20 やがて鬼が来る
「居ねえ訳んねえだろ、寝言吐いてねえでさっさとパープリンクロードの部屋を言え」
「いや、ですからね隊長さん。お客様の情報をそんなにホイホイ流していたら商売上がったりなんですよ
こちらとしてはね?
何度もお伝えしているように、今日は居ませんよクロード坊やは」
明らかに尋常でない雰囲気のグレンを前にして、娼館の主は全く気にも留めずに相対する。
商売柄、荒事には慣れているのだろうか。
視線だけで人を殺せそうなグレンは尚も問う。
「別に俺は入店初っ端から力ずくで聞き出してもエエ所をこうして話し合いで解決しようとする努力を
買ってもらいてえ所だな?店主さんよォ・・・
後、用心棒の連中は、俺が入店した瞬間に目ェ逸らして隅っこで大人しくしとるから、あいつらに期待し
ねえほうがええぞ」
こういった状況で活躍する店の飼い犬たちは、部屋の隅でこちらに見向きもしないで石像のように固まっ
ている。
「はあ・・・そもそもねえ、隊長さん?何でクロード坊やがウチにいるという根拠を聞かせてもらえない
かね?」
「あいつの副長から吐かせたんだよ・・・問答はいいでさっさと言えや、あのゴミはどこだ」
「フリクセルが勘違いしているだけじゃないかね?あの子もほら、忙しいから・・・」
受け流し続ける主に辟易としていたグレンだが、ふと気付いた。
コイツは俺らをここに留めるためにさっきから実の無い会話をしている?・・・
何のために?
前回あいつは二階の大部屋を貸し切って酒池肉林パーリィを開催していた・・・
だから俺もエリアも最初から二階に意識が向いていた・・・
・・・二階?
前回あいつ事ズタボロにしたあの部屋に?
今回も?
あれっ?そういやコイツ、俺らが入店したら何か合図を出して・・・
頭の中で反芻していたグレンは結論が出る前に叫んだ。
「エリア!!裏口に走れ!!!」
「はい」
グレンの会話にとっくに飽きて、店の女と会話を爽やかな笑顔で楽しんでいたエリアが一瞬で真顔にな
り、グレンの指示通りに全速力で裏口に走った。
「あらら、バレちゃった」
舌を出し、片目をつむりながらグレンを見る。
「死ね!!クソババア!!!歳考えて行動しろ!!!死ね!!!」
心からの罵倒を残し、グレンも裏口へ全速力で走った。
その後、裏口で待ち構えていたアイラを前に、クロードは逃走を諦めお縄についた。
刃物を持ったアイラに逆らうほど愚かではなかったようだ。
大人しく捕縛されたクロードを、グレンはとりあえず蹴り飛ばした。
「死ね!!!クズが!!!」