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皇國の防戦記  作者: 長上郡司
第三章 山岳城塞奪還戦
40/137

39 “砦将”ボルゾフ

休出終わった


休日も/(^o^)\

グレンに向かい、長槍を投げ込んできた男が、壁上より降りてきた。


見上げるような巨漢、腰まで伸ばした灰色の髪を背中で一つにまとめたその男。


豊かな口髭を生やし、堅牢な鎧を身に帯びたその男。


その鎧には、ある紋章が彫り込まれていた。


グレンは、それが誰なのかを理解した。


「・・・❝鉄血の❞ボルゾフ将軍?」


「え!?」


エリアが驚いた顔でグレンを見る


「隊長が敵に敬称を付けた?!」


ヴォルゲンも叫ぶ。


いや、そっちかよ


「お前が❝戦闘龍だな❞」


地を這うような低い声で、男が尋ねる。


ボルゾフが手にする戦斧は、真っ直ぐにグレンを指す。


「ええ、私がこの中隊を預かります、グレン・バルザード。ここいらでは、まぁ・・・そんなあだ名も付けられています」


「敵対者に対して随分と腰が低いな・・・噂とはだいぶ違うようだ 」


「我が軍団長である、ボルド大将軍の❝元❞同郷の御仁に、舐めた口の聞き方は出来ません。」


「ふっ・・・ボルドか、なるほど・・・この攻め口は、やはりあいつか・・・」






グレン中隊は、直属の上官に大隊長であるヴィルヘルムの指揮下となるが・・・


その上には大隊長を指揮する戦隊長のキリクが


その上には戦隊長を統べる師団長が


最終的には第三軍団の最高指揮官となる軍団長がいる。


今しがた、砦将ボルゾフの口から出たボルドとは、その第三軍団軍団長の名である。





「・・・ボルドは、息災か?」


「ご自分で確かめて見られては如何ですか?喜んで、本陣までご案内いたしますよ?・・・ボルゾフ将軍」


「ふっ・・・捕虜として・・・な」


「ええ・・・現状を見て、この城はもう駄目でしょう。正面は眼前まで接近され、城壁左右からも侵入され、頼みの綱である城門は開門直前・・・挽回の余地はかなり薄いのでは?」


「そうだな・・・だがな、若武者よ。それは軍人として、武人として、受け入れるわけにはいかんのだよ」


「へぇ?」


「お前たちに城を明け渡したとして、城内にいる者たちはどうなる?」


「全員斬首でしょうね、軍属は。我が軍団の幹部は、敵対者に情けは無いので」


グレンは無慈悲に告げる


「・・・・・・だろうな」


それを聞いたボロゾフは、乾いた笑いをこぼしながら首を振る。


「貴方の昔ながらの配下は助命いたしますよ、ボルド大将軍の馴染みですので」


「会った所で奴自ら首を刎ねるだろうさ・・・そういう奴だ、昔からな」


「でしょうな、裏切り者には容赦のない方ですから」


「私は人質を取られた・・・家族をな」


「当然、存じ上げております」


「ボルドは・・・」


「いませんよ誰も、もう誰一人として生きてはいません」


「・・・そうか」


「ええ」





二人の間に奇妙な空気が流れる。


「さて、どうされますか?ボルゾフ将軍。やるのか、否か」


「・・・今さらボルドに会ったところで、なにも変わらんよ」


「・・・交渉決裂ですな。では、私と殺り合う・・・ということでよろしいですな?」 


「あぁ・・・それで構わん」


「そうですか・・・光栄ですよ、今や伝説上の存在である“ガルディア騎士団”の一員と闘れるとはね」


互いに兜のバイザーを閉じ、前を見据える。


「さて、それでは改めて名乗ろう“帝国軍将軍”砦将のボルゾフ・グラバス・オイゲンだ」


「皇國東方軍千人将、グレン・バルザード」


二人の剛将が、ぶつかる。


お互いの矜持を込めて。


続く...


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