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皇國の防戦記  作者: 長上郡司
第一章 怨嗟の声
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06 大隊長の到着

「お待ちしておりました、大隊長」


ヴェルヘルム大隊長の眼前には自らの配下である五人の中隊長が並ぶ。


声を掛けたのは、筆頭中隊長であるブラド千人将だ。


彼はこの大隊の中でヴェルムに次ぐ地位に就く。


我らがグレンは、この時点で第二中隊長なので、ヴェルヘルム大隊(兵五千)の中では三番手にあたる地位に居た。


「お待たせして申し訳ありません、ブラド千人将。」


五人の前に姿を現したのは。身長180も後半に届こうかと言う大柄な男であった。


しかし威圧感などを全く感じさせない穏やかな物腰が、彼の育ちの良さを表していた。


背中まで伸ばした真っ黒い髪を一つに結び上げた、気品にあふれる端正な顔立ちの色男・・・


それが世間の一般的なヴェルヘルムに対する評価である。




対するグレンと言えば、身長も170に届くかどうかの、この国の男はもちろん女にも容易に抜かされる程度の、小男と言って差し支えない程度の背丈だった。


肩まで伸びた髪の色は黒。


瞳の色は、意思と目的を表すが如く漆黒。


鍛え上げられた両腕。


顔立ちだけで言えば悪くない。




だがその顔面は、主に左側が、大小の傷に覆われている。


左耳は一部が欠損している。


そして分厚い首の右側には、今こうして生きているのが不思議な程の、刃物による大きな裂傷痕が見受けられた。


この男はこの当時、皇國東部戦線において、敵味方を問わずある渾名で呼ばれていた。






“戦闘龍”グレン そう呼ばれていたのだ。






「ご指示通り、全中隊用意は整っております」


「ありがとうございます。流石に手際がいい」


2週間も放置しておいて手際も何もあった物ではないだろうが、その点を指摘するだけの度胸をグレンは持ち合わせてはいなかった。


他の中隊長に至っては特に疑問にも感じていないようだった。


“くそ狸が・・・”


グレンは腹の内で思わず毒づいた。


この大隊長には明確な二面性が見受けられる。


他の将兵を始めとして、その漆黒の本性と真紅の目的に気付いている者はほとんどいなかった。


10年近く仕えているグレンにして見ても、それら全てを把握しているわけではない。


グレンはグレンで、護国とは全く別の目標の為に軍務に服し、ヴェルヘルムの下に降ったのだ。




その目的とは、




報復である。


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