124 新小隊長②
「とりあえず入ってもらうか、お~い入って良いよ~」
ガチャリと開かれたドアから、件の新小隊長が姿を現した。
「クルツ小隊長、この衆らがうちの小隊長だ」
「まさか小隊長から出直しになるとは...」
「生きてるだけ良いじゃねえか」
「まあ...そうだが......」
「とりあえず座んな」
「失礼するよ」
そう言うとクルツは、グレンの横に置いてあるイスに腰を掛けた。
「改めて紹介しようか、彼の名はクルツ・ヴァレンタイン。皇國北方軍第六師団の元千人将だ」
「よろしく」
「簡単だな...まあ一人ずつ紹介してくわ」
グレンはまずガランに指を指した。
「その金髪チョンマゲ顎ヒゲが、うちの筆頭小隊長のガラン・ヒルツ・グラド、脳ミソパッパラパーだ」
「酷すぎる」
ガランの抗議は無視した。
「次に隣の金髪超絶美人がエレナ・グライブス。主に作戦立案、指揮が仕事の切れ者だ」
「ありがとうございます!」
「うるせえ黙れ、次のサイクロプスみてえな隻眼巨人がヴォルゲン・ランドロフ。この隊の精神的な柱だな、コイツが死んだらこの隊は終わる気がする」
「縁起でもない事を...」
「すまん、次のいかにもな軽薄若造の金髪がエリア・シュナイダー。斥候担当でこの隊の砲兵指揮も担当してる」
「悪意しかない紹介」
「その隣がメルヴィン・ボルグズ。ガランと一緒に隊の先駆けを担当してる強者だ」
「よろしくお願いします」
「最後に、この完全に寝入ってる赤髪馬鹿娘はアイラ・ベルゴール。こんなでもこの隊の最強戦力だ。」
「これで全員か?」
「後一人居るが、席を外してる。これからは、そいつが兼務してる小隊の指揮を担当してもらう」
「連れてきた部下も入れて貰えるのかな?」
「それなりに」
「それは助かるね、何人かいるだけでも、隊の意志疎通が容易い」
「副長はこちらで選出するが、構わんな?」
「お任せするよ」
「苛めんなよ?」
「そんな恐ろしい事、出来ないよ」
「エレナ、副長は誰が良い?」
「そうですね、第七小隊副長のクレアをそのまま留任させれば宜しいかと」
「そうだな、それで良いか」
「クレア?」
「ああ、クレア・フローレス。23歳の女だ...手ェ出しても良いが、アイツは後が怖い」
「出さないよ、故郷に妻子が居るからね」
「最初に言っとくが、その妻子にはいつ会えるかわからんぞ」
「それは出征した時から覚悟の上だよ」
「そうか...」
「...隊長さん、アンタ親御さんは?」
「もう二人とも、この世の住人じゃないよ」
「そうか...いつ越したんだ?」
「面白いなお前...母親が十年前、父親はその翌年。両方死に目には立ち会えなんだ」
「相当若く見えるが、アンタいくつなんだ?」
「ピチピチの二十歳だよ」
「その位の歳で両親亡くしているのも、最近じゃ何も珍しく無いんだよな...」
「やな時代だよ」
「さて、一通りのお目通しは済んだな」
「とりあえず、自分の荷物を片付けても良いかな?」
「良いぞ、クレア!新小隊長を案内したってくれ」
「はい隊長、こちらですクルツ小隊長」
「また後でなクルツ」
「はいよ、隊長さん」
「じゃあ俺らも戻るぞグレン」
「あいよ」
その声と共に、各小隊長も各々に別れた。
気が付けば空は日が落ちている。
蝋燭の明かりは消え月明かりの指す会議室はグレン一人となった。
後世に残る議事録には、ここまでが記録されている。
以下は記録には残されていない。
「まだまだ、十分とは言い難いが...だいぶ戻ってきたな...」
「計画ではそろそろ大規模に来るはずだが...本当にこれで上手く行くのか......?」
「本当に、これで...上手く...」
「なあ?ヴェルム...」
続く...




