48 あのクソ野郎
城壁の階段に座り、グレンを始めとした中隊の隊員達は、何かを眺めていた。
それが何かは、全員が分かっている。
だが、脳が理解を拒絶しているのだ。
何故か?
「おい・・・ヴォルゲン」
「俺は、知らんぞ・・・」
ヴォルゲンは、目をそらす。
❝何であいつが・・・❞
城門が開かれた。
第六十大隊の総力を結集し、この固く閉ざされた城門は落とされたのだ。
「おかしいだろ、ガランさんよお・・・」
「いやいや、俺に言うなよ・・・」
ガランは苦笑い以外に何も反応が出来ない。
❝どうやって・・・❞
当然、大隊の面々は我が隊のみで落としたとは誰一人として考えてはいない。
正面から、死を覚悟の上で囮となり、散っていった多数の同胞たちの活躍が合ってこそ、自分たちは今こうして自らの足で、城壁の上にいるのだ。
「お前ら、誰も気づかなっかたのか?」
「隊長も一緒でしょう?・・・」
ヴィクトルは、只々呆然としていた。
❝いつのまにここまで・・・❞
「はっはー!!!この城は!!このクロード・ヴァルテウスが乗っ取たァ!!!!」
何故か、城門が開くと同時に、後方待機中だったはずのクロード中隊がなだれ込んで来た。
瞬く間に残兵を蹴散らすと、クロードはボロボロのグレン第二中隊の前で調子に乗り腐っていた。
その様を見たグレンは静かに怒りを滾らせていた。
首筋と両腕には太い血管が浮き出している。
結果的に、クロードがこの城の城門突破一番乗りとなってしまった。
ただ後方で待機していただけの男が・・・
「エリア、あいつに向かって弩を撃て、頭な」
「いや、身内殺しは流石にちょっと・・・」
「アイラ、あいつ切ってこい、胴丸バッサリと」
「私の仕事は終わったから嫌」
「じゃあ、メルヴィン突き殺せ」
「あいつ嫌いなので、近寄りたくないです」
矢継ぎ早に同胞殺しの指示を出すが、尽く断られるグレン。
先程までの味方に感謝的な気持ちは何処へやら・・・
「隊長、気持ちは分かるが・・・」
「ほっときましょうよ隊長、精神衛生に悪いだけですよ、あんなの相手にしても」
見かねたヴォルゲンとヴィクトルが止めに入る。
「・・・はぁ、分かったよ」
部下の慰めに素直に応じることにしたグレンは、そのまま立ち上がりブラドやソフィアの元に向かおうとした所だったが・・・
「どうした!?グレン!!えらいズタボロだなあ!!腕鈍ったんじゃねえの!?あっはっはっはっは!!!」
グレンに気がついたクロードが、無邪気に挑発した。
それを聞いたグレン中隊の配下は、何かを察したようにそっと、グレンのそばを離れた。
ヴィクトルに至っては頭を抱えている。
「・・・・・くっそがァ!俺ン直に行ってくらァ!!こンのボケクズがァ!!!」
グレンは全速力で走り出し、クロード中隊の元に向かった。
かくしてクロード・ヴァルテウスの命運はここに尽きた。
もうじき五十話です。
頑張ります。
ロト7当たりますように。