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皇國の防戦記  作者: 長上郡司
第三章 山岳城塞奪還戦
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25 第一陣、突撃態勢

城塞を前にしたグレンは流石に顔が曇る。


実際に眼にするのは今、このときが始めてだ。


数年前に収奪されて以来、何度も奪還作戦が組まれ、その度に皇國軍将兵の命を散らせてきた忌まわしい“鉄壁のバルド城塞”


火砲陣を敷き詰め、大規模な堀を構え、両脇の絶壁には一見して攻め入れられる隙は無い。


まさに鉄壁の名に相応しい威容を誇る大要塞である。


“アレをやるのか・・・”


正面から攻める第一陣から外されたといえ、心胆を寒からしめる光景である。


“可及的速やかに、攻め上がる・・・俺がやるのは、それだけだ・・・”


これから殺し合いをするという状況下で、戦場独特の空気が重い。




「グレン!」


部下の誰とも違う声に呼び止められたグレンはそちらの方向に振り向く。


「おおっ、カイトにヴィンセントか、久々だなぁ」


「はっはぁ!偉くなりやがってこの野郎!千人将かよお前!すげえなぁ、おい!」


「俺らなんかこないだやっと百人将だよ」


士官学校時代の同期達に呼び止められたグレンが、年相応の表情を見せる。


「いやあ大変だなお前ら、第一陣組み込まれちまったんだってな」


「ホントだよ頼むぜグレン?さっさとあのクソ壁落として、未来ある同期の命を散らさんでくれよ?」


「百将何ぞで死んでも、軍人恩給大して出ないんだよ・・・」


「ああ、ヴィンセントが死ぬと母親と兄弟が取り残されちまうからな・・・」


「いや、俺は?」


露骨に無視されたカイトが突っ込む


「お前はどうでも良いわ、引っ込め」


「ひでえ、これ遺言になったらどうすんだよ!」


「俺がさせねえよ、そんなことに」


グレンが力強く答える。


久しぶりに旧交を温めたグレンには、先ほどまで圧し掛かっていた心の重圧は消えていた。


死なせはしない、必ずこいつ等も部下も、生かして帰す。


グレンが思うのは、最早それだけだ。


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