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皇國の防戦記  作者: 長上郡司
第五章 治安維持
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125 新小隊長③

与えられた専用の個室に一人、机に手を付きながらイスに座るクルツは、物思いに耽る。


この数週間は本当に、目が回るような変化の連続だった。


真意の分からない自国民へ対しての収奪。


それも指令書に記されていた名は北方軍の軍団長。


何故自分はこんな事をしているのだろうか?


祖国の、民の、戦う術の無き者の守護者と成るべく、志願して軍人となったのではなかったのか...?


何故...私は...この手で自国民を傷付けているのだ...







随分と時間が経っていた。


気付けば、クルツは涙を流していた。


ようやくこれで...あの気が狂いそうになる空間から解放された安堵と、グレン等との交戦の末に、あの場所で死んで行った者達への贖罪と、信じて、信じて、最後の最後まで信じたかった北方軍への決別の気持ちが一度に来たのだ。




「隊長、失礼します」


一人の部下が入室した。


「ああ」


「あっさりと降りましたが、宜しかったのですか?」


「良いも悪いも無い、あそこで降伏しなければ私らは全員討伐されていたよ...盗賊の一味として」


「しかし、その降した相手の下に付いて...」


「ルロイ、お前はこの隊の大隊長と、直接対峙してはいない」


「ええ、それが何か?」


「それが答えだ」


「はっ?」


ルロイと呼ばれた配下が訝しむ。


「会った瞬間に分かった。あれは、あの方は........」


「何です?」


「いや、良い...遠からずお前にも分かる。今は私に従え」


「はあ、そうですか...」


「ああ...」


ルロイは納得が行く答えは得られなかったが、今日の所はこのまま引き返すことにした。


クルツの様子が明らかに普段と違ったからだ。


「隊長、一つお伝えしておきます」


「何だ?」


ルロイが振り返り、クルツと目が合う。


「私共は、貴方の配下です。東方軍でもあの若造でも無ければ、ましてや北方軍でも無い」


「…………」


「例えこの先に、何があろうと私は貴方を信じてお供しますよ……地獄の底までね……」


「私には過ぎた部下を持ったもんだな……」


「それでは隊長、お休みなさい」


「ああ……ありがとうな」


「いえ、それでは」




ガチャリと音を立て閉められた扉を見つめ、クルツは再び机に向き直り、一人の時間を過ごす。




続く…

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