100 役目を果たせ
「突撃待て!隠れろ!」
敵の騎兵隊を前に、ヴォルゲンは部下達に対し待機を命じた。
「クソッ!あの連中前方に向かってるぞ!」
「百騎近く居る!」
「ヴォルゲンさん!すぐ行きましょう!グレン隊長が!!」
駆け抜けていく騎馬隊を前に、部下は明らかに動揺している。
それも全ては、先日自ら体験したからであろう。
あの騎馬隊の驚異を。
「待て!まだだ!まだ動くな!」
だが、ヴォルゲンは静止する。
「何でですか?!あんなのに迫られたらいくら隊長だって!
「あの連中は普通じゃない!上空から矢の雨に晒された上、地上からあんなのに迫られたら前方隊は
一瞬で壊滅しますよ!!」
「すぐに追撃すべきです!」
「バカを言うな!だからこそ俺たちは後門を落すんだ!俺たちが向かった所で結果は総大差ない!
アレは歩兵が敵う相手ではない!」
「そんな!!」
「隊長を見殺しにするんですか!?」
「違う!俺たちが後方から内部に侵入し、あの砦を落とすことがグレンたちを救う為の最適解だ!
幸い敵はまだこちらに気づいてはいない。今こそ内部に侵入する時だ!」
「そんな…」
ヴォルゲンの決断を前にした後方部隊は、一様に言葉を失う。
「アイラ!用意出来たか!?」
ヴォルゲンは、遅延要因に確認を取る。
「出来たけど…本当に良いの?」
ヴォルゲンの決定に、流石のアイラも疑問をぶつけた。
「問題無い」
ヴォルゲンは忌憚なく答える。
「そう…」
アイラは小さく頷いた。
「問題無い!前門上方にはエリアが居る!支援中隊の腕を信じろ!」
その言葉に、ヴォルゲン隊隊員の目に力が戻る。
「後方中隊突撃!!自分の役目を果たせ!!」
「オオ!」
全員が力強く走り出す。
己の役割を果たすために。