ、ゆっくりと主人公は振り替えるだろう。そして、()()()


 主人公は安心したようにため息をつき、元の方向へ振り向く。目の前には怪物。フェイントである。


 ここまで言えば分かるだろう。


「──ッッ!??」


 目の前には男が立っていた。声にならない叫びが出る。不幸中の幸いかおかげで音を出すことはなかったが、驚きで動けないでいると、目の前の男が動く。


「ちっ」

「あ?」


 こいつは…高木か。下の名前は覚えていないが結城さんのストーカーだ。俺が結城さんにコンタクトを貰うときに部屋へ侵入してきた変態。


「お前、こんなとこでなにやってんだ?」

「…僕の勝手だから」

「あ?まあ別に興味なんて無いからどうでもいいが…」


 よし、久しぶりにあれやるか。

 俺は高木を凝視する。瞬間、目の前に半透明のウィンドウが現れ、高木のデータが写し出される。


ーーーーーーーーーー



高木 旬 16歳








体力 C 魔力 -B 攻撃力 +C 忍耐力 C








精神力 D 俊敏 C 総合戦闘力 C








称号 ママっ子 歪んだ性格 創造




ママっ子:母親や母性を感じる相手に対して好意的になる。好意的と言うのは具体的に、恋愛感情や甘えたがりになるなどの多種に及ぶ。へっ、このマンモーニがっ!




歪んだ性格:こいつぁくせェッ!ゲロ以下の臭いがプンプンするぜェっ!!育った環境とか誰かに影響されたとかそんなんじゃねぇ!こいつァ生まれついての悪だッ!




創造:神様に貰った能力。この世界にある物を魔力を用いて創ることが出来る。




情報:高木家の長男。一人っ子。生まれつき、何かに執着する性質を持っている。また妄信的な面も持ち合わせており、一度偏った思考は中々曲げられない。マジキモい。


求めた情報:これから行こうとしているところは結城美郷の部屋。


ーーーーーーーーーー




 えっなに、もしかしてキレてるの?最近あんまりステータスとか見なかったからキレてんの?ごめんって。だって別に興味ないからさ、ステータスとか。ごめんね?これからはちょいちょい見るから許して。


「なんだよ?君も僕を貶すのか?変なやつだとか思ってるのかっ!?」

「うるさいぞ、高木。貶すもなにも俺たちに関わり合いなんて無かったんだから何も思わねーよ」

「うるさい!うるさい!…やっぱり…僕には…僕には女神しかいないんだ……」

「おい?何ぼそぼそ言ってんだよ?あ、おい」


 何か呟いた後に俺を無視して歩いていく高木。方向はもちろん女子寮。ふむ、ここは止めた方が得策か?


「ま、いいや」


 別に俺に被害ねぇし、部屋に戻ろうか。





「ただいまー」

「ご主人様!どこ行ってたんです!?昨日出ていったきり戻ってこなかったじゃないですか!」

「あぁー、うん、そういえばそうだったな」


 昨日、出ていったあとにゾーイと寝てしまい、そしてこの時間になって戻ってきたおかげでウチの駄メイドさんがお怒りである。


「はっ、もしかして……夜遊びですかっ!?私じゃ物足りないんですかっ!?」

「なに言ってんだお前」

「ダメです……ダメですよぉご主人様……他の女の臭いがプンプンするじゃないですかぁ……?」

「怖いキモい目がドス黒い」

「もー!プンプンですよっ!ぷいっ」

「あーはいはい、カワイイカワイイ」


 ったく、相変わらずうるさいヤツだ。さっきの高木は物静かだったがこの駄メイドときたら…高木を見習いなさい。変態なところはコピー出来ているのだから。


「でもご主人様、本当に、心配したんですからね」

「……ちっ、うるせえよ、お前には関係ないだろ」

「いいえ、あります。ご主人様は私のご主人様なんですよ?私の見えないところで危ないことはしないでください」

「別に危ないことなんてしてねーよ」

「ご主人様、目を見て喋ってください」


 くそっ、なんだコイツ。急に真面目になりやがって。


「……良いんだよ、どうせ俺がどうにかなったところで悲しむ人なんていねぇからよ」


 そう、悲しむやつなんて、家族もいないし友達もいない俺にいるわけがない。そもそも必要がない。だって、その方が楽だから。


「だから俺がなにしてたって」

「──ご主人様」

「んだよ?」

「それ、本気で言ってますか?」

「本気もなにも、俺はいつだってマジだ」

「申し訳ありませんご主人様」


 なにがだ、そう言おうとした瞬間に、左の頬に衝撃が走り鋭い痛みが走る。目の前の駄メイドが涙目で張り手をしてきたようだ。


「てめぇ…?メイドのくせに」

「メイドだからです。メイドは主に尽くさなければなりません。メイドとして、正しい道を歩ませなければなりません」

「なんだよ、正しい道って。そんなの人のものさしで図れるもんじゃねえだろ。俺には俺の道がある」

「そうですね。ですから、ご主人様がすることには、基本的にとやかく言うつもりはありません」

「だったら」

「──ですが……ですが、どんなに険しい道でも、どんなに酷い道だったとしても、その道から()()()()()だけは許しません。外道になってしまうことだけは、決して。」

