117 自己紹介と目的
「そもそもアンタらは何処の誰なんだ?」
捕虜の男は単純な疑問をぶつける。
「聞かれてますよ、ディッセンバーさん」
「んん?責任者ならお前が答えろよ」
「いや、私はこの衆らに逃げられたもんでね…やはり、最終的にこの連中を引っ捕らえた勲功者三中隊の長たるディッセンバーさんがやるべきかと」
「目を逸らしながら早口で捲し立てんじゃ無いよ」
「どっちでも良いから早く答えてくれ…」
再び始まった二人のコントを遮り、男は答えを求める。
「皇國東方軍第六十大隊第二中隊長、グレン・バルザード」
「同じく第三中隊長、ディッセンバー・ガレドヴルフ」
二人の中隊長は簡潔に自己紹介をした。
「それで、お前の名と、所属は何処だ」
「……皇國北方軍第六師団千人将、クルツ・ヴァレンタイン」
「何だぁ?エラく素直だな」
「何だか、隠し事はロクな目に遭わない気がするんでな」
「勘が良いな、この人に任すと最終的に人の形じゃ無くなるぞ」
「人聞き悪いな」
グレンは背後のディッセンバーを親指で指し示す。
「戦場じゃあ、自分の第六感に何度も救われてるよ」
「コラ」
ディッセンバーの抗議を完全無視したグレンは尋問を続ける。
「そう…そんでクルツ千人将、俺からアンタに幾つか聞きたい事が有る」
「何なりと」
「まずアンタらの目的は何だ?何故北方軍のアンタらが東方軍管内で、こんな野盗紛いの動きをしている?」
「細かい目的は正直なところ聞かされていない。ただ上からは、この辺り一帯の農民崩れを纏めて地域の収奪に奔るように指示を受けた」
「それ以外の指示は」
「一切無い、だから私は民間人の殺傷を禁じる様に通達を出した。
まあ、その指示は出すまでも無かったが」
「へぇ…千人将って事は兵数は千人だよな?計算合わねえが残りは何処だ」
「予備兵として麓の町と、山間部に散らしてある」
「それでもあの破壊力か、凄まじいな」
「お褒めに預かり光栄だ」
「期限は切られていたんか」
「無い」
「無期限?」
「そうだ」
「こんな訳分からん事言われて特に何とも思わんかっただか」
「……そりゃ思うさ」
「何故こんな意味不明な命令を受けた?何かやらかしたのか?」
「思い当たる節は無い」
「そうか…」
粗方聞き終えたグレンはディッセンバーに言葉を振る。
「ディッセンバーさんは何か聞きたい事は?」
「お前が全部聞いちまったよ」
「なら本題に入りますか、我らが六十大隊の」
「そうだな…」
続く




