104 前門攻略隊及び支援小隊
グレン中隊の布陣する陣地に、地響きと大きな破裂音が届いた。
「どこからだ、これ」
グレンは部下の一人に問うた。
「壁上側面からです」
その報告にグレンは納得した。
「エリアが何か撃ったか」
そう呟いたグレンの元に、別の隊員が飛び込んできた。
「急報です、敵の騎馬隊が後門から飛び出し、こちらに一直線に向かって来るそうです…」
「それ、あっち側から来るんか?」
グレンが指差した方向を隊員が振り返る。
「その様ですが…」
城壁の側面から立ち上がる黒煙を見た隊員は、自信が無さげに話す。
「アレはエリア小隊が?」
「まあそうだろうな、敵さんがあっち側に無駄弾を撃つ理由が分からんでな」
グレンは報告者の問いに答える。
「あの感じだと、敵の騎馬隊はどうなりましたかね」
エレナが会話に入ってきた。
「気になるなら見てこいよ、お前一人で」
グレンはそっけなく会話を打ち切る。
「ええ…?私は頭脳労働担当ですよ?」
「お前今回大した仕事無ェぞ?戦闘が小康状態の今のうちに、ちょっと皆んなのでも役に立っといた方が
良かねェか?」
「酷い」
肩を落としながら、エレナはスゴスゴと下がって行った。
「あんな馬鹿綺麗な人に良くそんな態度が取れますよね」
「モテる方はやはり違いますな」
「アレが欲しけりゃ自分でアタックしろ」
部下の軽口をグレンは軽くいなす。
「いやぁ…顔は綺麗なんですがねえ…」
「中身がちょっと…」
「ンフッ」
本気の反応に、グレンは思わず吹き出してしまう。
「ガランさん!!ちょっとここもう少しで破れそうですよ!!」
「オオッ!そのままぶち破っちまえ!!上からの防御は任せろ!」
前門の攻撃部隊は、決死の覚悟で門破りに奮戦している。
どうやら破城槌の攻撃が効いてきたようで、門が僅かに開き掛かっているのが見て取れる。
「行け行け行け行け!!!」
「その調子でぶっ壊せェ!!」
「オオオッ!!」
壁上からの掃射から、攻城部隊を守るガランを筆頭とした攻城部隊。
だが、攻撃に晒され続けた為か、頑丈な盾が悲鳴を上げているのが分かる。
「ガラン隊長!そろそろまずい!盾が保たねえぞ!!」
「盾が駄目なら自分を使え!!ぜっちゃいに守りきれ!!」
かっこいいセリフだが、舌を噛んだ。
「こんな時に何噛んでんですか!!」
「真面目にやれよガラン、今年が勝負時だぞお前」
年上の部下に突っ込まれる。
「うるせえ馬鹿野郎!!こんな所に何時までも居られるか!!気が触れちまうわ!!」
「何の事言ってんですか!?!?」
「まさかうちの隊の事言ってんじゃねえだろうな」
「どっちもだわ!今の現状も、ここの隊も!!」
「撃て」
壁上側面の崖上に布陣するエリアが、静かに指示を出した。
山岳砲が一斉に火を吹き、守備櫓が打ち倒される。
「弾込め急げ!」
「次は門を撃て、直接は当てるなよ。攻撃中の外の連中に当たる」
「分かってます!中から門を抑えてる連中を、砲撃の破片の間接攻撃で殺れば良いんですよね!?」
「よく出来ました…撃て」
パチパチとやる気のない拍手で応えたエリアは、再び静かに指示を出した。




