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亜・日常小噺  作者: イナツキ
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桂馬カタルシス

「小此木嬢!大変なんだ!」

放課後帰る準備をしていると突然エドワード君が叫びだしました。


「どうしたのですかエドワード君。」

「僕の宝物の将棋の駒、その中でも特に好きだった桂馬を無くしてしまったんだ!」

「桂馬ですか。何でまたそんなものを。」

「一応僕は将棋でこの学校に入ったからね。それにあやかって小さい時から持っていた将棋の駒をお守りに持ち歩いていたんだ。けど今ポケットの中を確認したらそれが無いんだよ!」

「それは災難ですね。どれ、少し私もその辺を探してみましょう。」

「ありがとう!助かるよ!あれが無ければ僕は…あわわわわわわわ…」




「ふーむ。見つかりませんね。」

「もうこの教室はくまなく調べたから後は移動教室か…」

「その失せ物、私が見つけてやろう。」


「?」

「狭間さん?」

「そうだ。人類の到達点、狭間はざま とおるだ。」

大仰な態度のこの人物は極学科の狭間 透さんです。黙っていればとてもおモテになりそうなお方なのですが、話し方然りそのお力然り、中々近づきがたいお方なのです。

「私の『超能力』を使えばそのような失せ物を見つけることなど造作もない。」

さぁさぁ皆様痛い子を見る目をおやめ下さい。私なんぞのお墨付きではございますが、彼女は正真正銘、ガチもんの超能力者なのです。

実際にクラスの目の前で「他人の考えている事がわかる」という超能力を発揮した彼女は、なんと百発百中、クラスの人全ての思考を読み切ってみせたのです。

若干手品臭さが残るかも知れませんが、私は実際にこの両の眼で見たものは何であれ信じますので、私からすれば狭間さんという人は立派な超能力者なのです。

狭間さんの助力の申し出に百の味方を得た思いだった私達に(主に私に)、更に別の意外な人物が助けを申し出てくれました。


「人類の到達点つったら俺だろうがよぉ…!!そんな矮小な桂馬ごとき俺様が一瞬で見つけてやるよぉ…!!」

「おや、天王寺君。それは本当ですか?」


彼は自称天才、他称天才の天才、天王寺 才臣さいおみ君です。

最初のクラス挨拶の時、数10分でリーマン予想を完全に証明しきり(後にテレビで大々的に発表されていました。)、自分の席に後方伸身2回宙返り3回ひねりをして戻るというオーバーキルもいい所の文武両道の天才ぶりを発揮した人です。


「超能力なんぞに俺が遅れをとるかってんだ。先天的才能の中でも純粋な知力、体力が最後にものを言うんだぜ。」

「なんだその言い草は?私の超能力が貴様のような男に負けるとは全く想像できないのだが?」

「はっ!ほざいてなインチキ超能力者。テメェのやり方は大方予想がつく。そんな回りくどい方法は所詮弱者の浅知恵だ。俺が真の強者たる探索法ってのを見せてやるよ。」

「よかろう。そこまで言うならどちらが早く桂馬を見つけるか勝負しようではないか。」

「いいぜ…。俺の最強の証明にしかならないがなぁ!!」



「何ということでしょう。人外の力を持った者達がエドワード君の桂馬なぞの為にあれほどまでに張り切っていますよ。」

「桂馬なぞってひどいな!ま、まぁ強力な助っ人には違いない。…彼らで見つけられないのなら最早人類には僕の桂馬を見つけることなど出来ない…。」

「なぜこのような大事になってしまったのでしょうか。」


そんなことを話いているうちに狭間さんと天王寺君はどこかへ走り去ってしまいました。

相手よりも早く桂馬を見つけようと躍起になっているのでしょう。

「なぁ小此木ちゃん、さっきから何を騒いでたん?」

「これはどうも宇野さん。えぇ実は狭間さんと天王寺君がエドワード君の失くした桂馬をどちらが早く見つけるか勝負しているのです。」

「いろいろ言いたいことはあるけど…。つか、桂馬ってもしかしてこれちゃうん?なんか廊下に落ちてて面白かったから思わず拾ってもうたんやけど…。」

「え?」

「え?」

「え?」

エドワード君の驚きの声。

私の間の抜けた声。

それに意表をつかれた宇野さんの声。


「それだああああああああぁぁぁぁ!!!!」

「ひぃっ?!」

雄叫びを上げ宇野さんの手からエドワード君が桂馬を奪い取ったこの瞬間に狭間さんと天王寺君の対決は引き分けとなったのでした。

エドワード君は泣いて宇野さんに感謝の言葉を伝え、超能力でその様子を知った狭間さんはアホくさくなりそのまま帰った。

その間天王寺君はずっと桂馬を探し校内を歩き回っていた。

天才とは…

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