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皇國の防戦記  作者: 長上郡司
第五章 治安維持
105/137

97 配置完了

「中隊長!後門のヴォルゲン隊、準備できたそうです」


「やっとかや…」


前門の攻略担当であるグレン隊が準備を整えてから、もう小一時間が経過していた。


「ヴォルゲンさんがだいぶアイラの説得に時間を割いたそうで…」


「あのバカ娘どうしてくれよう…」


「背後から叩き切ったらどうスか?」


「エリアに後頭部ぶち抜いてもらいましょう」


「毒エサ食わしゃエエでしょ」


次々と正攻法とは真逆の提案をする部下達。


「何で俺が正面から向かって行って勝てねえことが前提なんだ!お前らの目の前にいるの上官だぞ!


わかってんのか!?」


「え?じゃあ勝てます?鬼神ですよ相手は」


「無理だよ!言わすんじゃねえ畜生!!」


「隊長静かに」


グレンと部下のケンカお笑いを傍観していた違う部下が、大声で反論するグレンを諌めた。


基本的に年上しかいないグレン中隊の中で、二十歳の中隊長グレンの普段の立ち位置は、ざっとこんな


感じである。


「クッソ、上官侮辱で軍法会議に掛けてやる」


「アンタ軍事法廷の招聘権ないでしょ、たかだか千人将で」


「俺の悲惨な心の内を言っとるだけじゃ!」





後門担当のヴォルゲン隊


「…やっと準備が終わった」


「おかしいねえ?どうしてこんなに掛かったんだろ?」


「そうだな?何でだろうな?殺すぞ」


「ひゃあ怖い」


既に疲れ切っているヴォルゲンをよそに、アイラはどこからか持ち出してきた干し肉を食べていた。


そんな姿を見せつけられて、鬼も裸足で逃げ出すほど恐ろしい容貌の割に、普段は一切声を荒らげたり


せず、部下の面倒見の良いヴォルゲンだが、この時ばかりは思わず本音が出た。


「ヴォルゲンさん、アンタがそういう事言うと隊の空気が凍りつくんで止めて下さい」


「ちょっと抑えきれなかった物が出た」


後ろを見ると何人かが明らかに怯えた目でこちらのやり取りを見つめていたようだ。


「ふぅ…」


一旦落ち着こうと、ヴォルゲンは大きく息を吐いた。


「あれ?イッタの?」


「あの世に逝きてえよ、今すぐ」


その様子を見ていたアイラが下劣な質問をするが、ヴォルゲンには既に大声を出す気力もなかった。


今からこんな状態で、敵基地への突撃など仕掛けて大丈夫なのだろうか?


「ハアァァァ~もう良いや、前方隊が先に出るから、少し遅れて俺らも出るからな?」


「はぁい」


「ホントに分かってんのか?」


「大丈夫大丈夫…いつもどおり向かって来る相手を、すべて薙ぎ払えば良いだけでしょ?かんたんだよ」


「そうだな、お前一番武功あげんとしばらく飯抜きになるぞ。作戦遅延の原因はおそらく向こうに伝わっ


てるからな?」


それを聞いたアイラが、いつもは眠たげな目を大きく見開いた。


やる気スイッチが入った合図である。


「さてさて、頼むぜ隊長…そして崖上のエリア…」




突撃の時は迫る。


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