「……」

「ご主人様は今、いえずっと前から道のギリギリを歩いていましたが、人の手を取ることが出来なければその内本当に倒れてしまいますよ?」


 眼が、逸らせない。ただの戯れ言だと、他人の言葉など響くはずがないのに。


「…別に俺は、道を外れようとなんてしてない。むしろ外れないように必死だ」

「ならなんで私の手を取っていただけないのですか?必死なら、掴めば良いじゃありませんか。それとも、掴めない理由でもあるのですか?」

「お前には関係ないだろ」

「ご主人様っ!………私では、いけませんか?力にはなれませんか?」

「力になってほしいなんて思っていない。それに現状に俺は満足しているんだ。これ以上俺に突っ掛かるな」

「では…今はそれで勘弁します。ですが、言いたいことを言わせてください」

「一つだけだぞ」


 くそっ、気分がわりい。コイツ、俺の心が読めているような言い方しやがって。


「周りを、ちゃんと見てください。ご主人様の周りには頼りにしてほしいという方がたくさんいらっしゃいますよ」

「あぁ、だから利用してやってるだろ?」

「利用でも構いません。ですが、悲しむ人が居ないなんて、悲しいことを言わないでください。他人に嘘をつくのも、私に嘘をつくのも構いませんが自分に嘘をつかないでください」

「俺は嘘をついてなんかいない」

「では、本当に、心の底から、自分を心配する人はいないと?」

「……」

「しょうがないですね。嘘つきで、どうしようもない方には()()()()()()()()()()()

「なにをっうぶ」


 急に視界が真っ暗になる。そして顔面に柔らかな感触。後頭部を抱き締められていることも分かる。


「……てめぇ」






「───私が居ますよ、あなたの側に」


 呟くように、ただ、俺だけに向けて吐かれた言葉。すべてを肯定するような、何の理由もない、薄っぺらな、重さのない言葉が耳を通る。


 だが、その言葉は伝わってくる。


「ご主人様が暗く危ない道を歩いていることは分かりました。先も見えないことでしょう。ですが、それでも隣くらいは見てくれませんか?」


 にこりと笑う、メイドが居た。その瞳は少し赤みを帯びていて、けれど力強い。


「───私が、居ますから」


 何度も、押し込むように告げられる言葉。


 人は、どれだけ偉い偉人から御言葉を貰っても、心に響くことはない。日本の皇帝が国民に向けて喋っても、俺たちはのほほんと聞いてるだけで、ほとんどの頭の中は晩飯でいっぱいだろう。


 それは何故か、簡単だ。()()()()()()()()()()()()()()()()なんだ。

 校長先生が朝礼で喋るとき、それは生徒に向けられたもので、自分に向けられたものじゃない。

 皇帝さんだって、国民に向けたもので、自分に向けられたものじゃない。


 標的は、大勢じゃなく、自分だけに向けられたものだとしたら、それは抵抗しようもなく心に響いてしまうものだ。


 このメイド、イルの言葉が全て心に響いてしまうのは、イルの喋る言葉が、俺だけの為に紡がれた言葉だからなんだ。他の誰でもなく、ただ、宮坂シュンという、人間のためだけに。


「……もういい」

「あっ…ご主人様……」


 俺はイルを押し退け、距離をとる。イルは一瞬寂しそうな顔をするが、すぐに元の顔に戻り、俺への説教を再開しようとする。が、もうそれは聞き飽きた。


「訂正しようとするまで私はっ」

「いいや、訂正はしない。俺を悲しむ人なんて絶対にいない」

「ご主人様っ!」





「───だが、俺を悲しむ()()ぐらいなら、いるかもしれねえな」


 ふん、今日だけだぞ。今日だけは、勝ちを譲ってやる。


「俺の負けだ。悪かった」

「ご主人様ぁっ!」

「ふん」

「攻略完了です!」

「死ねっ!」

「ひぎぃっ!?」


 耳を引きちぎる勢いで引っ張る。イルは涙目で……あ、いや泣いてるわ。


「折角良い話で終わりそうだったもの、恥を知れこのクソ駄メイド」

「ご主人様は涙でゴリ押せば攻略できる!」

「まだ言うか変態」

「痛いです痛いです!……でも、気持ちいい……」

「よし、分かった。ちぎれば良いんだな?」

「あぁ待ってくださいご主人様っ!?強くなってきてます!力がっ!強くなってきてますぅっ!?」


 ギリギリギリィ……


 人の耳で鳴っていいような音じゃないが、まあこいつは魔族だし、良いだろう?


「ああああああっっ!!」

「朝まで泣きなっ!」




 人が魔族を攻撃し、泣かしている光景がそこにはあった。しかし、誰が見てもその光景を差別や苛めに見えることはないだろう。それは、まさしく夫婦喧嘩だったのだから。


「誰がだっ!!」



 チャンチャン♪


ノリと勢いだけで誤魔化そうとするから、意味のわからない文章になっちまった。おかしい…因果 率のせいだ。

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