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初めてのダンジョンは鉄のかほり

 場所は代わり、城から徒歩30分程度のダンジョンの目の前で俺は立っていた。


「よし!全員集まったなっ!」

「「「「「はい!」」」」」

「うっす」


 隣にいるユウト、松岡、結城さん、桐峠、ルシウスが大きな返事をし、釣られるように軽く声を出す。


「ははっ、もしかして宮坂少年は不機嫌なのかなっ?」

「そうですね、どれくらい不機嫌かと聞かれれば側にいるイケメンの眼をくり貫こうかと思う程度には不機嫌かと」

「おいおいシュン、ルシウスさんに謝らないと駄目だぞ?ほら、ごめんなさい」

「お前だよクソカス野郎殺すぞ舐めてんのかお前は俺の母親か死ねや」

「シュンの殺意が高すぎる……」

「仲良しだな君たちはっ!はっはっはっはっ!!」


 豪快に笑うその顔は人が死ぬかもしれない場へ送る人物としては明るすぎる気もするが……まあ、逆にこういう人の方が気楽なのかもしれないな。

 実力と性格が伴っている人は良い。程度の低い奴は総じてそのどちらかが欠けているものだ。


 もちろん俺は伴っている。どちらも最低というラインで。


「ではミランさん。行ってきますね」

「あぁ!頼むぞルシウス!人間界の希望だからな!」


 そう、俺たちは魔王を倒すために送り込まれたのだ。しかしなんだな。今の魔王と前魔王は違う人物、正確には娘である。そしてシアは人間を嫌悪してはいるが、人間界を支配したいとは思っていないだろう。


 和平の道があるとは思う。だがその為にはまず魔王が入れ替わり、共存の意志があることを広めなければならない。ただ宣言するだけじゃいけない。もっと別の何かが必要なんだが…


 それに………………






「シュンくん、行かないの?」


 と、考え込んでいると結城さんが顔を覗き込んでくる。いつの間にか皆も先に入ったみたいだ。結城さんの隣には桐峠もいる。


「もうみんな先に行っちゃったよ?早く行こうよ」

「あぁ悪い。すぐいく」

「ふん、さっさとしろ」

「なんでお前まで居るんだよ。他のやつらは行ったんじゃないのか?」

「私はミサトと一緒に行動しているから仕方がなく待ってやっているんだ」

「なにコイツあつかましすぎるんですけど」

「あ、あはは」


 俺と桐峠との会話に苦笑いをこぼす結城さん。悪いが常に帯刀しているようなやベーヤツとつるむ気はねーんだわ。


「あ、もうユウトくんもルシウスさんも見えなくなっちゃった……」

「お前が遅いからだぞ宮坂」

「うるさい帯刀女。銃刀法という我が国の素晴らしき法律を知らないのか」

「知っている。だから日本では剣道を習っていたのだ。木刀という代わりでな。だがここは日本ではない。武器の所有も許可されている」


 ちぃっ、そういえばそうだった。この世界はモンスターがいるゆえに自衛目的としてなら帯刀が許可されているんだった。くそう、貧相な胸を晒しやがって。


「ちっ……貧乳が(ボソッ)」

「ん?何か言ったか粗チン」

「てめーは俺を怒らせた」


ドドドドドドドドドッッッ


「ちょ、ちょっとちょっと!二人とも!喧嘩は駄目だよっ?」

「「だってコイツが」」

「二人ともっ!ごめんなさいだよ!」

「「…………」」

「分かったっ?」

「ちっ……俺が悪かった」

「そうだな、お前が悪い」

「お前も謝らないとこれからはシズクちゃんと呼ぶぞ」

「ごめんなさい」

「それでいい」


 ふぅ、やっとのことで仲直りできた。むしろ更に仲良くなったと言っても過言ではない。今すぐ部屋へ帰りたいぐらいだ。


「うん!じゃあ行こっか!」

「おう…」

「あぁ…」


 なんだろうな、なんというか……


「「結城さん(ミサト)には勝てないな……」」


 ルンルンと歩いていく結城さんに、俺たちはため息をついて着いていくのだった。


ーーーーーーーーーー



 ピチョンピチョンと、水滴が落ちる音があちこちから聞こえる。入り口から入ってくる風は空洞音を響かせ、なんともいえない不気味さを醸し出している。

 そして周りには大量のモンスターの死体。何か鋭いもので切り刻まれたかのような痕がある。鼻を刺す鉄の臭いが流れ出るものが血であることを表す。


「うっ……これって…」

「ほぼルシウスだな。全て急所に入れられている。他の何匹かはぐちゃぐちゃになってたり、一刀両断されてたりしているな」


 俺の場合は見るだけである程度分かるが、ルシウスはその観察力と知識、そして天性の勘で急所を読んでいるらしい。流石の戦闘力だ。あのときコイントスにしてよかった。力なら余裕で負けていただろう。

