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皇國の防戦記  作者: 長上郡司
第五章 治安維持
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65 盗賊団討伐作戦

グレンは小隊長達を呼び、先程受けた指令について説明する。


「盗賊退治して来いってさ、エリア君」


「何で僕を名指し?おかしくないですか?」


「上のご指名だからな、モテる男は違うな」


「そんな夜の店みたいな事、本営がするわけ無いでしょ?後、親より上のオッサンにモテたって何一つ嬉しくないですからね?」


「うんまぁ、嘘だけどな?」


「どこから?」


「指名から」


「何なの?この会話」


グレンとエリアの余りに不毛な会話に耐えきれず、アイラが突っ込んだ。



グレンでは埒が明かないと判断したのか、ガランはヴィクトルを進行役に指名した。


「では、隊長に代わり今回の作戦について説明致します。事の発端は、半年以上前に遡ります。近年四軍管内を小規模な盗賊団があちこちで発生しております」


「へぇ、物騒だね」


何かを口にしながら、アイラは呑気に話す。


「お前個人の方がよっぽど物騒だわバカ」


アイラが漏らした感想にグレンが突っ掛かるが、ヴィクトルは構わずに話しを続ける。


「“あちこち”とは有りますが、小規模かつ散発的な襲撃のため被害事態はあまり多くはありません。また、それぞれの盗賊団も神出鬼没で、第四管区憲兵軍としても有効な対応策は立てられていませんでした」


そもそも、何故第四軍団管内にて、そこまで盗賊被害が頻発しているのか?


第四軍団の担当地域は、帝国軍と対峙する第一軍団・第二軍団・第三軍団の後方に配置されている。

これは各守備軍団が、不意に突破されてしまった時に備えての、予備軍としての意味合いで配置されている。

今回のように第三軍団は多大な損害を受け、防衛線に影響が出かねない時には自らの担当地域から全速力で駆けつけ、直ちに敵を撃退し、損傷箇所を修復する遊撃隊としての顔も併せ持つ。


さて、何故盗賊が大発生しているかについてだか、これはただ単純に管内が不景気であり、管区住民が飢えに苦しんでいるからである。


前線より後方の地域のため、優先順位が大きく下げられている第四管区は、人も、物も、何より金も留まりにくい状況に陥ってしまっている。


最前線の第三軍団管内などは、優先的に食料品を含めた物資が供給されている為、今一アイラなどはピンと来ないようだか、状況はかなり深刻である。


その為、前線に送られる為の潤沢な物資を運ぶ輜重隊にも、最近被害が出始めている。



「また、最近では輜重隊にも被害が出始めています。」


「ん?じゃあ、うちらへの供給が滞るかもしれないって事ですか?」


エリアが質問を返す。


「その通り、と言うか・・・すでに出始めている」


エリアの質問に、ヴィクトルが深刻な状況を顔で示す。

そしてグレンが代わって説明する。


「今朝入った情報だが、昨日の昼前に我が陣営に向かう補給部隊が、何者かによって襲撃を受けた。幸いにして死人は出なかったそうだか・・・」


グレンは思わず口を紡ぐ。


「積み荷を、ごっそり持ってかれたのか?」


「ごっそり所か・・・丸さらやられた。荷車まで持ってかれたってよ」


「げっ・・・」


ヴォルゲンの予想を上回る悲惨な答えが、グレンの口から放たれた。


「それでよく死人が出なかったな?荷物置いてさっさと逃げたのか?」


「いや、いつも通り運搬していたら急襲を受けたらしい。殆ど抵抗らしい抵抗も出来ず、全員がふん縛られたみたいだ」


「本当に盗賊かよそいつら、手際が鮮やかすぎるだろ?」


ガランが疑問をぶつける。


その疑問にヴォルゲンも追従する。


「補給隊員が、その盗賊共とグルって事はないのか?それなら死人がまったく出なかったのも納得出来るが」


「それは調査待ちだな、四軍もそれを一応疑ってはいるみたいが・・・」


「一応?」


「補給部隊がやられる様になったのはつい最近から何だか、毎回毎回そんな感じでな。死者が未だに出ていない、当然だか襲われた面子もその都度バラバラだ・・・おかしいよな?」


「つまりは盗賊側が、相当な手練れ揃いの精鋭集団か・・・」


事の深刻さに気づいたヴォルゲンが、思わず言い淀んでしまった。

盗賊が精鋭集団ならば、こちらも精鋭を当てるか、もしくは数で押し潰せば済む話だ。


しかし・・・


「または四軍の輜重部隊全体が、軍需物資の横流しに絡んでいる可能性がある。もしくは、もっと根深い所から・・・」


「・・・・・・」


室内が重苦しい空気に包まれた。


たかが盗賊退治だと話を聞いていれば、第四軍団内の大規模な物資の横領疑惑にまで話が流れてしまった。



「隊長、ではまずは情報収集から入るべきですね?」


これまで一度も口を開かなかったエレナが進言する。


「そうだな、第四管区の憲兵軍にも知り合いは何人か居るから、俺はとりあえずそいつらから当たることにする」


「中隊としては、どのように動きますか?」


ヴィクトルが流れを聞く。


「あ、今回は内の隊だけでだけでいく訳じゃないぞ」


その言葉に全員の顔が引き攣った。


「まさか・・・クロードを連れていくのか?」


「・・・そうだって、言ったら?」


「勘弁してくれ・・・・・・」


ヴォルゲンが、思わず天井を仰ぎ見た。



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