98 前門攻略部隊突撃
「中隊長、合図です”我、配備完了ナリ、合図ヲ待ツ”です」
「見えてるよ、ピカピカ光ってるから」
グレンは崖上に待機するエリア隊を見上げている。
エリア隊は、攻撃部隊の直接援護だけではなく、両隊の意思疎通の補助も担っている。
エリアを中心に、鏡の光反射の長短を情報伝達に用い、三隊はお互いの意思確認を行っている。
「門は間違いなく両側開いてるな?」
「はい、後門も全開だそうです」
それを聞いたグレンは思わず微妙な表情を見せた。
「……なんかヤだな、コウモンが全開って…そしてそれをこれから攻めるって」
「良いでしょ別に、コウモン攻めるのはあちらさんですから」
「うん…まあ、な…」
「掘るのは向こうに任せて、こっちはこっちで行きましょうや」
「お前ら、それ向こうの連中には絶対に言うなよ」
「ハックシュ」
「ヴォルゲン、風邪?」
「なんだか知らんがすごい寒気がした」
「確認するぞ、こっちはこっちで前門を全力攻めするから、敵を釘付けにしている間に後方のヴォルゲン
が敵の背後から討つ」
「どっちも同時に門を閉められたら?」
「破城槌を使ってなんとしても開ける」
「開かなんだら?」
「エリアに頼め」
「端っからそうしましょうや」
「あの建屋どうすんだよ、あの何箇所か在る見張り櫓」
「こっちから先に撃ったら火点を潰されますかね」
「だろうな、火砲が見えたし」
「お家帰っていいすか」
「構わんが、その時は首だけで帰ることになるぞ」
崖上のエリア隊
「中々出ませんね、隊長たち」
「何を揉め繰り返しとんだか…」
敵の砦 見張り台
二人の見張り役が駄弁っている。
「暇だ…」
「よせ、そんな事言うのは」
「なんで?」
「お前が言うといつも逆のことが起こる」
「例えば?」
「おまえが”今日はいい天気だ”って言うと大雨になったり”今日の仕事は楽勝だ”って言った時は伏兵がわ
んさか出て来てエライ目に有ったり”今日の飯は当たりだな”って言ったときには食材が腐っていて全員
オオアタリだったり」
「タマタマだよ、そんなもん」
「どうだか、今日も何だか大忙しになる予感しかしないよ俺は……おい」
「どうした?」
「ありゃ何だ…」
「ん?」
最初に暇だと言った見張り役が、指を刺された方向を見ると
「敵襲!正面から敵襲!正門も閉めろ!急げェ!」
「誰だよ暇だなんて口走ったのは」
「お前だよ!弓兵!迎撃用意!各個に打掛かれ!」
「気づかれました!」
「むしろよくここまで保ったよ」
「総員全速!正面の門に取り付け!敵を前方に集めて釘付けにしろ!」
グレン隊の突撃が始まった。
直ちに後門のヴォルゲン隊も突撃に移る。