08 英雄と漆黒
ディメンションホールから魔法袋にゴブリンを詰め替え、冒険者ギルドでクエスト完了を伝える。
「ソージさん魔法袋お持ちだったんですね」
アリサさんが作業をしながらそう聞いてくる。
「はい、さっき買いました」
本当は貰ったモノなんだけど、そこは面倒だから黙っておこう。
「魔法袋は冒険者には必須なものなので正しい判断だと思います。こちらがゴブリンの報酬です」
報酬は銀貨3枚銅貨5枚だった。
安いな、円にすると3500円ぐらい、冒険者も厳しい仕事だな。
報酬を受け取り、宿に戻り飯を食べた。
今日のご飯もおいしかったな、部屋でそう思っていると、ドアが叩かれた。
「どうぞ」
ドアが開かれ、そこにいたのはこの宿屋の娘さんだった。
まじかで見ると黒髪のショートヘアで整った顔立ちをしている。
「シーツを変えに来ました」
元気な声でそういう。
「君はこの宿屋の娘さんだよね?」
「ミリです」
「ミリちゃんか、シーツを変えに来てくれたんだね、お疲れ様」
「仕事ですから」
ミリちゃんは笑顔でそう言うと、シーツを変え始めた。小さいのに偉いな、この世界は小さい子も働いていて家計に貢献しているのか。学校とかはないのかな?
「終わりました、お兄さん」
「ありがとう、ミリちゃん」
お礼をいい、さっき店で買った。金平糖のようなものを3粒ほどあげる。
「いいんですか?」
「ああ、遠慮せずに食べてくれ」
俺がそう言うと一気に口に入れた。
「甘くて美味しい!」
かわいい、別にロリコンじゃないけど、かわいい。
「お兄さんありがとう、もしかして冒険者の方ですか」
「昨日登録したばかりの新人だけどね」
「お兄さんは優しいからすぐ強くなれますよ!あっ、そろそろ仕事に戻らないと、また来ます」
ドアの前でお辞儀をして、そっとドアをしめ、出ていった。
あの年齢で良くできた子だな、俺もいつまでも、くよくよしてないで頑張らないとな。
ディメンションホールから魔法書を出し、ベットの上で読み始める。
一冊読んで見たが、書いてあることは理解できたが内容は何一つ、分からなかった。これでレベルが上がれば、いつかは覚えられるのか?そう思い再び魔法書を見ると、文字が全て消えていた。
ま、こんな便利な本が使い回しできる訳がないか。
俺は新しい魔法書を読み始める。
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ここは北にあるバルクト帝国から少し離れた砦の見張り台、
「ああー付いてねーなー、まさかあそこでああ来るとはなー」
「全くだ。あそこでもう少し横にそれてりゃ、俺達の勝ちだったのによ」
「お前達!いかげんにしろ、ギャンブルで負けた話は後でしろ、いつ敵が現れるとも限らないんだ」
「こんな夜更けに、敵なんかこねーよ」
「そうだぜ、お前も双眼鏡で見張りなんてしてねーで、こっちで話そうぜ!」
「そんな暇など・・・・遠くに人影が見える!人数は2人、門の奴ら警告を入れろ!」
「まじかよ!こんな夜更けに敵襲か?」
「馬鹿いえ、2人で敵襲なんぞきいたことがねー、おそらく迷い込んだ貧民のガキだろう、まあ何にしろ、門の下まで伝えに行くぞ」
兵士は門まで行き警告をする。
「おいお前ら!こっちに誰かが近づいてるぞ」
「なに!人数はどれぐらいだ」
「2人だ。おそらくこの辺に迷い込んだガキだろう、だが万が一に備えて警戒してくれ」
「よし、分かった。お前達も一緒にここで警戒を頼む」
「はいよ」
正体不明の人物達がこちらから目視できるほど近くに来た。
「何だ、爺さんと女のガキじゃねーか、道にでもまよったか?」
「さあな。とりあえず警告をいれよう、止まれ!こんな夜更けに何ようだ」
そう言うと、爺さんはおもむろに口を開いた。
「わし達は南に行きたいんだが、森を抜けて行くにわ時間がかかる、だからそこをどいてくれんか?」
斧を背負った人物がそう言うと、兵士たちは一斉に笑い出した。
「ははははは、爺さん面白いことを言うじゃねえか、ここを預かるのは英雄級の実力をもったバロリス様だぜ、バロリス様が出てくる前に帰った方がいいぞ」
「ふむ、それは困った」
「エン爺、もういいわよ、どかないなら殺してどければいいのよ」
エン爺と呼ばれる男の横にいた少女がそう言うと、兵士たちはさらに笑い出した。
「お嬢ちゃんも面白いな、どうだ、今日は俺と一緒に遊ばないか?」
兵士がそう言い少女の肩に手を置いた瞬間、手が元から無かったかのように、一瞬のうちに消え去った。
「ぐぁあああああーー、腕が、腕があああああ」
消えた腕から噴水のごとく血が噴き出し、鼻水を垂らしながら大声で叫び散らす。
