11 フロス
「お前が期待の新人、ソージか」
早朝にクエストボードを見ていたらいきなり絡まれた。
その男は身長180cmの巨体に大剣を背負い、手には水色のブレスレット、顔の横に大きな傷跡が残っている。その姿は百戦錬磨の怪物に見えた。
何この人、物凄く怖い。
「少し訓練所まで来てくれ」
断れる雰囲気ではなく訓練所まで来た。
「優秀な新人がいると聞いてな、戦いなくなった」
ニヤッとした満面の笑みを浮かべ楽しそうにそう言う。
やばい、この人は戦闘狂だ。うん、逃げよう。
すぐさま扉に向かおうとする。
しかしその瞬間、前に男がいた。
えええええええ!!!今後ろに、ええええ!!
「寂しいじゃねーか!自己紹介もまだだっていうのによ。では俺の名前はフロスよそしくな!」
いきなり剣を抜き振るった。
やばい!すぐさま剣を抜き防ぐ。
たった一撃、体が、骨がきしむ、しかしどうにか受け止め距離をとる。
<俺の剣を防ぎやがった!確かに受付嬢達に聞いた通りただものではないな、楽しくなってきやがった>
何だ今の重い攻撃は身体能力上昇すら使っていない、それなのにこの威力、よくわからないが本気でやらないと死ぬ!(武技、身体能力上昇)はっ!
こちらから攻撃を仕掛ける。右から剣を振るい、はじき返される。今度はフロスが頭上に剣を振るう。
その一撃を防ぐ、さっきより2倍は重い一撃、あまりに重く足が地面に少しめり込む。更にオドを身体能力上昇に使い弾く。
<おお?さっきの2倍は力を入れたはずだ。それなのに・・・・・・ふっ!面白い>
俺が剣を振るい、フロスが弾く、次にフロスが剣を振るい、俺が弾く。
剣激が徐々に激しくなり剣音が響きわたる。
この人!どんだけ上がるんだ!
こっちも身体能力を徐々に上げているが、フロスは余裕で付いていく。
くそっ!このままでは俺は木端微塵となる。それだけは嫌だーーー
更に身体能力を上昇させ、剣速が上がる。
<こいつどれだけ身体能力が上がるんだ!これだけの身体強化が出来る存在は久しぶりだ。俺も少し、本気を出そうか>
「はぁぁ!」
「うっ」
フロスの剣が更に速く、強く、重くなった。
何とか受け止めるが、これ以上は無理だ。後ろに下がり魔法を唱える。
(ファイヤーランス)
くらえっ!
放った魔法はフロスに飛んでいく、しかしあたる瞬間消え去った。
魔法が消えた?いや、消えたというより、かき消えた?やばい、本当にやばい、魔法が効かないとなるとこちらが圧倒的に不利だ。
<第3神階魔法、ファイヤーランス、凡人の魔法使いが目指す最高峰の魔法、それをこの若さで、それにフロブロルの腕輪の能力を使わせるとは、そろそろ終わらせるか、これ以上は周りが持たない>
周りはすでにぼろぼろになっており、地面はところどころへこんでいた。
フロスは終わらせようと攻撃を仕掛ける。
それを何とか受け耐える。
これ以上はまずい、意識が遠のく、衝撃が頭に響く。
こうなったらやるしかない。体がもつ自信はないがそれでも負けるよりはましだ。
俺はこう見えても負けず嫌いだ!
(ディフェンスプロテクト/防御強化)
(ボディープロテクト/身体強化)
(ボディーレジスタンス/耐性強化)
(アタックリーンホース/攻撃強化)
(アクセラレーション/スピード強化)
身体能力系の強化をする。しかしそれはあまりに危険な行為、武技で身体能力を上げ、魔法で身体能力を上げる。そんなことをすれば体は持たない・・・・・・そう本来であれば。しかし神が強化した俺の肉体はそれを何とか持ち堪える。
「馬鹿な!」
守りに入っていた俺がフロスの剣を弾く。
<こいつ更に身体能力があがった!ありえん、一体何が起こりやがった>
防戦一方だったはずの俺が押し始める。
徐々にフロスの足が下がる。
このままだ、このままいけば。
<この小僧、本当に人間か?素の身体能力の何倍上がっていやがる。それにこの剣、俺の剣を喰らっても傷さえつかねー、俺の剣はかつて仲間とともに(S級迷宮インフェルノ)で得たミスリル金属、切れ味は最高峰レベル、だったらそれに耐える剣はなんだ?>
意識が遠くなり始める。そう限界がきたのだ。それでも剣を操作し残った意識に全てを掛ける。
最後だ。強化。強化。限界を超え剣がフロスの腕に薄い傷を負わす。剣がフロスの身体を僅か後ろに下がらせる。
<重い、この一撃、Aランク上位、いやSランク、俺がこの領域に立つのに何年月日を費やした。10年、いや15年、それを10代で、天賦の才!300年前、伝説の人外英雄達が悪神に挑み勝利を勝ち取った。その英雄たちと同等いや!それ以上かもしれない才能。それにこの効用、かつての悪亜神を勇者とともに倒した時に似ている。これは、将来が楽しみだな!>
ん!なんだ急に、威力が上がった!
俺の剣がフロスの剣に押され始めた。
何なんだこの人、化け物か!
あ、意識がもう。
限界を迎えその場で倒れていった。