表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇國の防戦記  作者: 長上郡司
第五章 治安維持
77/137

69 第三中隊長

「お待たせしました」


扉を開け入室したヴェルヘルムは、二人の姿を確認すると一言侘びた。


「いや別に?それよりディッセンバーさん、退院できたんすね?」


それを特に気にしていないかのように答えるクロードは、ディッセンバーに話しかける。


「おう、久しぶりだなお前ら」


「傷の加減はどうですか?」


グレンは気遣う素振りを見せる。


「ああ、どうにか戦えるぐらいには回復したでな。こうして戻ってきたわ」


「それは何よりで」


「皆さん、少し宜しいですか?」


椅子に腰を掛けたヴェルヘルムが、三人の会話を遮断した。


「今回この面子に集まって頂いたのは他でもありません。件の盗賊退治の指令についてです」


「なんか問題でも出たんか?」


クロードが尋ねる。


「ええ、単刀直入に伝えます。クロード・・・君は今回の出撃から外します。代わりにディッセンバーをグレンに付け共に盗賊団を討って頂きます」


それを聞いた瞬間、グレンは歓喜の余り飛び上がりそうになった。


対してクロードは


「何で?」


平然とヴェルヘルムに尋ねる。


「ディッセンバーの希望です。復帰したばかりで、かなり訛っているそうなので」


「じゃあ、俺じゃなくてグレン外しゃ良いだろ」


「お前すげえね、本人の前でさ」


ヴェルヘルムの横で聞いていたディッセンバーが、思わず呆れた声を漏らす。


「てめえ第五の分際で、第二の俺によくもそんな舐めた口聞けるな?」


「対して変わりゃしねえじゃねえか」


グレンとクロードがバチバチと視線を鳴らす。


「クロード、今回の件はこれで決まりです。君が何を言おうと覆ることはありません。出撃はグレンにディニッセンバー、この二人です」


「・・・・・・」


クロードが敵意を込めた目で見つめるが、ヴェルヘルムはまるで意に介さない。


「あ~何かすまんな、クロード。俺が我が儘を言ったせいで・・・」


場の空気を察したディッセンバーが仲裁に入る。


「・・・・・・いや~ホント残念ですよディッセンバーさ~ん。お蔭で『愛の狩人』の新装開店行けなくなっちゃたじゃないですか?~」


クロードは、先程とは打って変わり満面の笑顔でディッセンバーに答えた。


“大概、二面性強いなコイツ・・・”


グレンは感じたことを口には出さなかった。


「では、話はこれで終わりです。二人共、お願いしますね?」


ヴェルヘルムはそれだけ言い残し、部屋を後にした。


「じゃあディッセンバーさん、宜しくおねがいします」


「優しくリードしてくれや」


「何を寝ぼけたことを・・・おい、クロード」


「あ?」


ディッセンバーから視線を外したグレンが、クロードに声を掛ける。


「ざまあ」


「死ね!盗賊に生革剥がされろ!!剥製オークションで出品されたら落札して火ィ放ってやらァ!!」


「うるせえ馬ァ鹿!留守番とかザマアねえな全身男性器野郎が!!大人しくこの街に引きこもってろ!!ついでに粉掛けた女衆に全身刺されてハリネズミになればいいわ!!」


お互いに罵詈雑言を送り合うグレンにクロード


「あ~久し振りだなこの感じ・・・」


それを傍目で見ながら第三中隊長ディッセンバーは、帰ってきた第六十大隊の空気を存分に懐かしんでいるのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