表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/91

飛ばされた先は…パートツー

 あれからミラン兵長には報告をし、軽く感想文みたいなものを提出したあと、報酬としてしばらくの休息をいただいた。正確には3日間の休みだ。


「ご主人様!あっちにも行ってみましょう!」


 折角の休日ということで一日中眠ろうと思ったが、俺のとなりでウキウキと浮き足立っているのはどうしようもない駄メイド、イルである。


「これは…何の肉ですかね?」

「さあな」


 人間界の探索という名目のもと、何故かイルとデートのような形で王国内を歩くことになった。今は市街地で食べ歩きをしている途中だ。イルはケバブみたいなものを指差し喜んでいる。


「買いましょう!」

「はいはい」


 もちろん俺も最初は断ったさ。でもコイツ、俺の良心に漬け込んで『いつもスパイをしたり身の回りのお世話をしたのでご褒美をください』とか言ってくるんだもん。

 いやお前、前に奉仕することが仕事と言ってたじゃねえか。シアからも給料入ってんだろ?俺も王様から支給されている金がある。


「おいひいでふぅっ!」

「そうか、そりゃあ良かったな」


 俺は一刻も早く帰りたいよ。


「ご主人様、楽しくないのですか?」

「うんまったく」

「……女心を分かっていませんねご主人様…私、一応初デートなんですよ?」

「やっぱりデートのつもりだったのか。俺はそのつもりは一ミリもないからな」

「ぶー」

「ぶーじゃないが」


 どこか様式美のような一連の流れを行い、いつも通りに時間が流れる。思えばこの世界の食べ物や店について知ることはあまりなかったな。

 休日が出来てからこの辺りを歩けるようになったみたいで、他のやつらはタマに来るようだが…ここまで来ても結局やることなんてないからなぁ。


「ご主人様がつまらないのなら、私もつまらないです」

「あ?なんだそれ」

「そうですね…ここらへんは新しいものもないですし、あそこへ行きますか」

「あそこ?」

「よし、ご主人様来てください!」

「あ、おい。引っ張んな」


 急に走り出したイルに手を握られて引っ張られる。そのまま連れていかれると、人目のない袋小路にたどり着いた。


「変態変態と思っていたが…まさか、強行手段に出るとは思わなかった。イル、俺に何をするつもりだ?」

「いやですよご主人様。ご主人様には何もするつもりはありません。それより少しだけ離れててくださいね」

「あ?分かった」


 イルから離れると、イルは一度頷き壁へと視線を向ける。手を壁へあてがい、呪文のようなものを唱え始めた。


「~~~~~~~!!」


 言葉にならないような、聞き取れない言葉を発すると壁にどこかで見たような穴が開き、闇が広がる。


「おいそれ…あの『ワープホール』か?」

「そうですね。正確には転送魔法という古い魔法なのですが」


 そう、俺がイルを追っていったときに入ってしまったワープホールだ。何かの誤作動により転送中に放り出され、リューナやシアに会うきっかけとなった憎きモノである。


「許せん」

「何がです?ほら、入ってください」

「いやいや、前に放り出されたろうが。もう嫌だぞあんなことになるのは」

「大丈夫ですって。さっき調整致しましたから」


 あのボソボソ言ってたやつか?いや聞き取れんかったし、信じられねえ。


「あ、ご主人様。ここを見てください」

「どれだよ」


 イルが下を指差し、俺を誘導する。指された場所を見るが特に何かある様子もない。いったい何を──


「ドンッ」

「は?」


 後ろからの衝撃に体制を崩し、そのままワープホールの中へと吹き飛ばされる。


「安心してくださいご主人様!私もすぐに追いますから!」


 イルの声が聞こえると同時に、意識が遠退いていく。あぁ…やっぱり、あんな駄メイドを信じるべきではなかった…部屋でゆっくりしていればよかった…。ガクッ。



ーーーーーーーーーー




 突然身体が揺すられる感覚に意識が覚醒していく。


「ん……」


 仰向けに倒れていたみたいで、上を見ると木漏れ日が入ってくるのが見える。どうやらどこかの森のなからしい。少し気だるいが、ゆっくりと身体を起こす。


「…………あ?」


 周りを見ると、さっきも思ったが完全に森の中だった。鬱蒼としていて、上から入ってくる木漏れ日も少なく、薄暗い印象を受ける。


 くそうやっぱりじゃねえかあのクソ駄メイドめ。言った通りになってしまった。


「マジぶっ殺す…」


 ていうか、さっき俺を揺すって起こしたのは誰だ?確かに揺すられる感覚があったのだが。


「ガサッ」


 周りを見ていると、左方向の草が揺れる音がした。注目してみると、人影が見えた。そのままソイツは走っていく。


「…………追うか」


 よく分からない地で単独行動もアレだが、なんというか……怖いんだよ。こういう暗いところで一人ってのは。あれがイルかもしれねえし?もしくは原住民の方かもしれねえし?追えば人がいるところに行けるだろうし?追うってのも一つの手段だと思うのだよ。ワトソンくん。



