81 選抜偵察隊②
「終わったか?」
「くっそっ…力強いなあいつ…」
グレンはエレナを振り払う為、暫く部屋から退出していた。
「こんなチンクシャのどこが良いんですかね?エレナさんは」
「お前黙らねえと、“単独強行偵察”やらすぞエリア」
「キャア、怖い」
「止めとけグレン、こんなド屑でもこの隊にはコイツ以上の斥候はいねえぞ。」
「エリア、また訓練するか?」
「はいすいません、静かにします!」
ヴォルゲンの問いかけに、エリアは口を紡ぐ選択をした。
「あれ、そういえばアイラは?」
「お前静かにするんじゃねえのか?あいつは今回はいらん」
「“欲しかったけどエレナ抑えさせなきゃならんから使えん”だろ?隊長」
「ミシュリットは連れて行くからな?先に言っとくが」
「ちっ!!」
「でっけえ舌打ちだなオイ、少しは隠す努力しようぜ」
「うるせえ木偶の坊」
「とりあえず話を始めて宜しいですかね?いい加減にして貰えます?」
「ああ、やるか…」
グレンが力なく進行を促す。
「まずは第一に。敵の本拠地を発見する事です。“安全に”」
先程グレンが口走った、強行単独偵察の事を言っているのだろうか。
思いっ切りグレンを睨み付けながら、ヴィクトルは話を続ける。
「第二に兵力規模の把握です。先程も話に上がりましたが、最低200から300は居るでしょう。
油断して勝てる差では有りません。」
「地の利は完全に、奴さんが持ってるしな。」
「慣れない場所で慣れない敵と、規模・戦術が分からない目暗状態で戦うなんてとても出来るもん
じゃないな。」
ガランとヴォルゲンが頷きながら話す。
「そんな事いわれた日にゃ、実家へ帰るわ俺。」
「あんた実家無いでしょ隊長」
「ああ今頃、焼け野原に草が生い茂っとる頃だの。」
「栄養もよさそうですしね、一面キレイな花畑になってんじゃないですか?」
「古来から受け継ぎし焼き畑農法だな、植物以外にも“色々”と”大量”に燃え取るからな!」
「いやぁ、絶対食べたか無いですね!その畑で採れた野菜は!」
「全くだな!俺だって嫌だね!トラウマ物だわ!ダハハハハハ!!」
グレンの言葉に、エリアが突っ込みを入れる。
二人はゲタゲタ笑っているが、空気が凍り付いた作戦室に佇むアラサー小隊長達は、とても笑えた
物ではなかった。