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置いていけ

やばい…ボケ書いてたら楽しすぎて展開を見失った……話が何一つ進んでないっ!?

 ガヤガヤとうるさい街道。王国との差はほぼなく、王がいる町と同じくらい栄えてる町である。ちなみにこの街の名前は『セルウス』というらしい。


「この街、セルウスは王国と同じくらい、下手をすれば王国以上に栄えております」

「そうだな、見て分かる」

「理由は…言わなくても、この景色を見れば分かりますか」

「だな」


 王国とただ一つ、違うところは、町中に多すぎるのだ。『()()』が。


「奴隷貿易か。反吐が出るな」

「正解でございます」


 人間にロープのようなモノで繋げられている亜人がたくさん歩いている。そして、その亜人を連れている人間は誰しも、我が物顔をしている。


「ご主人様、魔力が漏れだしております。主に左眼から」

「……すまん」

「ご主人様はこういうのは好まれないのですね」

「こういうのってのが何を示しているのかは知らんが…この奴隷制度は好かんな」

「支配欲、というものをご存知でしょうか?」

「…ああ」


 支配欲、というものがある。例えば恋愛。好きな人が出来たとき、その彼・彼女を自分のものにしたい。自分だけのものにしたい、という欲求。独占欲と言い換えても良いかもしれない。


 支配欲の強いヤツは暴力的な傾向や自己中心的なヤツが多い。支配欲とはつまり『相手の行動を強制したい』という欲求なのだ。自分だけを見ろ、勝手に動くな、唐揚げにレモンをかけるな…考えればいくらでも出てくる。


 そして気に入らないから殴る蹴るや暴言へと繋がっていく。度が過ぎると、それは嫌われる対象になってしまう。


 『奴隷』、アニメやマンガで時々出てくるが…あんな制度を喜んで受け入れている時点でソイツらは人道的な考えが出来ないヤツなのだ。


 奴隷とは言わば『全てを肯定する存在』。それは彼らの支配欲、独占欲を満たす存在であり、命を投げ出した者に与えられる称号だろう。もちろん、自らなのか他者の悪意によるものなのかは知らないがな。


「ここにいる人間が全て人間に見えなくなってきた」

「ご主人様…」

「この奴隷制度、国王は許してるのか?」

「この街の長であるアッシモが何らかの裏工作をしているようです。国王も黙認という形になっているそうで」

「認めてるのか…?」

「少なくとも、便宜上ではそういう事になっています」

「……ふぅん」

「あわわ…あわわわわわ」


 なるほど、なるほど。俺のとなりで何故か鬼でもみたかのように慌てているイルを横目に、俺は町を歩くモノを睨み付ける。


「帰るぞ」

「は、はい?」

「興が冷めた」

「ご、ご主人様……すみません」

「あ?なんでお前があやまんだよ?」

「私がここへ連れてきたばかりに……」

「イルが俺に見せたいと思ったのはこの光景か?」

「いえ、この付近にホタルガの集まる湖がありまして、そこの夜景でも見てもらおうかと思っておりました」

「ならお前が、イルが謝ることじゃあない。それよりも早く帰るぞ。空気感染しそうだ」

「か、かしこまりました。あ、あの、魔神の眼の魔力を出来る限り抑えて下さればワープできると思います」

「やってみる」


 なぜイルはこんなにもビクビクしているんだろうか?……あ、いつもビクンビクンしてるから変わらねえか。




 その後、なんとなく抑えようと力んでみたり力抜いてみたり……要は意識をすれば帰ることができた。帰った後もしばらくイルは怯えてるような興奮しているような感じだった。


「あの町……セルウスってのはここからどれくらいの距離にあるんだ?」

「そうですね……それなりの距離がありますが、馬車で2~3日と言ったところですかね」

「ふむ、ならばギリギリ感染はないか」

「ご主人様は何から逃げているんでしょう…」

  

