83 索敵
翌日、第二中隊偵察隊の約百名は、予想される出現範囲の探査を行っている。
「帰りたい」
「いきなり何言ってんだエリア!真面目にやれ!」
唐突なエリアをガランが叱る。
「良いなぁアイラ、変わってくれんかな」
それを完全無視し、エリアは独り言を続ける。
「無視済んじゃねえぞボケ、お前じゃエレナを抑えられんだろ?」
「いやぁ、僕があんな綺麗な人を束縛なんて…出来るわけ無いじゃないですか」
「なんだその棒読み、つまり野に放つって事か!」
「正直、あんまり関わりたく無いんであの人」
「ぶっちゃけ過ぎだ!先輩だぞ!あんな……ド変態でも!」
「ガラン、お前も落ち着け。隠さなくちゃいかん本音がダダ漏れだ、静かにしろ」
エリア、ガラン、ヴォルゲンの三人は固まって捜索を行っている。
「お前らもっとバラけろ!何固まってんだ!エリアの寝言に構ってンじゃねえぞダボが!」
「隊長、静かにして下さい。敵に見つかったらどうするんですか」
「クソがっ、ガラン置いて来りゃ良かったわ!」
「なら今から戻りますか?代わりに誰かを…」
「それもそれで面倒なんだよなぁ…」
今いち緊張感が見られないグレン中隊の面々だが、その姿を誰かの瞳が捉えていた。
第二中隊でも無く、駐屯地の者でも無い誰かが。
明確な敵意を抱いた誰かが、ジッとグレン等を見つめている…