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はい、じゃあ二人組作ってー

「本日の特訓は終了!そして君たちに朗報だ!」


 ムキムキで筋肉質な兵長のミランが仁王立ちで叫ぶ。


「これから3日後に実技試験を行う!これは国王様からの命でもある!」


 なんだと?実技試験?……ふむ、まあこのまま打ち合いを続けることが目的じゃないもんな。じゃ、続きを聞くか。


「実技試験はトーナメント形式で行っていき、一位になった(あかつき)には、なんと好きな願いを一つ聞いてもらえるぞぉ!皆存分に力を奮ってくれ!」


「「「「おおぉぉぉっ!!」」」」


 ミランの宣言にクラス中が震える。なんとまあ太っ腹なことだ。王様権限というやつか?それにしても好きな願いを叶えるなんて、王様はドラゴ○ボールと同じくらいの権力を持ってるんだろうな。俺も戦闘力53万にしてもらおうか。


「すごいな!シュン!なんでも叶えてくれるらしいぞ!」

「さっき聞いた」


 ユウトが興奮気味に叫ぶ。全く、周りの騒がしい雰囲気に誘われて興奮するなんて、ガキじゃあるまいし……


「シュン?」

「あ?別に何日も休みを貰おうとか思ってないし?なにいってんだユウト殺すぞ」

「いや俺は何も言ってないんだが……はは、シュンも楽しみみたいだな!」

「うるせ、正々堂々戦うのが礼儀と思っただけだ」


 いや本当に、ただまあ、仮に勝ったとしたら願いを叶えて貰える上、負けても何もないわけだからデメリットもないしメリットしかないよな。そうだよ、そう考えたら受けたほうが『効率的』かつ『合理的』なんだ。だから受けるだけで俺は別にそこまで興味があるわけじゃないからな?


「ただまあ、出るなら勝ちに行くけどな」

「おっ!珍しくやる気だなシュン!俺も負けるつもりはないけどな!」


 はっ、何を言う。お前みたいなチート野郎に正攻法で勝ちにいくわけないだろう。後で差し入れ渡すから試合1時間前くらいに食べてくれ。いや別に普通の差し入れだから、毒とか入ってないから。


「更に!このトーナメントは国王の命として『ペア』で行うものとする!各々好きなパートナーを見付けてくれ!期日は明日までとする、では解散!」


「……は?」


 なんだと……?今兵長は、なんと言った?ぺあ?ペアってなんだ?もしかしてあれか、あの先生がよく体育の時とかにいう、『はいじゃあ二人組作ってー』と同義か?


「ゆ、ユウト。仕方ないからお前とペアを組んでや───」

「「「「ユウトくーんっ!!私と組もー!!」」」」

「うぐおっ!?」


 突然走ってきた女子たちの波に吹き飛ばされ、ユウトが離れていく。くそぅ、惨めだ。死んでしまえ、ユウトめ。


「ひゃあー。相変わらず人気だなぁユウトは」

「松岡か」


 尻餅をついた俺の隣に歩いてきたのは、『気』という能力を持つ熱血漢の松岡だ。


「あいつ彼女とか作らねーのかな?」

「どうだろーな」


 彼女……な。アイツは昔、あの顔の()()で一度悲惨な目にあってるからな。しばらくは作るつもりがないと思う。


「それより松岡、よかったら俺と組まないか?正直オマエ以外にペアになってくれるような奴がいない」

「あはは…………悪い宮坂、俺は刑部と組むことになってるんだ」

「そうか…」


 刑部(おさかべ)さんとは、松岡の彼女である。あまり話したことがないので情報がないが、まあ悪い女子ではないと思う。多分。


 しかしまぁ…他に当てもないし……俺の休みへの道は途絶えたか。くそっ。


「松岡くん!行くよー!」

「あ、待ってくれ優香ー!わりぃ、行ってくるわ!」

「はいはい」


 ヒラヒラと手を振って松岡を見送る。することもないし、ペアが出来ないなら優勝することはおろか、参加することさえ出来ない。帰るか。


 と、突然後ろから声が掛かる。


「あ、あのっ、シュンぬん!」

「ぬん?」

「あ、噛んじゃった……うぅぅ」


 可愛らしく(うずくま)り、ロングの黒髪を押さえて(うめ)くのはクラスのマドンナの結城美郷さん。俺にいったいなんの用だ?