 ぐちゃぐちゃなのは松岡に殴り飛ばされて、一刀両断されてるのはユウトがやったんだろう。目に浮かぶ。


 転がる死体たちは人型に近いものから獣染みたものまで様々だ。時には植物のようなモノもいる。種類は多種多様だ。それぞれが独自の進化を遂げたのかもしれない。


「植物みたいなのはともかく獣や人型のモンスターはちょっとキツいね…」

「そうか?子供の頃によく虫とかを潰してただろう?私は慣れたもんだが」

「虫と動物は違くない?」

「そういうものか」

「心強いといえば心強いな」


 虫と動物の違いが分からないアホ娘は置いておいて、じゃあまあモンスターが出てきたら退治を頼もう。俺は後ろで見てる。



 と、そんなこんなでモンスターと戦うこともなく、死骸を見ながら歩いていると足音が近付いてくる。足音は一人。


 ふむ、考えてみよう。先に歩いて行ったのは3人。松岡とルシウスとユウト。ここはダンジョンであり、いくら住んでいる魔族が低級だからといって単独行動をするなんてあり得ないだろう。

 特に今回はダンジョン初心者的な俺たちがいるなかで、ルシウスが単独行動、またはユウトと松岡だけで行動させる、なんてこともないだろう。


 つまり、前から来る相手は…


(静かにしろ)

(…足音か)

(本当だ…でもこれって…)

(そうだな。モンスターが歩くような歩き方じゃないだろう。もっと規則的で、明確な意思のある歩き方だ)


 流石の二人だ。言わずもがな違和感を感じ取ったらしい。あまり褒めたくはないがよく気付いた。


(隠れるか?)

(結城さんと桐峠は隠れてろ。俺が相手をする)

(そんなこと出来ないよ!)

(静かにするんだミサト。何か策はあるのか?)

(さあな。ただまあ、()はさせねえよ)

(信じるからな…行くぞ、ミサト)

(ちょ、ちょっと…シズクちゃん…)


 よし、桐峠が居て良かった。誰かは分からないが、危険因子は排除する。なにかあったとき、すぐにでも逃げれるようにな。


 桐峠と結城さんが岩陰に隠れたところで、足音が間近に迫ってくる。薄暗い道の先から徐々にシルエットが見えてきた。


 まずは高い身長。約180センチだ。髪は茶髪気味の金髪にブルーの瞳。スラッとした体型だがしっかりと筋肉がついている。目鼻立ちも整っている。長い間飽きるほどに見た様相だ。





 ───そして全身から血を流していた。



「あ?」

「し、シュン…っ!?」


 俺を見た瞬間、血相を変えたように飛び付いてくる。


「何があった?お前」

「実はさっき魔族に襲われて…っ!!」

「落ち着け、魔族ってのはこのダンジョンの、低級魔族のことか?だったらルシウスが」

「違うんだシュン!このダンジョンを乗っ取ろうとした別の魔族が来たんだよ!あの強さ…上級魔族なんじゃないか!?」

「ふうん、そうか」


 上級魔族が?おいおい、王国側がしっかり管理してないからだぞ。それにしても上級魔族と言ってもあんまり怖いと思わねえな。


(ね、ねえシズクちゃん。ユウトくんだって、私たちも出ようよ?)

(ふむ、そうだな……いや待て、シュンの手を見てみろ)

(手を払ってる…まるで『あっちへいけ』みたいな感じだね)

(そうだ。様子がおかしい。もう少し離れて見てみよう)

(い、良いのかな?)

(良いからこっちへこいミサト)

(う、うん)


「あの駄メイドと同じ上級魔族だろ?ソイツも変態じゃねえの?」

「駄メイド…?あ!あぁあの駄メイドか!いやそれよりもルシウスさんと一樹がヤバイんだ!早く来てくれシュン!」

「まあ待て。急いては事を仕損じるって言葉があるだろ?それにお前、そんな血だらけでよく喋れるな」

「これは一樹の血なんだ!目の前で首が飛ばされて…だ、だから早く!」

「だから待てって」

「待てないよ!俺の親友だろ!?シュン!俺を信じてくれよ!」

「親友?」


 コイツは何を言ってるんだ?


「悪いが俺には親友はいない。それどころか友達すらいない」

「な、なにを…っ!」

「それにな、さっきから思ってたんだが…」







「───お前、だれ?」




※少し長くなるあとがきです。本編に影響はありません。飛ばしたい方は飛ばしてください。

作者の思っていることを書きます。


いやぁビックリしました!ビックリ仰天でございます!たった五日間のインターハイでしたが、チラチラと暇ができる度に見たんですが…


なんと総合評価が383ptから453ptまで増えていました!計70ptも増えていました!ありがたい感想まで貰えました!

いやぁほんとにビックリですね。こんなに急に伸びたのは初めてです。評価からブクマ、感想まで貰えてやる気がバリバリ出たので帰宅中のバスで書いてます。楽しい。


行き当たりばったりで、伏線なんかない拙い文章の塊みたいな小説ですが、良ければこれからも見てください。重ね重ねブクマ、評価、感想ありがとうございました。さらに増えると嬉しいなっ!チラッチラッ


ちなみに台本みたいな…あれ何て言うんでしたっけ?プロセス?ですかね?物語の本筋やキャラ設定みたいなやつです。私は基本的にそういうものはなく、常に頭のなかで構想してる感じです。だから無いんですね、伏線。


それっぽいこと書いて、どっかで拾うみたいな。そんな感じです。楽しいんですよ、行き当たりばったりって。勝手にキャラクターが動いてるみたいな、そんな感覚になっちゃいます。ただまあ、適当にヒロインを出しちゃうんで

『あれ?あの○○ってキャラ全然出てこなくね?』

みたいなことは多発する。もしくはしていると思います。すいません。


ですがまあ、とりあえず、これからも書いていきます。

どうか、暖かく見守っていてくださいな。


現場からは以上でーす。

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