71 道中会話
~宿営地より発つ、グレンとディッセンバーの道中会話~
「なあ、グレン」
「なんですか?」
「さっき発つ時に、大隊長が見送りに来ていただろ?」
「いましたね」
「その後ろにクロードも居たよな?」
「ええ、相変わらずすごい目付きで見送ってくれましたね」
「あの視線は誰に向けてのもんだったんだ?・・・」
「あの場に居た全員じゃないですか?大隊長にディッセンバーさんに私も含めて全員に」
「味方を見る目じゃねえんだよな、アイツは・・・」
「しょうがないですね、いつもの事ですよ」
「お前はそれで良いかもしれんが、俺なんか病み上がりだぞ?もしアイツが血迷っても抵抗できる気がしねえ」
「それがそこまで馬鹿でもないんですよねえアレも」
「そうなんだよなぁ・・・どうにかならんもんかなぁ・・・」
「無理でしょうね、アイツは上からゴリ押しで決められるの大嫌いな性質ですから」
「さっき見たいのか?」
「ええ・・・育ちが原因でしょうがね」
「・・・アイツの親はなぁ?」
「だいぶ厳しい人間ですからね、アイツは幼少期早々に見切りを付けられたらしく、愛情を受けずに育ってきたみたいですよ」
「何か、偉い家系には有りがちな話だな・・・」
「とりわけ父親からは、何一つ授けられなかったようです。全て上の兄姉に集中していたようで」
「ひどい話だよ・・・」
「アイツの娼館狂いも、根幹にはそれが影響しているんでしょうね」
「無償の愛を受けずに育てられたから、有償の愛に沈んでいるのか・・・」
「いい表現ですね・・・恐らくはそんな所でしょうね。要するにクロードは・・・愛に飢えているんですよ、他者からの愛に」
「・・・・・・グレンお前、クロードと頻繁にド喧嘩カマしてる割には、しっかりヤツのことを見ているんだな?」
「仲間ですからね、あんなんでも」
「そうか・・・」
「性格こそチャランポランですが、間違いなく頼りにはなる奴ですよ。私と同じく若くして千人将ですから」
「お前、それは遠まわしに自分も優秀だって言いたいんだな?」
「客観的な事実ですよ」
「ふふっ・・・違いないな」
「まあ、私も親の愛情を受けずに育ってきた輩ですからね?何となくでも気持ちは分かる気がします・・・私の場合は死別で、アイツの方は健在ですが」
「お前も結構優しいんだよな・・・」
「私はいつでもどこでも誰にでも優しい、好感度抜群のイケメン好青年ですよ」
「❝戦闘龍❞なんて、物騒な渾名付けられといてよく言うぜ」
「自分で名乗ったりはしませんよ、そんなこっ恥ずかしい渾名なんか。うちの連中にはたまに茶化されますよそれ」
「いや、うちの中隊の連中には結構評判いいぞ」
「感性の違いじゃないですか?」
二人のとりとめのない会話は。応援要請地に到着するまで続く。




