64 別命
新章です。
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中隊の宿営地に戻ったグレンは、予想だにしない指令を受諾した。
「盗賊退治?俺らが?」
酒保内でガランは、酒を呑みながら質問を返す。
「三軍の被害が想定より結構でかかったからなぁ・・・結局あの城塞守備も、第四軍が出張ってきたから何とかなったが」
グレンも何かの果物ジュースを飲みながらそれに答える。
第六十大隊自体は、そこまで致命的な被害とは言えないが、第三軍団全体を見ればそうもいかない。
特に敵の大火力を真正面から引き受けた箇所などは、壊滅の憂き目に遭った部隊もいくつかあった。
それらを再び戦線に立てるように修正し、補完するだけの時間が必要となったのだ。
その状況では、奪還したばかりの城塞を再度奪われかねないとの懸念を抱いた東方軍、そして皇國軍上層部の決断は素早かった。
「受けた被害が余りに大きすぎて、現状の三軍では作戦行動が立ち行かないって事か?」
「まあ、早い話がそんな所かな?・・・」
グレンがしかめっ面でガランに返す。
「だからって、何で急に盗賊退治を?正規軍だぜ俺らは」
横からヴォルゲンが、肉料理を頬張りながら口を挟む。
「それなんだが、要請地が本来は四軍の軍管区だけどな?まあ・・・」
❝言わんでも分かるだろ?❞とグレンは言いたげだ。
「あぁ・・・なるほど・・・」
「つまり『お前らのケツ拭いてやってんだから、俺らの仕事やっとけやクソが』ってわけか」
話を聞いて察したヴォルゲンは、どうやら納得したようだか・・・
「いやいや、四軍管内の憲兵軍は仕事しろよ。國内の治安維持関係は、本来ならあいつらの役割だろ?」
ガランが思わず愚痴をこぼす。
「どうも他の山賊やら盗賊の対処に追われて、全く手が回らないんだってよ。治安悪いんだよな、最近あそこらの地域は」
その愚痴にグレンが答える。
「だから第四管区憲兵軍としても、四軍に応援要請を出して四軍も『さぁ出発だぜ!ヒャッハー!』って時に『お前ら、今から三軍が獲った城塞の警備な。山賊?知るか』となりゃあ」
「三軍の俺らとしては、なにも文句は言えんか・・・」
「そうなんだよな・・・」
グレンの話を聞いていたガランは、渋々ながら納得したようだ。
「それじゃ、いつ要請の地に発つんだ?」
「明日だな」
ガランの疑問に、グレンは無表情で答える。
「いや、早すぎたろ・・・」
「急すぎる・・・」
「そうなんだが、上の命令だでなあ・・・仕方ねえさ」
三人は、急遽出された命令に不満を抱きながら、明日の準備に入るため酒保を後にした。
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現在の戦況イメージ
| ← 帝国軍
第 北東戦線 第一軍団⇒ |
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四 東部中央戦線 第三軍団⇒ ○ | 帝国側領土
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バルド城塞|
軍 皇國側領土 皇國東方軍 ⇒ | ← 帝国軍 ○←グレンの故郷
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団 南東戦線 第二軍団⇒ | ← 帝国軍
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