82 敗残兵の噂
「…でっ、とりあえず二隊で探す」
「うちと第三で」
「敵さんは散発的に襲撃しとるから“ここじゃア!!!”って確信的にやれる訳じゃ無いがな」
グレンは叫んだ。
「でけえ声出すなや!いきなりよォ!びっくりするだろ!!」
「うるっせえ、オイそいつ黙らせろヴォルゲン」
「お前がうるさいぞガラン」
ヴォルゲンがガランをバシッと叩く。
「あ、それとだな」
グレンが話を続ける。
「何だ?」
「“敗残兵”の件は聞き取るか?」
「各戦域で発生している脱走兵の事か」
「俺はこの件は“それ”絡みだと思う。」
「何故そう考える」
「手口が鮮やかすぎる、盗賊なんてのは、大概が傭兵崩れのゴロツキか、または食い詰め百姓だが…
まだ死人が出てない」
「敵は、こちらの動きをある程度把握している…か?」
「その通り、と言うかそれ以外に思い付かん。」
「だとすると、相当厄介だな。」
「気をつけて動け、ヴォルゲン。」
「…アイラは本当に連れて行かないのか?隊長」
さすがにヴォルゲンは顔色を曇らせる。
「あいつは保険だ、もし接触・即戦闘になっても、端っからこっちの手札見せる事はねえよ」
「なるほど…つまり隊長は、強行偵察も辞さないと。」
「隠密行動はなるべく心がける。」
「エリア、くれぐれも頼んだぞ。アイラが居ない以上お前が頼りだ。」
「はい」
「さて、出るかいね…ヴィクトル、そのガラクタ連れて来い。」
「無理です、ヴォルゲンさん頼みます。」
ヴィクトル達は、即座に押し付け、さっさと退出した。
「行くぞ、ガラン」
ヴォルゲンは、気絶したガランを抱えながら作戦室を出た。
「なんか…随分面倒な事になりそうだやぁ…」
ポツリと、グレンは一人呟き、作戦室を後にした。