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皇國の防戦記  作者: 長上郡司
第二章 戦の備え
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15 赤髪の悪鬼


翌朝の日の出頃にグレンは目覚めていた。


昨夜二人の部下から受けた忠告についてひたすら思いをめぐらしていると、いつの間にか朝になってい


たので、ろくに寝ていないのだった。


朝になれば仕事に取り掛からねばならないので、とりあえず朝食を摂るために、昨日エレナに忠告を受


けた一階に在る酒保に向かった。





酒保に入ると、すでに誰かが朝食を食べている姿が目に入った。


第10小隊長のアイラだった。


「何だ、アイラ・・・起こさねえといつも昼まで寝てんのに今日はやけに早いじゃねえか」


「お腹減って寝てられない」


「…ああ、昨日は酒飲んでばっかだったな」


それにしても、朝からよくこんなに食えたもんた…


積み上げられた皿を見ると、それだけで胃もたれが起きそうだ。


「アイラ、もうその辺にしとけ。仕事に差し支える」


“俺の財布にも差し支える”





この酒保と呼ばれるこの場所は、軍人に衛生用品や筆記具などの物品を販売する売店としての一面


と、安価な値段で食事を摂れる兵隊酒屋としての機能を併せ持った施設として各大隊単位に設置され


ている、皇國軍に置ける直営施設である。


規模としては大衆酒場に売店がくっついた程度の物であるが、その最大の特徴は軍人に対する食事


の無償提供にある。


皇國軍人への福利厚生政策の一環であり、消耗品の購入時にも一般の販売店で買うよりも、かなりの


割安価格で卸されている為、絶対に手にここでは入らない物意外は、基本的にここで済ます者が多


い。


今までは食事に関しても、どれだけ食べても無償を謳っていたのだ。


しかし、今年に入りその特典に関しては張り紙と共に削除撤回された。


それにはこう書かれていた。


“                  緊急通達 




通達者 皇國東方軍第15師団長 ベルフォルト・グランツ・フランクリン




今後の当食堂にておいて食事を取る際には一杯目に際しては今までどおり無償とする。


二杯目以降については、その都度料金を徴収するものとする。




                    原因




某中隊小隊長における暴飲暴食行為により、当食堂の経営状況の著しい悪化の為。




                    時期




                  本日より施行



                                        以上 ”






などという前代未聞の通達が為された。


前々から相当の努力をしながら運営されていた様だったが、昨年末に運営責任者がとうとう泣きを入


れたのだ。 


師団長より直々の通達とは驚いたものだが、よくよく考えてみるとその某小隊長とは・・・


“あの時は、他の連中を宥めるのに苦労したもんだ・・・完全にとばっちり以外の何者でもなかった


からな。”


他所の酒保では今までどおり無償提供が続けられているが、それも余計に不満を煽った事は間違いな


いだろう。


結局不満をどう抑えたかと言うと、一言“不満は原因を生んだ本人に直接言え”と言った事で皆どう


にか納得したようだった・・・?






「隊長、ご飯食べないの?」


「・・・俺は食べるが、お前はもう止めろ。この後も仕事が控えてる・・・」


「ランドとミリアリアに渡した」


「また部下に丸投げかよ、いい加減に自分でやろうという姿勢を見せようや」


「人には向き不向きがある。私は外で働く」


「いや、だからそれも仕事の一環・・・」


「二人に言って」


「・・・・・・・・・・・・分かった」


取り付く島も無い。



“まあ、あいつらなら大体終わっているか・・・”


まともな読み書きが出来ない状況のアイラに事務作業を振り分けること事態間違っている


気がしてならないグレンだったが、今はそれについて考えないようにした。


その後、過労の余り白目を剥きながら、机の上で突っ伏している第10小隊副長の二人を、グレンは一人で救護所に搬送する羽目になるのだった。


               

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