 部屋で二人で話していると、不意にあることを思い出し聞いてみる。


「あのさ、俺の目的地はどこだったんだっけ?」

「ホタルガの湖付近の予定でした」

「あぁ、そうだったな。で、お前はそこまで行けたのか?」

「いえ、ご主人様の魔神の眼による魔法式の故障より途中で投げ出されました」

「シアのときは行けたんだろ?」

「あれは私の後にご主人様が続きましたから。今回はご主人様が先に行っちゃいましたからね」

「おかしいな、背中を押された記憶があるのだがな?おかしいな?ん?」

「ご主人様の背中を押し、正しい行動をさせるのがメイドの仕事でございます」

「『背中を押す』の意味が違うな?」


 会話が噛み合わない。難しい、日本語って。


「で、イルは何処に居たんだ?」

「そうですね、森の中に投げ出された後、ご主人様を見かけたので着いていくと亜人の幼女らしき子と一緒に顔が怖いご主人様ッッ!?」

「まあ待て、話を続けろ?な?」

「い、痛いですっ!?肩を掴む手の力がおかしいですご主人さいたぁいっ!?」

「話を続けろ、いいな?」

「はい!それで、いた…ご主人様がその幼女と寝るのをいたっ…見てまし…いた…気持ちいい…」

「最後まで言い切れ変態」


 くそぅ…まさか幼女と寝ているところを目撃されるとは…いやしかし、別に他意があったわけじゃないから…


「そのあと、ご主人様が幼女の頭を撫で…ってなかったですっ!!はい!!見てません!ええ見てませんともっ!」

「ふぅん、ところで何処から見ていた?」

「そちらから見て死角になる小屋の影から」

「よし、じゃあ…消そっか?」

「ご主人様!?ニッコリとしながら何をしようとしてるんですっ!?」

「とりあえずその記憶と命を置いていけ」

「記憶を奪えば命は要らないのではっ!?」

「その記憶と主に命を置いていけ」

「逃げますッ!!」


 走り出すイル。俺はもハや考えを捨て、ただ目の前ノ獲物を仕留メる獣になル。


「シュン?失礼するぞ、話があって来たんだけど…てこれどういう状況?」

「ゆ、ユウト様!ご主人様を!ご主人様をどうかっ!」

「ソノキオクトイノチヲオイテイケ」

「シュンっ!?記憶を奪えば命は要らないんじゃないかっ!?」

「あ、ユウト様。そのツッコミはもうやりました」

「えっ…そっか」

「トンカチ…?いやここはやはりハンマーか?」

「ご主人様が方法を模索しておられるっ!?」

「シュン!?それは迷信だからっ!死亡する可能性の方が高いぞ!?」

「ユウト様違うっ!ツッコミ方がおかしいです!」


 フシュー…フシュー…


「シュンくん?なんか騒がしいけど何かあった…なにこの危機的状況っ!?」

「あの方は結城様っ!?結城様!お助けくださいっ!」

「えっだれっ!?」

「そういえば結城様と話したことございませんでしたっ!」

「ソノキオクトイノチヲオイテイケ」

「何があったの!?」

「結城さんっ!シュンを止める方法分からないかっ!?」

「えっ!?うーん……枕をあげるとか?」

「流石にシュンもそこまで単純じゃないだろ…」

「た、頼るものは他にありません!私は枕に命を預けました!」

「荷が重いだろうな…枕……」

「ソノキオクトイノチヲオイテイケ……ソノキオクトイノチヲオイテイケ……」

「どうかご主人様を止めてください!枕様っ!!」

「う、『うん、分かったー』」

「結城さんの腹話術……」

「グゥ……グゥ……」

「「「寝たっっ!?」」」




 それから目が覚めたとき、何故かイルたちがビクビクしていたのだが、何があったのだろうか?ふむ、昨日部屋へ帰って来た辺りから記憶がない。変な寝方でもしたか?


駄メイド「秘密にしましょう。私、ほんの少しだけなら記憶を消すことが出来ます」

マドンニャ「そ、そうだね……何があったのかは知らないけど、明らかに尋常じゃなかったもんね……」

清涼飲料「いやなんでイルさんそんなこと出来るんだ…」

駄メイド「秘密です。秘密は女のたしなみですよ?」

マドンニャ「そうなんだ……」

清涼飲料「な、納得いかないなぁ……」

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