72 新調
”偉い人に挨拶してくる”
そう言い残し、グレン、ディッセンバー両隊長は、到着早々に立ち去った。
「どこにいくの?」
アイラが隣を歩くエリアに尋ねる。
「ちょっとした買い物ですよ」
質問に答えながら、エリアはある店を探し歩く。
「なに買うの?」
「食べ物じゃありません」
「先手打つのやめて?」
「とりあえず雑貨屋ですね、小物入れが欲しいので」
「腰に付いてるよ?」
アイラはエリアの腰に装着されているくたびれた濃茶色のカバンを指差す。
「だいぶ傷んで来てましてね、補修しながら使って来ましたが、こないだの戦闘でフタが千切れてしまいまして、この際新調しようと思いまして」
「へぇ」
自分から訪ねておきながら、ひどく興味無さげな返事をアイラは寄越した。
「後は武具屋です」
「そっちの方が楽しそう」
アイラは目を輝かせる。
「アイラの曲刀より良いものは、恐らく無いですよ?」
「構わない、武具は見てるだけでも楽しいから。その土地や人の思想や時代背景が見えてくる」
「そうですか、いやに難しい言葉づかいしますね、アイラのくせに」
「隊長といいエリアといい、失礼過ぎる」
「はいはい、すいませんね・・・あっここですね」
「まずは雑貨屋さん?」
二人はひとつ目の目的地である雑貨屋を見つけた。
「ええ、このカバンもいつ壊れるかわからないので、心許ないですからね」
「財布落としたら大変だからね」
「そういう事です」
二人はお喋りを続けながら店内に入って行くのだった。