92/137
84 騎兵襲来
ふと、エリアは違和感を感じた。
虫の知らせとでも言うべきか。
とにかく、言い表せない不快感をつい先ほどから抱いていた。
“何だ?この感じは…誰かに見られている?獣……いや、違う!これは!”
「隊長!」
「んあ?」
突如大声を上げたエリアに、グレンは視線を向けようとした。
その時
グレン正面の坂から騎兵が駆け下りて来た。
後続に十数騎はいる。
並の人間ならば、対処はおろか避ける事すら困難なタイミングだった。
だがグレンは、即座に腰に下げた斧を抜くと、僅かに敵の突撃進路から体を反らし、全力で馬の胸部
に刃を叩き込んだ。
「うばっは…!」
まさか歩兵が、真っ正面から騎馬を一撃で潰すなど、予想だにしなかったのだろう。
馬を潰された敵兵は、大きく宙に跳ね上がり、そのままロクに受け身を取れず、まともに地面へと
叩きつけられた。
「正面より敵襲!敵は正面上方!騎兵が駆け下りて来るぞ!複数で側面から馬を潰せ!」
グレンは直ちに配下の兵に指示を飛ばした。
「オオッ!」
精鋭揃いのグレン中隊は、即座に行動に移る。