表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇國の防戦記  作者: 長上郡司
序 章 埋み火
4/137

03 西方の守護者



「閣下が檄を飛ばす? えっ? 士気下がらない?」


「さっきからきっつい事ばっか言いますね、エミリアさん」


「心底嫌いだから」


「端的すぎでしょ、うちの最高指揮官ですよ?あの小さいの」


「普段から仕事しないで、ああいう時ばっかりしゃしゃり出てきたって、苛ついてくるだけよ。何かこの間私、白髪があったんだけど?私まだ20も半ばなんだけど?ひどくない?ねえ?精神的苦痛で軍法会議にあいつ上訴したいくらいなんだけど?」


「エラく早口ですね…落ち着いて下さいな、私に言ったって何も出来ませんから…無駄ですよ?時間の…そもそも総統を相手取って戦っても負けますから」


「最近あんたもストレス源の一環な気がしてならないのよね…それも構成主体で」


「何のことでしょう?いやはや…さっぱり分かりませんねぇ?」


エミリアとその部下は、軽口を叩き合いながらグレンが居る場へと向かう。


グレンは今か今かと出撃を待つ、西方軍の大勢の将兵たちの前に姿を表した。


髪とヒゲを整え、重装の鎧兜を羽織り、幕僚たちを両脇に従えたその姿は正しく歴戦の❝大将軍❞であり一軍の支配者である❝西方軍総統❞と呼ぶに相応しい闘気を身に纏っていた。


「我が精強なる西方軍の諸君よ!同盟の狙いはこの地だ!お前たちが祖先より受け継ぎ、血と汗を流しながら今日まで守り抜き、開拓してきたこの豊かな大地を!愚かにも奪い取ろうと、目を血走らせて目と鼻の先まで来ているぞ!」


拡声器も通さずに、広大な敷地の隅々まで彼の声は届く。


「西方の戦士達よ!!答えよ!!お前達の大地を、家族を、歴史を踏み躙らんとする者達に!!お前達は一体何を持って報いるべきか!!」


矛を掲げるグレンは、西方軍に問う


「殺せェ!!」


「ぶっ殺せェ!!」


「一人残らず血祭りに上げたるわァ!!」


❝同盟国軍❞への凄まじい怒号が上がる。


「西方の勇者たちよ!!答えよ!!西方軍の!!我らの流儀とは何だ!?」


「侵略者には死を!!」


「侵略者には死をォ!!!」


「侵略者には死をォォ!!!!」


「その通りだ!!皇國の勇者たちよ!!!お前達の!!皇國の正義の名の下に!!!薄汚い山賊共に天誅を食らわせてやれェ!!!お前達には!この❝戦闘龍❞グレンがついているぞ!!!」


グレンのその声を合図として、西方軍将兵の爆発的な歓声が大地を支配する。


「さあ行くぞ!!皇國の勇者達よ!!出陣だァ!!!」


グレン将軍!グレン将軍!!グレン将軍!!!

グレン将軍!グレン将軍!!グレン将軍!!!

グレン将軍!グレン将軍!!グレン将軍!!!


グレン!

グレン!!

グレン!!!


エミリアの辛辣な予想とは裏腹に、一瞬で西方軍将兵の士気を限界値まで引き上げたグレンは、増援軍の先頭に立ち城塞の城門から馬で駆け抜けていく。


その背後を追い、地を埋め尽くすほどに膨大な数の騎兵隊軍団がグレンに続いた。


「なに?アレ…怖」


「我らが総統ですよ」


「流石に豹変しすぎじゃないの?…あ、分かった…影武者でしょあれ」


余りの変わり身に、思わず現実逃避するエミリア。


「あんな小さいの、そんなに何人も居ませんよ」


それを部下は、バッサリと切り捨てる。


「えっ…私らも行かないといかんの?あの後に続いて?」


「そりゃあそうでしょ、あんたはうちの中隊の中隊長でしょ、待ってますよ?うちの連中も」


「ええ…」


「さあ、行きますよ?グズついてないで」


「はぁい…」


渋々ながらエミリアも、軍勢の後方を追っていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