「そ、そう!あの、なんというか……もしかしてシュンくんってペア決まってる!?」

「お、落ち着け。そんなに顔を近付けるな」

「あぅ……ごめんなさい……」


 思い出したように顔を上げるので、目と鼻の先に結城さんの顔が来る。そして注意するとゆでダコのように顔を赤く上気させて謝ってくる。表情がコロコロと変わるヤツだ。


「で、あの、シュンくんってペア決まってるの…かな?」

「言わなくても分かるだろ?(ペア決まってないって)」

「そう…だよね(ペア決まってるよね…)」


 肩をがっくりと落とす結城さん。なんだ、何が残念なんだ。ペアが決まってないのがそんなにおかしいか?……おかしいわな。ぐすん。


「じゃ、じゃあ私行くね!」

「おい」

「え?な、何かな?」

「ちょっと動くなよ」

「えっ、あっ……!」


 立ち去ろうとする結城さんに近付いて服に着いた()()()を取る。


「ほら、髪の毛」

「あっ……ありがとう…」

「いいや、じゃあな」

「うん…………ずるいよぅ…」


 振り替えって歩き出すと後ろから細い声が聞こえた。ずるい……どういう意味かは分からないが、機嫌は悪くなさそうだし良かった良かった。それにしても魔神の義眼凄いな。あんなに細くて()()髪の毛を見ることが出来るなんてな。


ーーーーーーーーーー


「はぁーあ、どうしようかね」


 ぶっきらぼうに呟きため息を吐くが、返ってくるのは静寂。国王が企画したペアトーナメント。中々酷なことをしてくれるじゃないか。いやもしかしてあれじゃないか?『なに?余ったのか?じゃあ先生とするか』みたいな感じでミラン兵長とトーナメントに出れたり…………いや、希望は薄いな。


「ご主人様、知っていますか?ため息をすればするほど、幸せが逃げていくって」

「無いものが逃げていくわけないだろう」

「卑屈過ぎますよご主人様…」


 呆れたような目を向けるイル。うるさいな、卑屈なのは性分なんだよ。変えられないんだよ。


「いっそのことイルが出てみるか?」

「いえ、私、戦闘は得意ではありませんから。ご奉仕することしか出来ないメイドでございます」

「あぁそうかよ」


 戦闘が得意じゃない?上級魔族兼魔王幹部のメイドが何を言う。まぁ、はなから期待してないからどうでもいいが…


「しかしご主人様。他に誘える方は本当にいらっしゃらないのですか?ご友人は?」

「オマエ、それは『煽ってる』と言うんだぞ」

「ご主人様はもう少しフレンドリーになられたほうがいいかと…その突き放すような喋り方も、人が近寄ってこない原因ですよ」

「うるさいな、仕方ないだろ。昔からこの喋り方だから変えようがないんだ」


 それに喋り方ならユウトも対して変わらないだろ。


「結局顔なんだって。俺みたいな奴とツルんでも徳なんてないからな」

「はぁ……そういうネガティブなところですよ。ご主人様、顔なんて私は気にしませんし、ただの友達付き合いに顔なんて関係ありませんよ」

「それはオマエだけだ」

「…………そうですね」


 本当にこの人は……というようにため息を吐くイル。顔を気にしないなんて嘘だろ?俺だって、最初は人の顔を見る。まあそれだけで区別差別をするつもりは毛頭ないがな。


「知ってるかイル。ため息を吐くと幸せが逃げていくんだぞ」

「それ私がさっき言ったヤツです」

「そうだったな」

「私以外にもそれくらい砕けた感じで話せば、普通に仲良くなれると思いますけどね…」

「普通ってのはオマエの主観であって必ずしも俺と同様のモノとは限らない。どうやら俺にとっての普通とオマエにとっての普通は差異があるらしい」

「はぁ……」


 手で頭を突いてため息を吐く。あーあ、幸せが逃げていくぞ。


「お、おい?宮坂!……はいるか?……いやいますか!?」


 と、不意に部屋の外から不思議な言葉遣いの女子の声が聞こえてきた。






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