 透視をしつつ、走って追っていく。途中で何度かコケそうになるがなんとか体制を保ち、追いかける。数分後、人影が明らかな人工物のなかに入っていく。


「……小屋か?」


 見た目は薄汚く拙い小屋だ。大きさも小さく、一部屋しかないだろう。なんだ、人のいるところに行けるかと思ったのに……ちっ、仕方ねえ。話を聞いてみるか。


「コンコン」


 インターホンもないんで、軽くノックをする。しかし返事は返ってこない。居ないのか?いや、確かにさっきここに入ったのを見た。見間違えようがない。


「……おーい」


 やばい、寂しい。最近は特にユウトかイルが側に居たおかげで、こんなどこかもわからない様なところで一人はキツい。返事もないとなるとなんか俺一人やベーやつみたいじゃん?お願い誰か出てきて。100円あげるから。


「……誰だ…です?」

「うおっ……なんだやっぱり居たのか」


 戸は閉まったままだが、中からの返答が聞こえた。良かった……


「えっと……宮坂シュンって名前なんだが…その、入れてもらえないか?」

「だめ…です。あなたもきっと…私をいじめる…です」

「いじめ……?何かあったのか?」

「人間は…こわい……です」


 ふむ……どうしようか。中から出てくる気配はないし、無理に押し入るなんて野蛮なこと、俺にはできないからな。


「グギュルルルル……」

「お腹鳴ってるな?」

「鳴ってない…です」

「よし、そうか分かったぞ」


 俺は懐から先ほど買ったケバブを取り出した。袋に包まれていたのでポッケに入れっぱなしにしていたのだ。よかったよかった、こんなところで役立つとはな。


「ほら、これあげるから出てきてくれよ」

「…………いい匂い…です」


 ギギっと木の軋む音が聞こえ、ドアが開かれる。


 中から出てきたのは……よ、幼女?


『猫耳 の 幼女 が 飛び出してきたっ !』


「食べていいの?……です」

「いい、ほら」


 ケバブを差し出すと、怯えながら受けとる。恐る恐るといった感じにケバブを食べると、一口でその美味しさの虜になったみたいだ。パクパクと何口も食べていく。ケバブは大きいのでしばらくは食べているだろう。


『幼女 に 餌 を やった !』


『シュン は 様子を 見た !』


 その容姿をじっくり見る。上から見てみるとやはり根本からしっかりと猫耳が生えている。髪は白色で、色が抜けたようである。くりくりと大きな目をしていて可愛らしく、全体的に幼女感丸出しの美幼女だな。


 あれ?じゃあ俺いま、幼女をモノで釣って家に押し入ろうとしてるの?やばい、文章的にかなりやばい。俺もしかして犯罪者?


 いや、仕方がない。緊急事態だ。仏の顔も三度までと言うし、一回くらい許してくれるはず。あ、シアのこともあるし幼女関連なら二回目か?


「入る…です」

「あ、うん。ありがとう」


『幼女 は 心 を 許した !』


 いつの間にか食べ終わっていた猫耳幼女が中へと導いてくれる。うん、まあ、俺は別にロリコンじゃないから、良いよね?


 中は案の定一部屋で、汚れた毛布みたいなものと食べ物のようなものが積まれているだけで、あとは何もない。


「何もない…です…だから…何も取らないで…です」

「……あ?何も取らねえって。俺が幼女からなにか盗むような悪党に見えるか?」

「人間は…みんな怖い…です」


 どうやら見えるらしい。ショックだ。幼女に嫌われてしまった。


「そういや…お前はなんて名前なんだ?」

「……なまえ…です?」

「おう。ずっと猫耳幼女と呼ばれるのも嫌だろ?」

「……?…なまえ…ない…です」

「ない?名前が?」


 こくりと頷く猫耳幼女。ふむ……良くわからんが、無いものは無いのだろう。しかし猫耳幼女は長すぎるしな。


「付けてもいいか?その方が呼びやすいし」

「分かった…です」

「そうだなぁ…」


 正直ネーミングセンスなんて無いに等しいのだが…


 動物のような耳をしている生命体か…確か『生きるもの』という意味のギリシャ語で、他にも動物のような意味を持つ言葉。あれが良いかもしれない。


「ゾーイってのはどうだ?」

「ゾーイ…です?」

「そうだ。英語圏じゃよくある名前らしいが…この世界に英語なんてないか」

「…ゾーイ…ゾーイ…分かった…です」

「よし、じゃあゾーイ!」

「はい…です」

「寝よう!」

「……?」


 俺は眠い!疲れた!イルに連れ回されたし!急に森のなかに飛ばされてたりして疲れた!眠い!寝よう!説明不要!


「おやすみ」

「はい…です」


 少し汚いが致し方ない、我慢しよう。毛布があるだけマシだ。俺は毛布に身体を預け瞳を閉じる。ゾーイは俺を見て、少し考えるような素振りをした後に何を思ったのか一緒に寄り添ってきた。


「お前も寝るのか?」

「ゾーイも…寝る…です」

「そうか、じゃあ寝よう」

「はい…です」


 暖かいゾーイを抱き枕にして寝る。これが中々心地よい。俺は一瞬にして夢の世界へと旅立った。




 そして次に目が覚めたとき、俺は幼女を抱き枕にして寝ていたことを改めて認識し、悶えたのだった。




作者が眠いので終わらせました。現在24時前。明日も早いので寝ます。おやすみゾーイ…


「気安く呼ぶな…です」


辛辣っ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