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主人公は光ヶ丘裕翔、俺はモブでいいや

「大丈夫かい?お嬢ちゃん?」

「うん!ありがとうお兄ちゃん!」


 あー……またやってるよコイツ。


 俺の目の前で転んだ幼女を抱き抱えて、その爽やかな笑顔を向ける男『光ヶ丘裕翔(ひかりがおかゆうと)』は俺の幼馴染である。

 容姿端麗(ようしたんれい)文武両道(ぶんぶりょうどう)眉目秀麗(びもくしゅうれい)博学公才(はくがくこうさい)…挙げれば切りがない。

 ちなみにイングランド生まれの母と日本人の父との間に生まれていて、髪の色が茶髪気味の金髪で瞳はブルーだ。完璧かよシね。

 まあ欠点という欠点がない、神様が自分の理想を作ったのかってレベル。


「なぁ、シュン。この辺りは地面が少しデコボコしてるからコケるんだ。もっと整備すればいいと思わないか?」

「んー?あぁ……そうなんじゃね?」


 ───俺と友達という欠点を除いては。


 シュン。俺の名前だ。『宮坂駿(みやさかしゅん)』なんて、ありきたりな名前である。この光輝く笑顔を無駄に振り撒いているユウトに振り回される毎日を送っている。

 浅学非才(せんがくひさい)厚顔無恥(こうがんむち)傍若無人(ぼうじゃくぶじん)一生童貞(いっしょうどうてい)、挙げれば悲しくなってくる。もうやめだ。

 俺には欠点という欠点しかない。神様が病んでしまわれたのか、はたまた鼻くそでもほじりながら作りやがったのか。

 外面微妙、内面クソみたいな出来栄えだ。神がいるなら言ってやりたい。顔は微妙程度で許してくれてありがとうございますって。


「……ーい、おーい、話を聞いてるのか?」

「んー……あんまり?」

「いつも通りだな、シュンは」


 あはは、と笑うユウト。お前もうずっとそうやってろよ。なんでそんなに爽やかに笑えるんだよ?あれか?顔に制汗剤でもつけてんの?


「おい、これから学校行くのにそんなことして遅れたらどうする、行くぞ」

「あ、おい待てよシュン!」


 振り替えってユウトを見ると、いつの間にか目と鼻の先に顔を近付けて来ていた。

 なんだよ、そんな近付いてきて、何かあったのか?





「────ふふ、肩にゴミがついてるぞシュン」

「え、やだ、キモい」


 この物語にはBL、いわゆる『ボーイズラブ』と言った要素はないことを、ここに宣言しておきたい。





 クラスにつくと、クラス中から視線が向けられる。時間ギリギリに来たお陰でほとんどの生徒がもういるみたいだ。


 まあ、向けられる視線は全てユウトに向かってるけどな。


「おはようユウトくん!」

「あぁ、おはよ───」

「ハロー!ユウト!」

「おは───」

「チャオ!ユウトくん!」

「お───」

Здравст(ズドラースト)вуйте(ヴィーチェ)(こんにちは)!Булочки(ユウト)‼」

「えっと…あの…あ、シュン!俺を置いていかないでくれ!」


 はいはい、朝から元気なこったなぁユウトは。

 ていうかうちの学校こんなに異文化交流してたの?初めて知ったんだけど、最後の何て言ってた?ロシア語?


「おはよう、シュンくん」

「ん?……えっと……そうだ、結城さん。おはよう」

「えっと、もしかして私の名前忘れられてた?」

「アハハーソンナコトナイヨーマジウケルンデスケドー」

「今頃マジ受けるとか言わないよ…ていうか棒読み凄いね!」

「このまま上手くなっていき、次は『鉄棒読み』を目指すか」

「鉄棒!?それって上手くなってるの!?」

「将来的には『うまい(上手い)棒読み』を目指したいな」

「あの国民的お菓子で上手く掛けちゃった!?」


 今俺のボケをキレイに突っ込んでくれてるのは、同じクラスのユウトグループ(クラス最上位グループ)の一人、『結城美郷(ゆうきみさと)』だ。この人もこの人でなんで俺に構ってくるのかが分からない。

 多分だがユウトと俺が仲が良いと勘違いされているせいだと思われる。俺に優しくすればユウトの評価が上がるとでも思っているんだろう。


「おいシュン!なんで置いていくんだ!」


 机に座り、一息吐くとユウトが走ってくる。女子とは話をつけてきたみたいだ。


「ユウト……」

「なんだ?」


 俺はユウトの肩をつかんでまっすぐと目をみる。ユウトもごくりと唾を飲み込み、こちらを見る。


「俺はお前の嫌がる姿が大好きなんだ」

「潔すぎるだろっ!?」


 だって仕方ないだろ、何もかも恵まれているお前が、更に毎日をエンジョイしてるとか、俺は耐えられねえ。女難ぐらい甘んじて受け入れなさい。俺はお前のことが嫌いだからな、お前の嫌がる姿を見てると心が落ち着くよ。ありがとう。


「ふふ、二人は本当に仲がいいね」

「結城さん…ぜんぜ───」

「当たり前だろう!シュンと俺は大親友だからな!」

「…………そうかもな」





 ……嫌いは言い過ぎた、撤回してやる。



「ねぇ……なんで宮坂くんって光ヶ丘くんといつも一緒なんだろうね?」

「多分くっついて回ってんのよ…金魚のふんみたいなものだわ」

「マジ光ヶ丘くん可哀想~」



聞こえてんだよなぁ……ま、別に俺がバカにされるのは良いけどな。ユウトも気付いてないみたいだしな。







「よーし、お前ら席につけー、ホームルームを始めるぞー」

「あ、先生来たよ二人とも!早く席に座らなきゃ!」

「俺は座ってる。ユウト、お前だけだ座ってないのは」

「あっ!ほんとだ!すいません!すぐ座りますっ!」


「「「「「あはははは」」」」」


 先生が入ってきて、クラス中が笑い、いつもの学校が始まる。

 ほんとう、何が面白いんだろうな。みんなユウトのこと好きすぎるだろ。主人公かなにかか?ま、主人公ならそれ相応のイベントくらい起こしてくれないとな。




『ピーンポーンパーンポーン!』


 軽快なリズムと共に校内放送が響く。珍しいな、今日なにかあったか?


『君たちを異世界へ送りまーす!私は神でーす!一人ずつ面接するから待っててねー!』





───────は?


「ユウト、お前のせいだからな……」


 小さく恨めしさを込めて呟く俺に、ユウトは真顔で首を振るだけだった。






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