119 引き払いの準備
クルツを連行した後、グレンはディッセンバーと別れ、自らの隊舎へと帰参した。
先に戻っていた隊員らは、既に引き払いの準備作業を行っており、グレンもその作業に加わった。
「隊長、お帰りなさい」
隊員の一人がグレンに気がついた。
「ああ」
「あれ、敵の頭目はどうしたんですか?」
「後で分かるよ」
それだけ伝えるとグレンは、荷造りを続ける。
「ん?そういやヴィクトルどうした?」
今更にヴィクトルを思い出したようだ。
「小隊長なら先程、荷馬の追加手配に出ました」
「エレナは?」
「エレナさんなら二階に行かれましたよ、多分作戦室じゃないですか?」
「そうか」
「呼んできますか?」
「いや良い、自分で出くわ」
「ちなみにエリアは外に居ますよ」
「え?……要らねえ、何だ?その情報」
「エレナ、おるか?」
グレンは二階の作戦室に使用していた部屋に入る。
「あれ隊員、お帰り」
フカフカのソファに寝転んだアイラが、そのままの体勢でグレンに話し掛ける。
「おい寝てんじゃねえ!働けや馬鹿娘!!」
瞬時に激昂したグレンは、全力でアイラに怒鳴りつける。
「え?働き過ぎは体の毒だよ?」
全く体勢を変えないで反論するアイラ。
「人の盾ェ膾切りにした鬼人が寝言コいてんじゃねえ!」
「三年前の事をまだ言ってる……」
「お前が金払わねえからだろうが!高かったんだぞあの盾!弁償しろォ!!」
「え~?」
「隊員~!用意出来ましたか~!?」
「ちょっと待って~!今アイラと真剣な話し合いの最中だから~!」
先程の部下が下から尋ねてきた。
「アイラとイチャつくのも大概にして下さいね~!」
「うん、お前後で話し合おうか~!1対1で~!」
「嫌です~!」
「逃がさないぞ~!」
「隊長、他所の女とイチャつくなら外でやって?見てられないから」
「他所の女じゃねぇだろウチの隊員だわ!…何ならお前の所の隊員だ!お前もう下行けェ!!ここは俺が片付けるから!!」
「ワガママな隊長だな~」
「お前いい加減バチ当たれ!両手の指全部突き指しろ!!」
「やだ~」
そう言い残し、彼女は下の階に降りていった。
「長が長なら手下も手下だな…………ブーメランだなこの発言……」
荷造りを始める前から疲れ果てたグレンだが、本番はこれからだ。
「片付けよ……」
背中に哀愁感が漂うグレンは、一人作戦室の片付けを行うのだった。
続く…




