106 居るはずの敵
「盾構え!」
「突入!突入!」
ガラン隊の兵士は砦内からの掃射に備え、大楯を構えながら内部に侵入を試みる。
「……あれ?」
「どうした!?」
「反撃が…」
ガランは先頭の兵に大声で尋ねるが、いまいち要領を得ない。
「どうなってる?」
「分からん…」
「ガラン隊の動きが止まりました」
「何やってんだあいつら」
いきなり動きが止まったガラン隊の背後に、グレンの隊が追い付
いた。
「敵が…居ない…」
「どうなってる?…」
居るはずの敵が居ない。
意味不明な状況を前に、グレン隊の面々は硬直している。
砦内は完全にもぬけの殻だ。
「何時からだ…何時から居なかった?」
「戦闘が始まった段階では確かに…」
「エリア隊も確認しています、あの隊が見逃すとは思えません」
「例の騎馬隊以外に門から出た敵は居ないはずです」
「門からは出てねぇって事は…」
「中隊長!」
その時、建屋の内部を探索していた兵士が駆け寄ってきた。
「有ったのか?」
「…はい、こちらです」
兵士に案内されたグレンは、思わず天を仰いだ。
「最悪だな…」
「抜け穴…」
「何処に繋がってる?」
「ずっと先です」
「参ったな…」
「グレン、どうする?」
ガランが方針を尋ねる。
「……ここに居たって仕方ねえ、追撃隊を編成する。ガラン、お前はヴォルゲンと行け、俺はアイラを連れて行く。エレナ、お前はこの場に待機だ、何でも良い、何かしらの手懸かりを探れ」
「分かった」
「分かりました」
ガランとエレナは即座に動いた。
「あ~~~めんっど臭せぇな畜生!!!」
転がった石ころを全力で蹴飛ばしたグレンは、アイラを呼びに行っ
たのだった。




