表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/91

ヘキセ=ジェルマン=シアト

「こちらに居わすのは、現魔王ヘキセ=ジェルマン=シアト様でございます」

「……よろしく」


 おぉ……なんということだ。何故こんなところにこんな()()()が。


 黒を基調として青色の刺繍などを着けたドレスに身を包み、長く綺麗な金髪をその小さな顔よりも大きいリボンでまとめていて、少女趣味というか、若干のゴスロリチックな感じを思わせる姿は魔王と言うには少々可愛らし過ぎる。


「おい、この女の子は誰だ。魔王はどこに居る?」

「……っ!?」

「シュン殿。この方は正真正銘、現魔王様でございますよ」

「は?この中学生ぐらいのチビッ子が?」

「…………ッ!?」


 俺は偉そうに椅子にふんぞり返っている幼女に近付き頭をポフポフと触れる。


「…………無礼っ!!」

「あぶなっ…おい教育がなってないな。客人に拳を振り上げるなんて、常識がないと言わざるを得ないぞ」

「のぉシュン?確かに小さい女の子かもしれんが一国の王たる者の頭を撫でて、終いにはチビッ子呼ばわりする方が、常識がないと言わざるを得ないのではないか?」

「え、シュバさん。本当にこの女の子が魔王なのか?」

「はい。ですから、正真正銘、現魔王ヘキセ=ジェルマン=シアト様でございますよ」

「……分かったら手を退けてっ」


 おっとっと、危ないな。また叩かれそうになった。それにしてもコイツが魔王だと?神が魔王を倒せと言ってたが…コイツを倒すのか?幼女だぞ?


「悪かったよ、シアト様。想像していた魔王より大分違ったせいで少し驚いたんだ」

「……無礼なやつとは話したくない」

「まあそう言うなって」

「しかし世代交代したという文が届いたのは見たが、まさかこのような幼女が魔界を統制しているとは……ワシも驚きを隠せんのう」

「……幼女じゃないっ」

「リューナ様。シュン殿。説明をしますので、お耳をお貸しください」

「ん、分かった」

「ふん、早くするのじゃ」


 相変わらずツンケンしているリューナを横目に、シュバの話を聞く。


「前魔王、ヘキセ=ジェルマン=デリシア様はご病気により王位を引かざるを得なくなりました。故にまだ生まれたばかりの娘であるシアト様が無理矢理といった形で継承なさったのです。まだ交代してから1月も経っておりません」

「なるほどのぅ…大変なもんじゃな。どこの世界も」

「それ、仕事とか回っているのか?少女が政治できるほど簡単なものでもないだろう」

「僭越ながら、ほとんどの業務は私が行っております。王からの承認が必要なものを私がまとめ、それに印を押すことがシアト様の主な仕事でございます」

「……退屈」


 ふむ、まあ難しい話だよな。病気による王位継承か。それはつまり、もう()()()()()と判断されたことと同義であろう。魔族目線だから確かなことは言えないが、現魔王は生まれたばかりと言っていたし、任せられる仕事はほぼ無いだろうな。


「世間からの風潮はどうなんだ?こんな女の子が政治をしていることに異議を申し立てる奴はいないのか?」

「そこは非公開にさせていただいております。今は人間国とにらみ合いが続いていますので、隙を見せる訳にはいきませんから」

「それって良いのか?」

「国が崩壊するよりはマシかと」


 そんな考え方もあるのか。まあ、魔族がどうしていようが俺に関係はないが…何もしないのはなんだか心苦しいと感じる…………ってユウトの優しさが移っちまったかもしれねぇ。


