108 追撃
「多分こっち」
グレンを筆頭とした第一追撃隊と、ガランを隊長に据えた第二追撃隊は、それぞれの勘を頼りに野盗団の行方を追って疾走している。
グレンはアイラを、ガランはエリアを先頭に置き、懸命に山間部を駆け巡っている。
「ホントにこっちで良いんですか?!」
隊員の一人がグレンに大声で尋ねるが、彼に分かるはずも無い。
「ならお前が先陣切るか?!」
グレンも苛ついているのか、かなりの大声で返す。
「有らぬ方角行きますよ!自分の部屋を目掛けてね!」
「俺だって家帰りてェわ畜生!とにかく走れ!アイラに置いてかれるぞ!」
「そもそも何であいつは味方撒こうとしてんですか?!馬足が早すぎる!」
「知るか!あいつは普通に走ってるつもりなんだろ!!」
「恐らくこの方角です」
騒がしいグレン隊とは対照的に、もう一方のガラン隊は、静かに追跡を試みている。
「どうして」
「あちこちに何かが通過した跡が有りますから」
エリアが指を指す方を見るが、ガランの目に特に変わった物は映らない。
「例えば木の小枝が折れていたり、草むらが不自然に倒れていたりです」
「へえ」
「しかし気になるのは、先ほどアイラ達も何かを発見したらしいと報告が有りましたよね?」
エリアはヴォルゲンにもう一方の状況を聞く。
「らしいな」
「考えられるのは、どちらかが罠であり、この先には敵の待ち伏せがいる。
それとも撹乱の為に、少数がわざと痕跡を残している。
またはただ単に、二手に別れどこかしらで合流する」
「お前はどれだと思う」
「さあ」
ガランはエリアに尋ねるが、素っ気なく返された。
「何にせよ、走らない事には何も分かりません。急ぎましょう」
「たとえ見付けた所で…俺らだけで対処出来るかは分からんがな…」
ヴォルゲンがボソリと不吉な事を口走ったが、全員聞こえないふりをしながら走り去って行った。




