89 作戦の詰め
「…とりあえずこんな所かな」
「ええ、ではこの方向で行きましょう」
二人の中隊長は討伐もとい、捕縛作戦の詰めを行った。
「しかしだ…久し振りに前線に戻れたかと思えば面倒な事になったモンだよ全く」
「共同作戦になって私は正直ホッとしてますがね、あんな連中とタイマンなんてゴメンですんで」
「まあ、俺は俺で体がかなり鈍っていたからな。復帰戦にはこれぐらいで丁度良い」
「えぇと、私の隊が追い上げ猟みたくカマしますんで、そちらで網に掛かったイノシシをブチかます、
でヨロシイですかね?」
ニタニタしながらディッセンバーに提案するグレン。
「うん、役割が逆だな。お前が”勢子”だ、俺らが”待子”……分かったな?」
「嫌だなあ…ギャグですよ……」
明らかに味方同士に贈り合う視線ではないが、どうやら役割分担は決まったようだ。
まず、先日と同じくグレン中隊が敵の眼前に姿を晒し、敵を誘導する。
そうして、待機していたディッセンバー隊が敵の相手をする。
ただ獣とは違い、相手はこちらに悪意ある明確なる的である。
ましてや、実力の様は先日マザマザと見せ付けられ、その身を持って体感して来た所だ。
「ウチの衆ら、なんて説明しようかやぁ…」
「そこはまあ、隊長のココ次第だな」
暗に”お前の腕次第だ”とディッセンバーは自らの前腕部分を、ポンポンと叩きながらグレンに示した。
「まあイザとなりゃ力尽くですがね」
「そりゃあ反則だな、お前と力比べで勝てるやつなんざ人類でいねえだろ」
「相変わらず舌の回りも宜しいですね、羨ましい限りですよ…ほんじゃ行ってきますわ…」
「そうか、とりあえずあれだなグレン」
「ええ」
先程までのオチャラケていた雰囲気は消え、二人は互いに、固く握り締めた拳を胸に当てた。
「武運を祈る」
「ありがたく」
その言葉と共に、両中隊長はそれぞれの隊員達の下へとと向かったのだった。