「そういえばシュン。結局、この魔王城に来たのはいいが、何がしたかったんじゃったかの?確か、探している者がおるんじゃなかったか?」

「あぁ、そうなんだが……まだ居ないみたいだな」

「……ここに来るのか?その待ち人は」

「多分な」


 ふむ…俺は今、魔王さんを無視して話を進めているわけだが……イルが来るのをただ待っているだけってのも味気ないしな。ちょっと遊んでやるか。


「なあシュバさん。もしよければ俺と魔王さんの二人で話をさせてくれないか?」

「ええ、構いませんよ」


 待っていたと言わんばかりに笑うシュバさん。なんだ?お見通しだとか思ってんのか?わりぃな。俺はそんな優しくねえんだよ。


「リューナも、出ていってくれるか?」

「別に良いが…早めに切り上げるのじゃぞ?このあとはワシと一緒に魔界を歩くんじゃから」

「え、初耳なんだが?」


 まぁ、ここまで連れてきてくれたし、断る理由もないからそれは良い。


 リューナとシュバさんが席をはずし、俺と魔王が二人きりになる。今更なんだけど、俺って一応国王に魔王討伐のために召喚された筈なんだが、簡単に俺と魔王を二人きりにさせて良いのか。


「……ガルルルルル」

「そう威嚇するな、少女よ」

「……その呼び方はやめて」

「じゃあなんて呼べば良い?」

「……シアト様」

「黒リボンちゃんで良いか?」

「………………嫌」

「なんで間が空いた?」

「……ちょっと可愛かった」


 出たよ、少女特有の変な趣味。


「シアト様ってのは長いから……シアでいいか」

「……魔王を舐めてる?」

「あぁ、ペロペロしてやる」

「……ッ!?」


 ズザザザッと俺から距離をとるシア。まさか、本当にやるわけないだろ?犯罪だぞ犯罪。


 さてと、コイツの能力はどうかな。


ーーーーーーーーーー


ヘキセ=ジェルマン=シアト 18歳




体力 B 魔力 -A 攻撃力 +C 忍耐力 C




精神力 -B 俊敏 +C 総合戦闘力 +B




称号 魔王 魔王の器 天賦の才 ゴスロリ 寂しがりや


魔王:魔界を統べる王に与えられる称号。カリスマ++ 全ステータス上昇率up大


魔王の器:魔王になるべくして生まれた者に与えられる称号。カリスマ+ 全ステータス向上 全属性魔法が扱える


天賦の才:様々な事柄に対しての会得に掛かる時間が大幅に短縮される。


ゴスロリ:いわゆる少女趣味を持っている子に与えられる称号。魅力up少


寂しがりや:周りの人がいないと極度に孤独を感じる。甘えたがりやに多い称号。


情報:現魔王であり、元魔王の一人娘。常に強くあろうとするが、その実まだまだ精神的に未成熟であり、甘えたいという衝動がある。魔王の娘という肩書きのため、毅然(きぜん)とした態度でいるが噂などをよく気にする。


ーーーーーーーーーー


 思ったよりステータスは高くない……か。まあ伸びしろはとんでもないみたいだが。


 と、いうかマジか。コイツ俺よりも一歳年上らしい。18歳とか、信じらんねぇ。魔族ってのはみんな若いのか?


 とりあえずまあ、行動を起こすしかないな。


「なぁシア」

「……なに?」

「魔王って、どんな気分だ?」

「……どういう意味?」

「いやだからさ───」



「誰からも忌み嫌われる存在でいる気分は、どうだ?」



 さてさて、これから俺の『教育』を始めるとするか。





「ご主人様……まだ帰ってこられないんでしょうか……?一体どこに行ったのでしょう?あの方の行動は予測しかねますからね。読めない方です」


「イルさん、失礼しますね」


「ユウト様ですか。どうかいたしましたか?」


「いや、まだ帰ってないのか気になったからさ」


「ご主人様ですね。残念ながらまだのようです。しばらくすれば帰ってくるとは思うのですが……そろそろお迎えに行った方がよろしいのでしょうか?」


「……っ!……いや、まだ……良いんじゃないかな?」


「そうですか。そうですよね。私はユウト様を任されたのですから、ご主人様の指示にもう少し従うと致しましょう」


「…………ごめん、俺は部屋に帰るよ」


「はい……?気をつけて帰ってくださいね」


「うん、ありがとう」




自己嫌悪……という言葉をご存じでしょうか。少なくとも、今のユウトにはピッタリの言葉でしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