「うるさい」
そんな兵士を無情にも、冷たい声でそう言い放ち、兵士に向けて腕を振るう。
「えっ」
その言葉がそいつの最後の言葉となり、気付いた時には首と体がサヨナラしていた。
「貴様らあああーーー バルクト帝国に逆らってただで済むと思っているのか!」
兵士たちは一斉に武器を向ける。
「ザリア、お前はいつも荒っぽいな!」
「あら、エン爺こそやる気だったくせに」
「はっはは、ばれたか、それでは早く片付けにかかろう」
「貴様らなにを話している。この帝国に・・・」
「ふっん」
兵士はそういう前に巨大な斧によって体を切断された。
「ごちゃごちゃ煩いわ!そんなことよりさっさとかってこい!」
「襲撃だーーー」
兵士がそう叫ぶと、門から次々兵士が湧いてきた。
「はっはは、わらわら湧いてくるわ」
「エン爺、私は眠いからあなたがやって頂戴」
そう言い残しその場で結界の魔法を張り座り込んだ。
「おお、5分で片付ける。さて、それでは行くか、(武技、炎斧!)」
斧の周囲に炎が纏われ赤く染まっていき、周りの温度が上昇し始める。
「んっ!」
その斧を兵士たちに振るった瞬間、斧から炎が飛び出し兵士たちに直撃した。
「ぎやややあああー」
斧から放たれた炎に焼かれもがき苦しんだ末に、焦げ臭い匂いを漂わせ倒れていった。
「はっは、もっとかかってこい!」
「相変わらずの戦闘狂ねエン爺は」
「最高の褒め言葉だ」
次々と兵士たちを薙ぎ倒し、次の兵士に斬りかかる。
「キーン」
「ん?」
兵士に斬りかかった斧が横から来た剣で防がれた。
「バロリス様!」
助けられた兵士がそう叫ぶ。
「ほう、お主がバロリスか」
真っ赤な甲冑を見に纏い、180センチはあろうかという巨大に、巨大な剣を持ち、颯爽と現れた英雄級の強さを誇る人物が静かに口を開く。
「お前らは何者だ」
静かで力ずよい声が周りに響き渡る。そこには明確な敵意が込められており、それを聞いた兵士たち中には冷や水を垂らす者までいた。
「わしはエンと言う者だ」
バロリスの力強い声にも、どこ吹く風のように平然と答えた。
「そうか漆黒のメンバーだな?」
「ほお、知っているのか」
「漆黒!最悪の犯罪者が集まった災厄の集団、こいつらが!」
兵士たちが次々とそう叫ぶ。
「わしらも、有名になったもんだ」
「お前達の目的は何だ。一体何がしたい!」
バリロスは殺気を放ち問い掛ける。
「さあの、わしにはよくわからん。ワシ達を集めたブラスに聞いてくれ」
その殺気にも平然とした態度で答える。それどころか少し眠そうだ。
「そうかそれでは死んでもらう!」
「はっ!」
バロリスの巨大な剣が降り下ろされたが、その剣をあっさりと斧で防いだ。
「ふん、さすがに強いな」
「余裕でいられるのも今のうちだ」
何度も剣と斧がぶつかり合い火花が飛び散る。
「避難しろ!あの二人の戦いに巻き込まれたら一瞬で死ぬぞ!」
兵士が次々門の中に入っていく。
「お前のとこの兵士は貧弱だな」
「兵士たちは後から鍛え直す」
「お主冗談が上手いな、今死んでしまうのに、どうやって鍛えるんだ?」
「黙れ!」
さらに撃ち合いが激しくなり、その衝撃で砦にひびが入り大地が揺れ始める。
「このままでは砦がもたない、そろそろ終わらせる」
バロリスが後ろに飛びオドを練り上げ剣を構えなおす。
(武技、4神撃!)
一振りの剣が一閃のうちに4つの斬撃を生み出し、神速の速さで襲いかかる。
「はあ!」
4つの斬撃を斧で防ぐが、1つ防ぎ損ね体に傷をつけた。
「ふう、一振りで4つの斬撃を生み出す技か、わしの鎧を切り裂き体を切られるとは、相当な武技だな」
「次は殺す」
再び後ろに下がり精神を集中させる。
「無理だ。もう5分たった」
「訳の分からないことを言うな!」
(武技、4神撃)
再び神速の斬撃が襲いかかる。
「!!!」
「終わりだ」
バロリスが渾身の力で放った神速の剣技を片手で掴み取った。
「化物のが!」
バロリスは剣を離し、後ろに直ぐ飛び退き、顔を真っ赤にして声を張り上げる。
「貴様!今まで身体能力上昇の武技を使っていなかったな!」
「ばれたか、しかしお主の攻撃はなかなかよかったぞ」
「だまれーーー化物が!」
バロリスがエン爺に殴りかかった。
「馬鹿が!」
バロリス拳がエンの体に届く前に、斧によって首を切断された。
「さて、後は残党狩りだな」
英雄級の人物を殺したというに、何事もなかったかのようにそう言い放つ。
「逃げろーーー化物だーー」
兵士たちは、ばらばらに散らばり逃げっていった。
「根性のない奴らだ」
次の日、辛うじて生き残った兵士がバルクト帝国に報告し、瞬く間に事件は、ほかの国中にもに広まった。