06 初クエスト
朝早く起きギルドに向かう、中に入るとすでに他の冒険者が何人かいた。
結構早く来たはずなんだけどな、やはり朝速くクエストを受け、夜までに帰って来るのか。
「ソージさん、おはようございます」
受付をしてくれるのわ、アリサさんのようだ。
「おはようございます。早速クエストを受けに来ました」
「では、あちらのボードから選んでください、Fランクが受けられるクエストは、F、Eだけです」
まずはFランクから見る。
うん、ほとんどは、採取系の依頼や雑用だった。
次はEランクだ。
うん、Fランクと比べるとまだましか、俺はFランクボードから常時依頼のゴブリン討伐クエストを取る。
「これを受けます」
「ゴブリン討伐ですか、この依頼は何体ゴブリンを狩っても報酬が出ます。ですのでたくさん討伐してきて下さい」
俺は門を出てゴブリン討伐に向かう、20分ほど歩くと早速ゴブリンを発見した。ゴブリンは数が多く、よく行商人などが犠牲になる。全く、迷惑な奴らだ!
ゴブリンはこちらに気付き襲いかかって来る。さて、武技を使ってみるか。俺は自分の体のオドに集中し全身に纏わせる。行くぞ!
「はっあ!」
前から突っ込み剣で両断した。できた!
武技の使い方は魔法の原理と似ている。そもそも魔法とは自分のオドを外に出し事象に干渉して変化を起こすことをいう。それに対して武技は、自分の体にあるオドを使い、体内で事象に干渉する技だ。つまるところ、魔法と武技の違いは体内でオドを使うか、外でオドを使うかだけの違いだ。
ゴブリンをディメンションホールに収納し、再び探す。しばらく歩くと道の隣に森のような場所があった。こんなところに森があるとは、ここを歩く人は危険だろうな。そう思っているとゴブリンが森から飛び出し襲ってきた。
「グギャアア」
武技で身体能力を上げ、迎え撃つ。
「シャ」
一番近くのゴブリン、2体をすれ違いざまに斬り倒し、魔法を唱える。
(ライトニング/電光)
レーザーのように真っ直ぐ飛んでいき、ゴブリン達を貫いた。
おお、怖。
「グギャ!グギャ!グギャ!」
貫かれたゴブリンを見て、他のゴブリン達が森に向かって逃げ始めた。
逃がさん!
(ファイヤーウォール/火の壁)
ゴブリン達の前に火の壁を作り、逃げ場を防ぐ、そして、そこに一気に詰めよりゴブリン達を斬り裂く。
「ふっ」
疲れた、今ので10体は倒したかな。
俺はディメンションホールにゴブリンを収納し、街まで戻る。
門に近づくとリキュルさんがいた。
「おう!ソージじゃねーか、冒険者登録はできたのか?」
「はい、お陰さまですることができました」
「そうか、それでお前はどこに行ってたんだ?」
「ゴブリンの討伐に行ってました」
「そうか、その様子だとゴブリンは討伐ができなかったようだな。ま、常時依頼の依頼だから違約金は払わなくていいだろう。だから気にするな」
そう言いながら、俺を慰めてきた。
ちゃんとゴブリンは討伐したんだけどな。どうやらこの世界では、第4神階魔法まで使えると言うのは相当珍しいらしようだ。だからディメンションホールを使えることは黙っておこう。
そのあと、少しだけリキュルさんと雑談をして別れた。
俺はギルドに行く前に、大きな袋を買いに行くことにした。
「すいません、大きな袋を売ってますか」
俺は近くの店に入りそう尋ねる。
「売ってるよ、但しただの袋ではないけどね」
50代ぐらいのおばーさんがそう言ってくる。
「私の店で売ってるのは魔道具、あんたは冒険者だろ?それなら魔法袋は必須だよ、それでどの位の量が入る袋が欲しいんだい?」
そうか、ここは魔道具の店だったのか、それにしても魔法袋か、ディメンションホールを隠すには丁度いいか。
「値段はどれぐらいですか?」
「そうだね、小さいので白銀貨5枚、中で白銀金貨2枚、大きいので光銀貨2枚だよ」
高!しかし、ディメンションホールが使えない以上、魔法袋は欲しい。
「あの、ディメンションホールってしてますか」
おばーさんに聞いてみる。
「ん!・・・・・・知ってるよ、第4神階の中でも特に難しく特殊な魔法、第5神階が使えるからといって、その魔法が使えるとは限らないほど難しい魔法、習得レベルだけで言えば第6神階に匹敵すると言われている。商人や魔道具を作る者にとっては、喉から手が出る欲しい人材だよ、何故ならディメンションホールは魔法袋とは比べ物にならないほどの物が入り時間も止まってるって話だからね」
「魔法袋にはディメンションホールの魔法が付与されてるんじゃないんですか?」
「ああ、確かに付与されている。しかしこれは迷宮で発見されたアイテムばかりさ、それにディメンションホールを付与したほどの効力はない。5年前、賢者と呼ばれるSSSランクの冒険者が付与した袋が競売に賭けられたことがある。その袋には時間が停止する効果が付与されており、光金貨100枚で国が買い取ったって話だ。まったく羨ましい話しだよ」
光金貨100枚!て言うと光金貨=1億円だから、100億円!そんな金日本だったら一生かかっても無理な額だな。
「その冒険者に頼んで、付与して貰うことはできないんですか?」
「ふん!かつて同じことを考えたある国が、賢者に無理やりやらそうとして、国が滅びそうになったって話だ。そもそも人外級の冒険者なんて国さえも気を使う相手、そんな相手に頼めるわけがない」
何それ怖い。国さえも気を使う相手ってどんだけ強いんだ?
それにしても付与してほしいのか。これはチャンスか。
「おばーさん、例えばあなたの前にディメンションホールが使える人が現れた場合、それを他の人に言いますか?」
「言わないよ、これでも私はプライドを持って仕事をやっているんだ。欲に駆られて他人を売るような真似だけはしないよ」
この人なら信用できそうだ。
「おばーさん、ディメンションホールを付与した魔法袋、作りましょう」
「はぁ?」